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イヌイットは糖質と食物繊維を摂らなくても健康なのはなぜ?→実はちゃんと摂ってます

Inuit

 

当ブログでは、よく糖質食物繊維の大事さを強調しております。人類は数百万年にわたって大量の糖質と食物繊維を食べながら進化してきたんで、パレオダイエット的に両者が大事なのは当たり前なんですな。

 

 

 イヌイットは糖質&食物繊維ゼロでも元気?

が、というとよく聞かれるのが「イヌイットはどうなの?」というご質問です。世の中には糖質と食物繊維をほとんど摂らずに健康を維持してる人たちがいるんだから、本当は不要な栄養素なんじゃないの?みたいな話です。

 

 

これは糖質制限ダイエッターの方から言われる話で、ケトジェニックのような食事法の補強材料になっております。たとえば糖質制限で有名な江部康二医師によれば、

 

狩猟採集生活を送っていたイヌイットの場合、糖質が極めて少ない食生活でした。当然、血中ケトン体は高かったと推測されますが、彼らの健康状態は同時期の先進国の人々よりも良好で、糖尿病や肥満などはなく、がんも少なかったのです。

 

とのこと(1)。さらに、長尾周格医師も次のように主張しておられます(2)。

 

イヌイットとかは5千年間、少なくとも同じような食生活で生活してきた人たち、彼らは食物繊維取らないんですよね。「食物繊維を取らないと人間は健康でいられない」って言うんだったら、イヌイットは健康じゃないんでしょうか?

 

これは本当に糖質制限の世界でよく聞く説で、「糖質と食物繊維が不要な証拠!」として扱われたりしております。

 



 

 

 

 イヌイットも普通に植物をいっぱい食べてます

これだけ見ると、なんとも不思議な現象のようなんですが、その答えはとても簡単。たんに、イヌイットも糖質と食物繊維を普通に摂っているからです。

 

 

たとえば、氷雪地帯の暮らしを詳細にまとめた「Uqalurait」によれば、イヌイットは動物にくわえて実は大量の植物を食べているそうな。具体的には、

 

  • ケルプ
  • 海藻・藻類
  • プランクトン
  • ヤナギラン
  • コケ
  • オキザリス
  • ベリー類
  • 根菜類

 

なんかを集めて冷凍するか発酵させて保存。1年をとおして食べていくらしい。この時点で、イヌイットが糖質と食物繊維を食べてないって説はかなり怪しげ。

 

 

 イヌイットの糖質量は最低でも1日110g

ついでにイヌイットの皆さんは、動物からもちゃんと糖質と食物繊維を摂ってたりします。1985年に行われた調査(3)からポイントを抜き出すと、

 

  • 実はイヌイットは大量の糖質を摂っている
  • イヌイットは動物の肝臓から大量のグリコーゲンを摂取できる
  • イヌイットがクジラや鳥の脂身を保存する際に、タンパク質が腐敗して糖質に変換される
 

 とのこと。これは「アニマルスターチ」と呼ばれてまして、動物からもバッチリと糖質は摂れるんですな。

 

 

では、実際にイヌイットがどれだけ糖質を摂っているかというと、1972年にアラバマ大学が行った調査(4)にくわしく書いてあったりします。

 

(イヌイットの)平均摂取カロリーは1日に3,000kcalで、だいたい2,300〜4,500kcalの開きがある。そのうち50%は脂肪で、30〜35%がタンパク質だ。糖質は15〜20%で、その多くはアニマルスターチがまかなっている。

 

どうやら、寒冷地で暮らすには1日に3,000kcalは食べないといけない模様。そのうち15〜20%が糖質なんで、少なくても1日に110gの糖質はとってる計算であります。ジャガイモで換算すると、中ぐらいのサイズをだいたい7〜8個ぐらいですかね。

 

 

 イヌイットは別にケトジェニックでもない

また、ついでに言えば「イヌイットはケトジェニックだ!」みたいな話も相当に怪しげ。というのも、イヌイットの血液検査は1930年代から何度も行われてるんですが(5,6,7)、いずれも「血中のケトン体は高くない!」って結論なんですよ。

 

 

もちろん、たまに高脂肪食が続いてケトン体が増えるケースもあるようですが、基本的にはケトジェニックで暮らしてるわけじゃないみたい。というか、普通に糖質を摂ってる以上は当然の話ではありますが。

 

 

ちなみに、もうひとつイヌイット関連でおもしろいのが、2014年に行われた調査(8)です。ケンブリッジ大学が寒冷地で暮らす住民を調べたところ、イヌイットはケトーシスに入るのを防ぐ特殊な遺伝子を持ってることがわかったんですな。

 

 

これはCPT1Aって遺伝子に起きた変異で、ケトン体の作り過ぎを防ぐほうに働くらしい。つまりイヌイットの体は、できるだけケトジェニックにならない方向で適応したわけです。一部には「ケトン体が体にいい!」って説もありますが、こういったデータを見ちゃうとにわかに信じがたいんですよねぇ。

 

 

まとめ

そんなわけで、イヌイットの皆さんはちゃんと糖質も食物繊維もとってるし、ついでにいつもケトジェニックなわけでもないというお話でした。

 


このあたりのデータは1930年代からくり返し確認されてまして、なぜいまだに「イヌイットは糖質を摂らない!」みたいな話が生き残ってるのかは謎。まぁいろんな人の都合があるんでしょうね。


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  1. 血中ケトンはスーパー糖質制限やアトキンスレベルでも
    体が順応して来ると無駄にケトン体を体外に排出しなくなるようで、
    導入期からしばらく経つと反応がみられなくなるようです。

    遺伝もありますが、そういうことも考えられますし、
    そもそも完全にケトン体に便りっぱなしの理論は
    アトキンスでもスーパー糖質制限でも強制はされておらず、
    緩やかに糖質を増やすことは推奨されてる範疇ですね。

    イヌイットの食を槍玉にあげるのは
    昨今、互いに糖質に固執する方か、完全に断糖、糖毒と言い張る者同士にしか
    見受けられなくなってきてるように思います。

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    返信
    1. なるほど。宗田哲男氏のような方は少数派なのですねー。それなら良かったです!

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  2. いつも楽しく拝見させていただいています。リファレンス(3)の全文を読みたいのですが、リンク先などご存知でしょうか?どこにあるかわからず、、、
    「イヌイットは動物の肉を生か冷凍で食べるため、食料品で売っている肉よりも大量のグリコーゲンを摂取できるからだ。また、イヌイットがクジラや鳥の脂身を保存する際に、ある程度のタンパク質が発酵で糖質に変換される。」このあたり初めて聞いた話で、確認してみたいと思っております。

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    返信
    1. どもども、原文はこちらになります!わたしも前部ん読んだわけじゃないですが、なかなか面白いですよ!

      https://www.amazon.co.jp/Principles-Issues-Nutrition-Y-Hui/dp/0534043747/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1466071240&sr=8-1&keywords=Principles+and+Issues+in+Nutrition

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    2. 遅くなりましたがレスポンスありがとうございます。グリコーゲンについては英語版wikiのInuit dietを読んで理解できましたhttps://en.m.wikipedia.org/wiki/Inuit_diet。まだ読んでないんですが、こちらも参考になりそうですhttp://freetheanimal.com/2014/03/disrupting-masai-carbs-prebiotics.html。こういうの、日本語の情報があまりないんですよね。

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  3. こんばんは。

    私もY.F.さんと同じでアニマルスターチの話は初めて聞きました。肉は生や冷凍と加熱したものでグリコーゲンの量が違うというのは変な感じがします。たとえば、グリコーゲンの多いホタテ貝やカキを熱で調理するとグリコーゲンが減りますか?グリコーゲンが熱に弱いのでしょうか。貯蔵や熟成の過程でグリコーゲンが減るのでしょうか。肉にグリコーゲンが大量に含まれるというのも初耳。発酵によりタンパク質から糖質ができるというのも、糖源性アミノ酸なら糖質になり得ますが、多くないのでは。科学的に疑問点が多いですね。

    原論文を確認されたらぜひ詳しい解説をお願いします。

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    1. どもども。説明が下手ですみません!動物は死ぬとすぐに肝臓のグリコーゲンが減り始めちゃうので、生ですぐに食べるか冷凍保存をしておくと、グリコーゲンが摂取できるという話です。まぁ加熱調理したカキも、グリコーゲンは流出していくみたいですけど。

      あと「発酵」の件ですが、これはさすがに説明不足すぎますね。すいません。

      原文が「ferment」なんで「発酵」と訳しましたが、実質は「腐敗」に近いです。寒冷地で数ヶ月をかけて腐敗が進むと、タンパク質と脂肪がグリコシル化されて、肉も血液もすべてがグリカンに変わる……みたいな感じです。すごい駆け足の説明ですが。

      このあたり、気になる方が多いようだったらブログの記事にしようかしら…。

      削除
  4. 長尾周格先生の本を読んで、やっぱり糖質制限しないとダメなのかな、もしかして自分には向いてないのかなって不安になっていたので、ちょっと安心しました。
    でも私はベジタリアンだったせいか、この先生の本で書かれているパレオが上手くいかない患者さんのように、どうしても野菜を食べ過ぎてしまう癖があります。
    お砂糖や加工食品は元々あまり食べなかったので苦労せず辞められたのですが、朝からメロンまるごと1個食べてたくらいなので、ほうれん草なら1回で400gとか平気で食べてしまいます。
    たんぱく質を頑張って多くして最初に食べるようにしても、やっぱり野菜だけは詰め込んでしまうんです。
    もしかして無理にたんぱく質を増やしたり野菜を減らしたりしなくても健康になれますか?やっぱり食物繊維も摂り過ぎちゃダメですか?
    あと以前書かれていた精製穀物を減らしたい時のサプリって野菜と果物の食べ過ぎにも効果ありますか?
    お通じも体重も不安定なので、もし解決方法があったら知りたいです。よろしくお願いします!

    返信削除
    返信
    1. ほうほう。長尾先生の本は拝読していないので、ちょっとチェックしてみようかと思います。

      ホウレン草1回400gはすごいですねぇ。別に無理に野菜を減らしたり、タンパク質を増やす必要もないとは思いますが、くわしい状況がわからないと何とも言えないところですねぇ…。

      精製穀物を減らしたい時のサプリは、野菜と果物の食べ過ぎにも効果はないと思います。そもそも野菜と果物の食べ過ぎについては、そこまで心配しなくてもよいのではないかと思いますよ。

      削除
    2. ありがとうございます!!とっても安心しました。
      たんぱく質を頑張って食べるようになってから苦しくてしかたなかったので、今日から食べたいぶんだけ食べるようにします!

      「歯医者が難病になってわかったこと」は過激なので、もう読みません(笑)
      お肉は一日に最低でも500gが目標とか、たんぱく質が相対的に減ってしまうくらいなら野菜は食べなくてもいいとか…。
      お肉の種類にもよるけど超高たんぱく食(体重×2.5gくらい)になってしまいますね。

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  5. 横から失礼します。

    Lettyさん。suzuki yuさんがお書きになっているように、ラッキョウやゴボウに多いイヌリンやオオバコ(サイリウムハスク)などの水溶性食物繊維が腸内フローラやお通じには良いようです。amazonなどで安く買えます。あと野菜に多い不溶性食物繊維を多く食べると腸の中で固まりになり便秘の原因になるらしいです。私の場合、食べ物を念入りに良く噛んで食べるようにしたら便が柔らかくなり便通が良くなりました。一口30回どころか口の中で流動食ができるくらい良く噛んで食べています。

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    1. 水溶性と不溶性のバランスが大事なんですよね!
      ほうれん草と一緒に食べてる昆布を増やしてみます。
      あとグリーンバナナを食べた時お通じも睡眠もメンタルも良い感じだったので、私にはレジスタントスターチが合っているのかも…?

      そういえば、お肉を噛んだ後だと疲れて、野菜を噛む回数が減っていたかも知れません(><;
      よく噛むの大切ですよね。お返事ありがとうございます!

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    2. ようすけ2016/06/20 22:38

      Lettyさん
      昆布はヨウ素の量が異常に多いのであまり食べないほうがいいですよ。

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  6. はじめまして。毎日楽しみに読ませていただいてます。
    イヌイットの遺伝子についての論文なんですけど、ケトン体の代わりに長鎖脂肪酸を使うと紹介されてますが、僕には逆に長鎖脂肪酸の使用を妨げる突然変異であると読めるんですが。
    論文中にも言及されてるCPT1欠損症とおなじような影響があるようです。
    結果としてケトン体ができにくくなるのは同じです。
    機械翻訳で読みましたので、頼りないんですが。
    御手数ですが確認いただけませんか。

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    返信
    1. ご指摘ありがとうございます!確認したところ、おっしゃるとおりでした。間違ってCPT1の働きをそのまま書いてしまったようです。感謝です!

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    2. とんでもないです。結論は変わらないですし。ありがとうございます。
      意識高い系ダイエッターの記事おもしろかったです。
      これからも楽しい記事お願いします。

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41才のプロパレオダイエッター/編集者/ライター/NASM®公認パーソナルトレーナー。国内外の学術論文を読み漁るのが好きな人。パレオダイエットの本を書きました(http://amzn.to/2ogEBmC)。

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