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抗生物質でダメージを受けた腸内環境は、まず2度と同じ状態にはもどれない

Antibiotics

 

当ブログでは、ちょくちょく「抗生物質はあんま使わないほうがいいですよー」と書いてたんですが、「もっと詳しく!」といった声がありましたんで書いてみます。

 

 

1回の抗生物質でも腸内は悪性の菌だらけに

もちろん抗生物質は、人類の命を救ってきた素晴らしい発明であります。が、ここ数年は乱用が問題になってまして、腸内環境へのダメージが騒がれるようになってきたんですね。

 

 

例えば2015年の良書「失われてゆく、我々の内なる細菌」によれば、抗生物質により腸内細菌が死亡。腸のブロックする機能がなくなり、毒性の強い微生物が全身にまわっちゃうんだそうな。

 

 

しかも、この現象は、少しの抗生物質でも起きちゃうのが困り者。1985年の実験(1)だと、抗生物質を1回使っただけでも腸内に悪性の菌が増殖して、激しい下痢や大腸炎が起きちゃったんだとか。

 



 

 

1回ダメージを受けた腸内環境が回復するのは難しい

2008年の実験だと、1回の抗生物質でおよそ3分の1の腸内細菌が悪影響を受けるとのこと。それも、1回受けたダメージは半年が過ぎても満足には回復しないらしい。もともと抗生物質で下痢を起こす人は多いんですが、腸内細菌のダメージによるところも大きそうであります。

 

 

しかも、腸内環境の悪化は胎児にも移動しちゃうんで、近ごろ生まれながらに良い細菌が少ない子どもも増えてるみたい。このあたりは、アレルギーの子どもが増えてきた一因なのかもですな。

 

 

 いったんこの状態になると、自己免疫性疾患のリスクが激しくアップしていきます。具体的には、

 

  • アレルギー全般:腸から漏れだしたアレルゲンで免疫が暴走する
  • 栄養吸収不良:ミネラルの吸収ができなくなる
  • IBD(炎症性腸疾患):長期にわたって下痢と血便が続く
  • クローン病:すべての消化管に潰瘍ができる
  • 関節炎:免疫の暴走で関節が炎症を起こす

 

みたいなところ。クローン病やIBDになると治療は難しいんで、そうなる前に腸内のダメージは最小限に抑えておきたいもんです。

 

 

そんなわけで、よほどのとき以外は抗生物質は避けるのが吉。どうしても使わねばならないときは、プロバイオティクスを使いつつ、ビタミンCやヨウ素といった免疫系に必要な栄養素を補うのがよいかと思います。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。