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結局「シトルリン+アルギニン」って運動のパフォーマンスアップに効くの?最新研究をチェックしてみた件

 
 

トレーニング系のサプリメントでよく話題になる「シトルリン」と「アルギニン」。なんらかの運動をしている方であれば、一度は耳にしたことがある方も多いんじゃないでしょうか。どちらも「一酸化窒素を増やす効果がある」として知られていて、運動パフォーマンスを高める効果があると言われてきたんですよ。

 

両サプリについては過去にも何度か取り上げていて、「アルギニンで身体能力が上がりまくる!ってメタ分析が出たが、いまいち乗り切れなかった話」みたいなエントリを書いたことがありました。いちおう、アルギニンについてはメタ分析で良い結果が報告されてるものの、個人的には「まだよくわからんなぁ」って感じだったんですな(シトルリンについては見込みがあると思ってますが)。

 

でもって、最近出たランダム化クロスオーバー試験(R)もアルギニンとシトルリンの効果を調べてまして、なかなか参考になる結果が出てますんで、内容をチェックしておきましょう。

 

まず前提として、アルギニンとシトルリンが効くと言われる「理屈」は、以下のようになってます。

 

  1. シトルリンはアルギニンの前駆体になる(=体内で変換される物質)
  2. アルギニンは一酸化窒素(NO)の原料になる
  3. NOは血管拡張を促進し、血流をアップさせる働きがあるため、それによって筋肉への酸素や栄養供給が改善されて疲労が遅れる!

 

こんな感じで、「シトルリンとアルギニンでNOが増え、それによって運動能力が上がるはず」という仮説が成り立つわけですね。

 

では、実際のところはどうなのかってことで、この研究では、健康な若い男性44人を対象に以下のようなデザインで調査をしております。

 

  • 被験者には「アルギニン+シトルリンマレート」または「プラセボ(偽薬)」を摂取してもらう

  • アルギニンは体重1kgあたり0.15g(平均で約12g)、シトルリンは0.1g/kg(平均8g)というけっこう高めの量を使う

 

その上で、みんなに以下のいずれかの運動テストを実施したんだそうな。

 

  • シンディ・ワークアウト(「5回の懸垂+10回の腕立て+15回のエアスクワット」を、20分間でできる限り多くやる)

  • ウィンゲートテスト(30秒間の全力自転車こぎ)

  • ハーバードステップテスト(高い台を5分間昇り降り)

 

でもって、その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

  • どの運動テストにおいても、アルギニン+シトルリンの摂取はパフォーマンス向上に役立たなかった!

 

だったんだそうです。うーん、これは残念。

 

このような結果が出た理由について、研究チームは「バイオアベイラビリティ(=体内での利用効率)」の問題を指摘しておられます。どういうことかと言いますと、

 

  1. アルギニンは、摂取しても腸や肝臓でかなりの割合が分解されてしまう

  2. そのため、実際に体内で使えるアルギニンは少ない
  3. 一方、シトルリンはアルギニンよりも効率よく血中アルギニン濃度を上げられる

 

みたいな流れでして、そもそもアルギニンは体内で上手く使うことができないので、サプリで摂取しても使えない可能性が高いってことでして、ひるがえって「最初からシトルリンだけ飲んだほうが良くない?」って話になってくるわけです。

 

ちなみに、個人的にはシトルリンにはまだ見込みがあると思ってまして、「ある程度の効果がある」とされた過去の研究では、60〜80%の1RMを使った筋トレでレップ数が増えたという報告が多めだったりします(R)。つまり、シトルリンについては、

 

  • 有酸素系や持久系よりも、筋力やパワー系の運動に使うならアリじゃないか?

 

って気がするわけです。その点で、今回使われたシンディ・ワークアウトやステップテストは有酸素運動の要素がけっこう強めなので、「そもそも種目が合ってなかった」という可能性も否定できないんですよね。

 

ってことで、ここまでの話をまとめると以下のようになります。

 

  • アルギニン単体→ほぼ意味なし(吸収効率が悪すぎ)

  • シトルリン単体→種目によってはパフォーマンス向上あり(筋肉を使う系)

  • アルギニン+シトルリンの同時摂取→人間では決定的な証拠がない

 

なので、「とりあえず試すなら、筋トレ系の種目をやるときにシトルリン単体を5~8gほど使ってみる」というのが現時点での妥当な選択肢じゃないかなーと思うわけです。ちなみに、自分でも昔ちょっとシトルリンを試したことがありますが、個人的には筋トレのレップ数が少し増えた印象があったりなかったりな感じでしたね。これも、種目や体質の違いによるのかもしれませんなぁ。

 

ということで、最後に実践的なアドバイスをざっくりまとめておくと、

 

  • NOブースターを使うなら、まずはシトルリン単体から試す

  • アルギニンはあまり期待しない方がいい

  • 効果を感じにくいなら、シトルリンの量を5g→8gに増やすのもアリ
  • 有酸素系ではなく、筋トレ(特に中負荷×多レップ)との相性が良さげ

 

みたいになります。ということで、シトルリンやアルギニンを試そうと思っていた方は、ここらへんを念頭に置きつつご利用していただければと。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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