今週末の小ネタ:筋トレ前に朝食は食べるべきか?コラーゲンサプリで肌は若返るのか?「電子タバコは安全」はウソ?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
筋トレ前に朝食は食べるべきか?
筋トレ愛好家の間では、「トレーニング前に飯を食うべきか、それとも空腹でやるべきか?」ってのが、わりと定番の議論だったりします。トレーニング前の食事タイミングで、運動のパフォーマンスが変わるんじゃないか?って問題ですな。
そこで最近発表された短期クロスオーバー試験(R)は、このテーマについて面白い知見を提供してくれていて勉強になりました。「筋トレ前に炭水化物を摂るべきかどうか」に興味がある方には、特に参考になるでしょう。
まずは研究デザインからざっくり見てみると、
- 対象は週3回以上筋トレしているトレーニー16名(男性13名、女性3名)。全員が「普段は朝食を食べている」タイプ
- 実験では3パターンの朝食をランダムに摂取してもらい、その2時間後に筋トレを実施。朝食の条件は以下の3つ:
- 高炭水化物食:体重1kgあたり1.2gの炭水化物(約580kcal)
- 低炭水化物食:体重1kgあたり0.3gの炭水化物(同じく約580kcal)
- プラセボ:ほぼゼロカロリーのものを摂取
みたいになります。その後、バックスクワット、ベンチプレス、ショルダープレスなどを、それぞれ80%1RMで3セットずつ限界までやったところ、
- どの朝食をとった場合でも、筋トレのパフォーマンスに差はなかった!
という拍子抜けな結果だったそうな。高炭水化物でも、低炭水化物でも、プラセボでも、筋トレのレップ数に違いは出なかったらしい。
まあ、この研究は1回きりのワークアウトに限定された短期試験なので、これだけで結論を出すのは難しいところはご注意ください。実際、いくつかの過去研究と比べてみると、少し違った結果も出てたりしますんで。たとえば、
- 別の研究では、朝食なしの状態だとスクワットの回数が10回も少なかったという報告もある。
- さらに別の研究では、「プラセボ食(見た目は朝食だが実質ゼロカロリー)」と「本物の朝食」の比較でパフォーマンスに差が出なかったという結果もある。
- 過去のメタ分析(R)でも、は「下半身トレが多い」「セット数が多い」って条件だと、トレーニングに前に炭水化物を摂取する意味があるかも?って傾向が報告されている。
みたいな感じっすね。これを見ると、「朝食を食べる」という行動そのものが、心理的なプラセボ効果を生み出している可能性もあるんでしょうな。
ってことで、今回の研究結果を踏まえて、私なりに結論をまとめてみると、こんな感じになります。
- 空腹で筋トレしても、パフォーマンスが落ちない場合もある→ 特に上半身メイン、ボリューム低めのセッションなら影響は少なめだろうと思われる。
- ただし、下半身トレが多い日やハイボリュームセッションでは炭水化物の恩恵がありそう→ 長期的な下半身筋力アップを狙うなら、食べた方が無難
- プラセボ効果や「食べた安心感」もバカにできない→ 空腹感のコントロールがカギになる可能性もある
というわけで、個人的には「内容次第では朝食を調整する」戦略を使うのがよかろうと思っております。たとえば、
- 軽めの上半身トレの日 → 空腹 or カフェインだけ
- 脚トレ・高ボリュームの日 → ご飯 or バナナ+プロテインで軽く補給
みたいな感じで使いわけでもよいかもですな。ということで、悩んでいるトレーニーの方は、「自分のトレーニング内容」と「空腹感の影響」を基準に、うまく使い分けてみてくださいませ。
コラーゲンサプリで肌は若返るのか?
「コラーゲンを飲むと肌がプルプルになるのか?」って議論は昔からよくありまして、このブログでもいろいろ書いて来たんですが、最新のメタ分析(R)がこのテーマに切り込んでくれておりました。
このメタ分析では、合計1,474名の参加者を対象にした23件のランダム化比較試験(RCT)を統合。経口で摂取するコラーゲンサプリを使い、肌の弾力、水分量、シワの改善効果が得られるのかどうかを調べております。
で、ざっくりした結論を見てみると、こんな感じです。
- コラーゲン摂取で肌の弾力・保湿・シワ改善に効果がある
- 特に魚由来のコラーゲンを使った場合に効果が大きい
- 女性に特に有効な傾向がある
ということで、かつては「コラーゲンなんて疑似科学!」と言われた時代もありましたが、実際にはそれなりの効果があるのかも……みたいな結果ですね。
が、データを見てみると、「効果があった」とされる研究の質に問題がありまして、これが判断を難しくしているところです。具体的には、
- 効果が高かった研究の多くが製薬会社の資金提供を受けていた
- 研究の質が低い(バイアスが入りやすい)研究に限定して効果が見られた
- 質が高い研究だけを見ると、ほぼ効果がない
って感じで、つまり、「プラセボとの比較がきちんとされていない」「研究デザインが甘い」「利益相反がある」みたいな研究ばかりなんですよね。うーん、微妙。
まあ、個人的にはコラーゲンには希望があるだろうと思ってまして、それと言いますのも、
- 魚由来のペプチドコラーゲン(低分子)に限っては、吸収率が高く、体内で活性を持つ可能性もある
- 一部では、骨や関節の健康への影響も報告されており、美容以外のメリットもありうる
- コラーゲン摂取によって、体内でのコラーゲン合成を間接的にサポートするという説も存在する
という考え方はできるんで、まったくの無意味とは言い切れないんですよ。コラーゲンを使う時は、ここらへんのメリデメを踏まえておく必要があるでしょうな。
もしコラーゲンが気になった場合は、以下のような条件を意識してみるといいかもしれません。
- 魚由来の低分子コラーゲンペプチド(1日2.5~10g)を選ぶ
- できるだけ第三者機関の認証があるサプリを選ぶ
- 最低でも8週間は継続してみる
- 他の栄養素(ビタミンCや亜鉛)と組み合わせて摂取する
いまんとこ質の高いRCTが増えるのを待つしかない感じですが、現時点では「肌プルプル確定サプリ!」と期待しすぎずに取り入れてみるのが良さそうっすね。
「電子タバコは安全」はウソ?
「電子タバコは体に悪くないのか?」を調べた大規模な研究(R)が出ておりました。
この研究は、アメリカの「All of Us」研究プログラムに参加した249,190人(平均年齢29〜51歳)を対象に、3.7~3.9年にわたって追跡した大規模なもの。研究の対象になったのは、
- 電子タバコのみ使う人
- 紙巻きタバコのみ使う人
- 両方使う「デュアルユーザー」
- どちらも使わない人
という4つのグループで、全員のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や心血管疾患、糖尿病などの発症リスクを比較しております。
その結果がどんな感じだったかと言いますと、
疾患 | 電子タバコのみ | 紙巻きタバコのみ | デュアル使用 |
---|---|---|---|
COPD(肺疾患) | +129% | +575% | +691% |
高血圧 | +39%(30〜70歳) | +20% | +21% |
心不全 | リスクなし | +50% | +76% |
動脈硬化性疾患 | リスクなし | +66% | +118% |
2型糖尿病 | リスクなし | +18% | リスクなし |
みたいになります。いやー、これはけっこう怖い数字じゃないでしょうか。特に*電子タバコ単体でも肺疾患のリスクが129%も高まるってのは、「タバコよりマシ」ではあるものの、それで片付けるわけにもいかないレベルっすね。
さらに注目なのが、電子タバコと紙巻きタバコを両方使う人が一番ヤバいという点でして、たとえば肺疾患に関しては、紙巻きタバコ単体でも+575%とぶっちぎりのリスクですが、両方使用だと+691%にまで跳ね上がってますからね。また、動脈硬化や心不全のリスクも、デュアルユーザーで最高値を記録してますんで、これも怖いですなぁ。
ちなみに、なぜ電子タバコが悪いのかと言いますと、
- 200℃以上で加熱されたときに、有害な化学物質(ホルムアルデヒド、重金属など)が発生する
- 高濃度ニコチンが血管を収縮させ、高血圧や心血管系リスクを上げる
- 加熱時にプロピレングリコールなどが分解され、新たな有害物質が生まれる可能性も
みたいな問題があるからです。つまり、煙じゃなくて「蒸気」だから安全、というのはちょっと無理があって、「タバコよりマシ」ではあっても「無害」では全然ないってことですな。