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幸福になれないなら人生の意味を追えばいいじゃない「意味の力(The Power of Meaning)」

Nature
幸福の代わりに意味を求めよう!
「意味の力(The Power of Meaning)」を読み終わり。「人生の幸福を追うと失敗するから、その代わりに意味を求めようぜ!」と主張するおもしろい一冊でありました。


「幸福を追うな!」ってのは近年のポジティブサイコロジー界でよく聞く話で、当ブログでも「幸せを求めて逆に不幸になる仕組み」についての研究を紹介しております。幸せばっか追いかけると、逆に自分の不幸な面に意識が向かっちゃうよー、みたいな話ですね。


で、その代わりに出てきたのが「人生の意味を追え!」ってテーマ。以前にも軽く書いたとおり人生の幸福と意味は別物なんで、トータルで満足な暮らしを送りたいなら、そっちのほうに注力したほうがメリットがあるかもよ、という。








 人生の意味に必要な4本柱
本書がソースにしてるのは、おもに心理学と社会学、神経科学など。そこにブッダやヴィクトール・フランクルの知見を折り込みつつ、「人生の意味に必要な4本柱」をまとめております。

1.帰属

まず第一の柱が帰属感。自分がなんらかのコミュニティの一員として認証されてるぜ!って感覚ですね。


それは友人でも家族でも恋人でも会社でも何でもOKで、とにかく自分がコミュニティに入れていると思えるのが大事。実際「孤独の不健康レベルはタバコと同じ!」ってデータもありますし、心当たりがあるならぜひ仲間を作るべきでしょう。


 もっとも、ここで大事なのは帰属感なんで、自分のなかに「俺は他人に受け入れられない…」みたいな気持ちがあると、どんなに友だちが多い人でも孤独を患うのでご注意を。この場合は認知のゆがみを正す作業が別途必要になってまいります。


ちなみに、上でリンクを貼ったメタ分析によれば、妄想のなかの友だちと会話するだけでも効果はあるそうなんで、あまりにも仲間がいない場合はお試しください。妄想だろうがなんだろうが、友だちがいないよりはマシ。


2.目的

2つめが長期目標。自分の人生に長期的なゴールがあったほうがいいって話で、これはわかりやすいですね。

この際のポイントは2つありまして、

  • 目標に自分の価値観が反映されているか
  • 人類や世界に貢献できるような内容か

ってところです。このあたりは、アダム・グラント博士が主張する「惜しみなく与える者ほど成功する!」ってテーマともやや被りますね。


ただし「自分の価値観ってなによ?」ってところで詰まる人も意外と多いんで、その場合は、ACT(マインドフルネス系の認知行動療法)系の書籍には必ずついてる「価値のワーク」を試すといいかも。具体的には、「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない」や「ACTをはじめる」などをオススメしときます。


3.物語

3つめが物語。「自分は何者か?」をハッキリさせてくれる一貫したストーリーがないと、人生の意味は感じられないんだよーって話でして、専門的には「物語的アイデンティティ」と呼ばれております。


では、具体的にどんな物語が人生の満足度を高めるのかというと、2006年のデイトン大学論文(1)によれば、

  • 俺は苦難を乗り越えて成長した!

これだけです。いわゆる救済の物語ですな。


苦難の内容は、イジメにあったとか、事故にあったとか、生まれが貧しかったとかなんでもOK。いかに自分が人生のトラブルを乗り越えたかが一貫したストーリーになっていれば、それは「物語アイデンティティ」として機能するんですな。


このへんの物語構造についてさらに詳しく知りたいときは、「千の顔をもつ英雄」や「生きるよすがとしての神話」などをご参照ください。



.超越

最後が超越です。日常で自分を超えたような体験をすること…というとわかりにくいですが、要は大自然を見て「うわー!」と思ったり、宇宙のデカさを想像して「すげー!」と感じたりする、あの感情のことです。


この感情が心にも体にも良いことはかなり実証されてまして、たとえば「畏敬の念」が多い人ほど老化しにくいなんてデータがあったりとか、信心深い人ほど早期の死亡率が低かったりとか。具体的な流れとしては、

  1. 自分を超えたような体験をする
  2. 自分中心の意識が薄れる
  3. より大きな目標に目が向かう!

みたいな感じ。年をとると畏敬の念が薄れがちでなんで、意識しときたいところ。

まとめ
ってことで、ひとつひとつの要素は当然といえば当然なんですけど、「人生の意味」の要所を手際よくまとめてくれたありがたい一冊でした。簡単なライフハックとかは一切書いてないんで、本格的に人生の満足度の向上に取り組みたい人向けですね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。