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人間関係を激しく左右するっぽい「ビッド理論」について考えてみよう


   

近ごろ、海外のSNS界隈で「バード理論テスト(Bird Theory Test)」ってのが話題になっているそうな(R)。名前を聞いただけではなんのこっちゃわかりませんが、これは自分の友人やパートナーの愛情をチェックするためのテストで、やり方はいたってシンプル。

 

  1. パートナーに向かって「今日、鳥を見たよ」と言う。
  2. そして、パートナーの反応を観察する。

 

これだけであります。ここで、もし相手が「え、どんな鳥?」「どこで見たの?」と興味を示してくれたらOK。逆に、もし相手が「ふーん」とだけ言って会話をスルーされたら、ちょっと黄信号で、もしかしたらあなたとの関係に“何か”が起きているかもしれない……と判断するんですな。

 

なんだか、いかにも疑似科学っぽい話ですけども、いろいろ見てたら「あれ?意外と心理学の裏付けがあるのかも?」って気分になってきたんで、軽くブログにしときます。

 

 

 

なぜ鳥の話で愛情が測れるのか?

「鳥を見た」という謎の発言が、なぜ人間関係のテストになるのか? その背景には、夫婦関係研究の第一人者であるジョン・ゴットマン博士の「関係性ビッド理論」があったりします。ビッドってのは、「“相手とつながりたい”という小さなサイン」のことでして、たとえば

 

  • 「見て、この動画めっちゃおもしろいよ」
  • 「ちょっと疲れたなあ」
  • 「鳥を見たよ」

 

みたいな、日常のなにげない会話はすべて「ビッド」にあたります。こういった小さな会話は、すべて相手に向けて「あなたとコミュニケーションしたい!」ってサインになってるって考え方ですな。でもって、このビッドにどう返すかが良好な関係のカギになるのだと、ゴットマン博士は主張しているんですな。

 

さらに、この「ビッド」への応答パターンを、博士は「向き合う」と「背を向ける」の2つに分類してまして、

 

  • 向き合う:話に乗ってきてくれる(例:「どんな鳥だったの?」)
  • 背を向ける:無視する、または関心を示さない(例:「ふーん」で終わる)

 

このどちらの対応を取るかで、長期的な人間関係の質が決まるというんですね。これは感覚的にもわかりやすい話ではないでしょうか。

 

もちろん、この「ビッド理論」にはデータの裏づけがありまして、ゴットマン博士の研究チームは、何百組もの夫婦を観察したうえで、ビッドへの応答パターンから将来の離婚率がわかるとしております。たとえば、ある有名な研究では、

 

  • 幸せなカップルは、86%の確率でお互いのビッドに応えていた
  • 不幸なカップルでは、その割合が33%にまで低下していた

 

みたいな結果が出てたりするんですよ。つまり、「鳥を見たよ!」ってビッドにちゃんと返してくれるかどうかってのは、あなたの関係が“向き合っている”状態にあるかを示す、わかりやすいシグナルだってことですな。

 

 

ゴットマン博士の理論はやっぱ使える

ちなみに、このゴットマン博士の理論は近年も確認(R)されてまして、ここではG7Pの妥当性をチェックしております。G7Pってのは、ゴットマン博士が開発した7つの原則(ビッド理論を含む)をカップルに教えるトレーニングプログラムで、ざっくりと以下のような内容がふくまれております。

 

  1. 愛の地図を共有する(お互いの好みや価値観を把握する)
  2. 感謝と敬意を育む(ポジティブな感情の表現)
  3. 相手のビッドに応える (上述)
  4. 影響を受け入れる(意見のすり合わせ)
  5. 解決可能な問題を解く(ケンカのマネジメント)
  6. 行き詰まりを乗り越える(長年の葛藤の突破口)
  7. 共通の意味をつくる(儀式や価値観の共有)

 

でもって、この研究では、554名にG7Pを実践してもらい、6カ月にわたる追跡調査を実施。その結果、G7Pを受けたグループは、対人関係の満足度が明らかに向上していたというんですな。もちろん、これはビッドの重要性だけを示したものではありませんが、まあ普段の生活で意識しとしいたほうがメリットは多そうですな。

 

で、ありがたいことに、このビッドに応答する力は後からでも鍛えられることがわかっております。簡単にまとめとくと、以下のような習慣を意識するだけでも、反応力はかなり上がる感じっすね。

 

  • 相手が話しかけたら、5秒以内に反応する → 無理に会話を盛り上げようとせず「聞いてるよ」という姿勢を見せるだけでも効果あり。

  • スマホを置いて、目を見て話す → ビッド応答に最も効くのは、「身体ごと向き合うこと」。

  • “質問で返す”を意識する → たとえば「鳥を見たよ」と言われたら、「どこで?」「何色だった?」など、簡単な質問を添えるだけでOK。

  • 自分からもビッドを出してみる → 「今日は疲れた」「面白いもの見た」など、小さな話題を投げてみる。

 

こうした習慣を1日1回でも積み重ねていけば、パートナーや周囲の人間関係は少しずつ変わっていくんで、恋愛関係だけでなく、友人との会話、職場のやりとり、子どもとの接し方が改善していくはずであります。たとえば部下が「最近ちょっと忙しくて……」とつぶやいた時、それをスルーするか、ひと声かけるかで、信頼関係は大きく変わってくるみたいなことですな。

 

ということで、「バード理論」ってのは、一見すると意味が不明ですが、意外と使えるかもなーとか思った次第です。少なくとも「誰かのビッドにちゃんと応えられたか?」と考えてみるだけでも、割と人間関係の質が変わってくると思いますんで、念頭に置いておくと良さそうっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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