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ベジタリアンって本当にカラダにいいの?

Grown vegetables

 

ベジタリアンに関するご質問をいただきました。

 

ビーガンやベジタリアンは本当に健康にいいのでしょうか? パレオな男では、結局はバランスのよい食事のが一番ということですが、肉でしかとれない栄養も多いように思います。どうなのでしょうか?

 

とのこと。菜食主義者はどこまでカラダにいいのか?という疑問ですね。

 

 

ベジタリアンが健康にいいのは間違いない

「ベジタリアンってカラダにいいの?」って疑問は昔からありまして、最近も非常にいい感じのデータ(1)が出ております。

 

 

これはイタリアの研究チームが行った調査で、過去に行われたベジタリアンの観察研究をまとめたもの。96件ものデータを使った系統的レビューになってまして、かなーり信頼がおける内容になっております。

 

 

その結論だけ抜き出すと、ベジタリアンは一般的な食事にくらべて、

 

  • 心疾患のリスクが25%減る
  • 癌の発症リスクが8%減る
  • 体重も少ない
  • コレステロール値も良好

 

 みたいな感じ。全体的に「ベジタリアン圧勝!」みたいな内容になっております。この点で、現代人の平均的な食事よりベジタリアンが体にいいのは間違いありません。

 

 

ただしベジタリアンが有利なのは健康意識の問題 

が、当ブログを長くお読みの方なら、ここでこんな疑問を抱くんじゃないでしょうか。「ベジタリアンには健康意識が高い人が多いだけじゃないの?」、と。

 

 

たとえば、ちょっと想像してみただけでも、ベジタリアンがタバコを吸うとは思えませんし、普通より運動もしてそうですからね。その時点で、統計ではベジタリアンのほうが有利になっちゃうわけです。

 

 

そこで非常に参考になるのが、1996年にオックスフォード大から出たナイスな論文(2)であります。

 

 

実験では、まず健康雑誌やサプリショップなどで募集をかけ、健康意識が高い男女だけを約10,700人もピックアップ。続いて全員を以下の2つにわけたんですね。

 

  1. ベジタリアングループ
  2. 肉も普通に食うグループ

 

そのうえで、17年にわたって追跡調査を行ったところ、

 

  • どっちのグループも死亡率は同じ!
  • 病気の発症率も同じ!

 

みたいな感じだったんですね。これは1994年の実験(3)でも似たような結論が出てまして、どうも健康意識さえ高ければ、特にベジタリアンが有利ってことでもないらしい。

 



 

 

 

確かに、ベジタリアンで足りなくなりがちな栄養はある

以上のデータをふまえて言えることは、

 

  • 野菜だけの生活が特に健康面で有利ってことはなさそう
  • 逆に言えば、肉を食わなくたって、卵や乳製品・豆類のタンパク質で健康にいられる
  • なにより大事なのは加工食品と精製油をやめること

 

って感じでしょうか。結局は「あらゆるダイエット研究から導き出された唯一の『正しい食事法』とは?」の結論とほぼ同じですね。

 

 

ただ、個人的にちょっと気になるのが、「結局、お肉は体にいいのか悪いのか? #6」にも書いた、ベジタリアンとメンタルの問題であります。というのも、肉や魚を食わないと脳に欠かせない栄養素が少なくなりがちで、慢性疲労やメンタルの悪化が起きるケースが意外と多いんですよ。

 

 

具体的には、

 

  • オメガ3:魚と肉に多くふくまれ、脳の働きには欠かせない成分。亜麻仁油からとることもできるんだけど、なんせ体内の吸収率が悪いのが難点。ベジタリアンの場合は、乳製品で補う必要がある。
  • ビタミンB12:ガチのベジタリアンほどビタミンB12が足りない傾向があり(4)。ビタミンB12はDNAの合成なんかにも使われる超大事な成分だし、ほぼ肉からしかとれない栄養素なんですな。
  • カルシウム:ビーガンはどうしてもカルシウムが不足しがち(5)。野菜のカルシウムは体への吸収率が悪いんで、どうしても少なめになっちゃうんですね。まぁこれは乳製品で補えばOKですが。

 

の3つが代表例でしょうか(あと人によっては鉄分とか亜鉛も不足しがちですが)。とくにビタミンB12不足のダメージをよく聞きますんで、ベジタリアンなライフスタイルを選んだ方はご注意ください。

 

 

まぁ個人的には、肉を食ったほうがタンパク質の摂取が楽なんで、ベジタリアンになろうとは思っておりません。が、「加工食品や精製油を減らす!」って考え方が体にいいのは間違いありませんし、菜食主義については個人の信条の問題も大きいですからねぇ。

 

 

上に挙げた点にだけ注意していただければ、十分に健康的なライフスタイルとしてアリではないかと思う次第です。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。