科学が教える「距離を取るべき人」──心理学が示す「本当に危険な性格」とは?
「なんとなく、あの人とは距離を置きたい…」みたいな人物に、誰もが心当たりがありましょう。言動は普通だし、むしろフレンドリーなんだけど、なんだか警戒心がわきあがっちゃうなぁ……みたいな相手ですね。
なんともモヤモヤする話ですが、オタゴ大学とケント州立大学の研究チームが発表した研究(R)では、この問題について「“敵意のある人”に気をつけよ!」という提言をしていて勉強になりました。
この研究は、心理評価ツールで有名な「ミネソタ多面人格目録」の最新版に新たに『敵意スケール』ってのを追加し、その信頼性や有用性を検証したものです。「敵意」は近年の心理学でよく話題になってる性格特性のひとつで、以下のような傾向を含んでおります。
- 他人を操ろうとする
- 嘘をよくつく
- 自己中心的で自慢が多い
- 注目を欲しがる
- 冷淡で思いやりがない
- 敵対的である
要するに、ぱっと見は社交的だったり魅力的に見えることもあるんだけど、本質的には他人を軽視し、コントロールしようとする傾向を持つ人物、みたいな感じですね。
なんで研究チームが「敵意」を調べたのかと言いますと、近ごろはこの「敵意」こそが、多くのパーソナリティ障害に共通する中核的な特性じゃないの?って考え方が出てきたからです。言い換えれば、「敵意」は対人関係における問題の核になりやすいのではないか、と。
この「敵意」が問題なのは、ぱっと見では判断しづらいからです。「ミネソタ多面人格目録」には、「敵意」とは別に「攻撃性」って指標もあったんですが、これが測っていたのは、
- 支配的な態度
- 自己主張の強さ
- 物理的または言語的な攻撃行動
みたいなポイントでして、比較的「ぱっと見でわかりやすいヤバさ」だったんですよ。一方で、この研究で導入された「敵意」は、悪意を直接ぶつけるのではなく、じわじわと人を疲弊させるタイプを指してるんですな。怖いですねぇ。
でもって、この研究の結論は明快でして、
- 攻撃性よりも、敵意のほうが明らかに“機能不全”度が高い!
って感じになっております。つまり、敵意がある人ってのは、他人との信頼関係を壊しやすかったり、感情的に不安定になりやすかったりって問題を起こしやすいってことですな。
では、なんで敵意がそこまで問題の種になるのかと言いますと、このパーソナリティを持つ人は、直接的な暴力や怒鳴り声ではなく、以下のような“見えにくい”形で害を及ぼしてくるからです。
- 他人を常に疑ってかかる
- 感情が安定せず、これを他人にぶつける
- 世界が自分を攻撃しているように感じる
- 他人との関係にいつも不安を抱く
つまり、敵意がある人ってのは、表面的にはにこやかに見えても、内面では他人に対する深い不信感や怒り、被害者意識が渦巻いているわけです。だからこそ、敵意が多い人と接していると、こちらが疲れ果てちゃうんですな。
敵意のある人を見抜くのは難しいんだけど、この研究を見てると、だいたい以下のようなパターンに注意したら良いのかもなーって気がしております。
- 敵意チェックリスト
- 誰かの悪口や陰口が多い
- 正直者をバカにするような発言が多い
- 小さなルール違反を自慢する
- 自分は「特別」と言外に主張する
- 他人への共感や感謝が極端に少ない
- 他人の成功にイライラしている様子を見せる
- 社会や組織に対する不満が常にある
まあ、このリストは、私が「こういう傾向があるよなー」と思った特徴を並べただけなので、そこは注意していただきたいんですけど、上記のような傾向が“慢性的”に続いている時は、ちょい警戒したほうがいいかもですね。
ちなみに、こうした敵意が発生する理由はまだよくわかってないんですが、過去の研究をふまえると、以下のような要因があるんじゃないかと思われております。
- 幼少期の不安定な愛着体験
- 人との信頼関係が築けなかった過去がある
- 慢性的な自己不信や劣等感がある
- 被害妄想や現実逃避傾向がある
こうして見ると、敵意がある人ってのは、単に「悪い人」ってわけじゃなくて、他者との関係性に深い不安を抱えている人だと言えるかもですね。
ということで、話をまとめると、
- 敵意は見えにくく、じわじわと他人を傷つける
- 敵意がある人は「操作・不信・誇大・冷淡」などの性質を持つ
- 敵意がある人との関係が続くほど疲れやすくなるため、早めの見極めが大事
みたいになるでしょう。敵意系の人とつきあい続けると、人間関係での失敗やストレスが激増しますんで、自分の違和感センサーをモニタリングしつつ、今後は、ただ「怒りっぽい人」だけでなく、「やけに馴れ馴れしいけど不自然な人」にも、ちょっと注意を払ってみたら良いのではないかと。


