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体の中に入り込むマイクロプラスチックには、どこまでビビるべきか?そして、どう対策すべきか?

 

こんなご質問をいただきました。

 

最近ニュースで『人間の血液からマイクロプラスチックが検出された』と見ました。フェイクニュースかと思ったんですが、本当にそんなことがあるんでしょうか? もし本当なら、どれくらい健康に悪いのか知りたいです。

 

とのことで、現代人の中にはちっちゃなプラスチックが混入しまくっているのは事実か、そしてそれが事実なら健康被害レベルはどんなものなのか、と。

 

で、まずこれが事実かってとこから言えば、間違いなく事実であります。現代人の体内にはプラスチックが入り込んでまして、それも“ちょっとだけ”ではなく、 血液・胎盤・精巣・脳・動脈プラークなど、全身の主要組織で検出されたって報告はめっちゃ多いので。

 

 

 

マイクロプラスチックはどれくらい小さい?

まず前提として、マイクロプラスチックは直径1μm〜5mm、ナノプラスチックは1nm〜1μmぐらいの、めっちゃ小さいプラスチックを意味しております。つまり、肉眼では絶対に見えないレベルで、この微粒子が食事や呼吸を通して少しずつ体内に入っていくんですな。

 

2024年のレビュー(R)によると、

 

  • 水道水やペットボトルの飲料に数千〜数百万個の粒子が混ざり込んでる

  • 海産物・塩・ビール・蜂蜜にもマイクロプラスチックが混入している

  • 空気中にもマイクロプラスチックが浮遊している(特に室内では衣類や埃から体内に入ることが多い)

 

って感じだそうで、現代の生活でマイクロプラスチックを「吸わない・食べない」はほぼ不可能な状況だと考えられるんですよ。ちなみに、普通のイワシ100gには約240mgのマイクロプラスチックが含まれていた例もありまして、こりゃあどうしようもないですな。


さらに、もっと怖いのはその後の話でして、飲み込んだプラスチックは単に排泄されるだけではなく、血液を通って体内を巡るんですよ。たとえば、

 

  • 血液中からPETやポリスチレンを検出(R)

  • 胎盤でプラスチックを確認(R)

  • 頸動脈プラーク中にポリエチレン、心疾患リスク3.5倍になるかも(R)

  • 脳にも沈着し、神経炎症を促進するかも(R)

 

って感じで、めっちゃ怖い報告が出てたりするんですよ。しかも一部の観察研究では、体内にマイクロプラスチックがある人ほど炎症マーカーが高く、動脈硬化が進行していたという傾向も報告されてまして、「いやだなぁ……」って気分がいや増すわけです。

 

 

 

が、まだ証拠は少ないのでなんとも言えなかったりもする

ただし、実際のところ、マイクロプラスチックの研究はまだまだ少ないのが現実でして、ちゃんとした研究者であれば、「現時点ではまだ“関連”レベルの証拠しかないよなー」とみなすのが一般的だと思います。

 

マイクロプラスチックの研究が少ない理由は単純で、ズバリ「測定が難しすぎる」からです。マイクロプラスチックってのは小さすぎて、検出技術がまだバラバラで定まってない段階なんですよ。特に10μm以下の粒子は見逃されやすいので、正味なところ、人体にどこまで蓄積されているのかを判断するのが不可能な状態だったりするんですよね。

 

と同時に、割りと最近になって言われはじめた問題なので、ヒトを長期間追跡する研究がほぼ存在しないのも難点っすね。これらのポイントをまとめると、いまの時点では「マイクロプラスチック=健康被害確定」ってレベルの話ではまったくないので、あんまり恐怖ばっか煽ってもなーって感じではありますね。

 

ただ、マイクロプラスチックが体に良いってことは絶対にないし、動物実験では割とイヤーな報告が多いのも事実。たとえば、脳機能の低下や善玉菌の減少、肝臓・腎臓での酸化ストレス増加といった問題は指摘されてますんで、いまの段階では「よくわからんが注意だけはしとくかー」ぐらいの気持ちで臨むのがよろしいのではないでしょうか。

 

 

 

では、具体的にどんな対策を取るべきか?

では、具体的にどんな注意をすべきか?ってことですが、いまのとこ言えるのは、ざっくり以下のようなポイントになるでしょうね。

 

  1. プラスチック容器で加熱しない:プラスチックの容器は、電子レンジで3分チンしただけで、数百万個の粒子が放出されたりするので、加熱はガラス・陶器でやるほうが無難かも。


  2. ペットボトルを再利用しない:ペットボトルは摩擦で内部からマイクロプラスチックが溶け出すこともあるので、1回きりで使用はやめておきたい。普段づかいではステンレスかガラスボトルに切り替えといたほうが無難かも。


  3. プラスチックまな板もアレかも:プラスチックのまな板は、包丁で削れて食材に混ざることもあるもんで、木や竹のまな板を選ぶのが無難かも。と言いながら、私はキャンプでプラスチックのまな板を使ってますが(やっぱ便利なんで)。


  4. 包装食品を減らす:長期保存されるほど添加剤や可塑剤が溶出するケースが多い。できれば、瓶詰め・紙包装・裸売りを優先しておくほうが無難かも。


  5. 魚は「管理された養殖魚」を選ぶ:野生魚は海洋マイクロプラスチックを多く取り込んでいる傾向があるため、環境の良いブランドを選ぶのが無難かも。


  6. マスク選びに注意する:不織布マスクから微粒子が放出される報告もあったりするので、感染リスクが低い環境では布製や再生素材を選ぶのが無難かも。


  7. 食物繊維を増やす:食物繊維は腸の滞留時間を短くし、血中への吸収を減らしてくれるんで。


  8. ベリー類を食べる:アントシアニンが内分泌撹乱を緩和する可能性があるため、朝にブルーベリーをひと握りぐらい食べておくのもいいかも。

 

まあ繰り返しになりますが、マイクロプラスチックの問題はまだまったく確立されたものではないので、そこはくれぐれもご注意ください。将来には「マイクロプラスチックは問題なし!」って結論になるかもしれないんで。


とはいえ、注意しとくに越したことはないので、特に便秘気味だったりコレステロールに問題があったり慢性炎症だったりといった人は、くれぐれも腸をいたわりつつマイクロプラスチック対策を心がけておくと良いのではないかと。どうぞよしなにー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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