自然は体に良い!では、自然のパワーを引き出すために必要な最強のスキルとはなにか?
「スマホの通知を追ってたら、気づいたら夜になってた」みたいな経験は、誰にでもありましょう。次から次へと流れてくる情報の洪水に身をひたしていると、まるで脳が絶え間ない刺激のシャワーを浴びているような気分になり、結果として常に気持ちはリラックスする暇もなく、なにか疲れまくるような感覚だけが残るわけです。
そんな際にどうすればいいかってことで、「自然とつながることがベストな対策じゃないの?」と思わせるようなデータ(R)が出てて面白かったです。自然がメンタルに良いって話は「最高の体調」でもさんざん書いてますけども、今回の研究では、窓辺の小さなサボテンや、夕日の色合いを眺めるだけでもOKって報告がなされてまして、「自然と触れ合いたいけどキャンプや登山は敷居が高い……」という方には、非常によろしいのではないでしょうか。
自然のメリットを最も得やすい人の特徴とは?
この研究を行ったのはルイス&クラーク大学などのチームで、研究者はまず「自然関連性(Nature Relatedness, NR)」って概念に注目しておられます。これがどのようなものかと言うと、
NR = 自然とのつながりを感じる度合い:たとえば「自然との関係が自分の一部だと感じる」とか「地球上のすべての生命と自分はつながっているように思える」といった感覚。
みたいになります。過去の研究は、NRが高い人はストレス対処がうまかったり、幸福感が高かったりすることが示されてまして、これが重要なのは間違いないところです。とはいえ、これまでのデータでは、「なぜ自然とつながるだけでメンタルが良くなるのか?」というメカニズムについては、まだはっきりしてなかったんですよね。
そこで今回の研究チームは、「自然とのつながりはマインドフルネスに働きかけて、これが自己超越的な感情を生み、結果として心が回復するのでは?」って仮説を立てて、この流れを検証することにしたんですよ。
研究チームは93名の大学生を対象に調査を行い、以下のような尺度を使って検証を行っております。
自然関連性(NR)「自然との関係は自分の大切な一部だ」や「地球上のすべての生命とつながっているように感じる」みたいな質問で検証。
畏敬(Awe)「日常的に驚嘆を感じることが多い」や「ほぼ毎日、何かに感動している」みたいな質問で検証。
思いやり(Compassion)「弱い立場の人を助けることは重要だと思う」や「私はとても思いやりのある人間だ」みたいな質問で検証。
マインドフルネス「歩くときに体の感覚を意識する」や「自分の感情を言葉で表現できる」「不安を感じても、それを否定しない」みたいな質問で検証。
その上で、すべての尺度の関係をチェックしたところ、結果はこんな感じになりました。
NRが高いほど、畏敬(awe)が強かった
上の関係をつなぐのは、マインドフルネスにおける「観察」のスキルだった
一方で「思いやり」への直接的な効果は見られなかったが、「自己への思いやり(セルフ・コンパッション)」を測れば効果が出た可能性はあるかも
つまり、この結果を見る限りは、「自然をよく観察できる人ほど、畏敬の感情を抱きやすい → 自分や世界への優しさにつながる」という流れが示唆されたわけですね。
でもって、この上記のメカニズムの中で、最大のカギを握るのは「マインドフルネス」であります。この能力は、一般的に「今この瞬間に注意を向けるスキル」として知られてるんだけど、この研究ではさらに5つの要素に分解してまして、
観察
自分の体の感覚や外の刺激に気づく
例:「歩くときに足の接地感に意識を向ける」
描写
自分の感情を言葉で表現できる能力
例:「いま緊張してるな」「なんとなく不安だ」
意識的行動
注意を逸らさずに行動できる力
例:「スマホを見ながら歯を磨かない」
非判断
感情や思考を「良い・悪い」と裁かずに受け止める
例:「不安を感じても、それを否定しない」
非反応
感情に自動的に振り回されず、ワンクッション置ける力
例:「カッとなっても、すぐ反応しない」
みたいになります。このうち、研究でとくに強い効果を示したのが観察でして、ざっくり言えば「自然を細かく観察できる人ほど、畏敬の念(awe)を抱きやすい」という流れが見えてきたわけですな。
ちなみに、この観察のスキルが高い人ってのは、自然をじっくりと見つめることで「自己超越的な感情」ってのが引き起こされ、こいつがメンタルにめっちゃ良いんだそうな。具体的にどんな感情なのかと言いますと、
畏敬:自然の壮大さに触れて自分の存在が小さく思える感覚
感謝:自然や生命へのありがたみ
愛:他者や環境へのあたたかい気持ち
思いやり:弱者や環境を守ろうとする気持ち
インスピレーション:創造意欲ややる気をかき立てられる
といったラインナップになってます。これらの感情は「自分」という枠を超えた大きなものとつながっている感覚を呼び起こし、ストレスを和らげたり、幸福感を高めたりすると考えられてるんですな。なかでも、今回の研究で顕著だったのが「畏敬」の効果で、これもまた「最高の体調」で書いたとおりですね。
自然の力を万全に味わうにはどうすればいいのか?
ということで、ここまでの話をまとめると、
自然とつながる感覚(NR)は、マインドフルにおける「観察」のスキルを通じて高まりやすい
観察のスキルが畏敬の感情を呼び起こし、これがメンタル回復につながる
ってのが大事なポイントになります。なので、この知見を実生活に活かすのであれば、以下のようになるでしょう。
- 公園を歩くときに「ディテール観察」:ただ歩くのではなく、木の葉の形や揺れ方を細かく見る。
- ベランダの植物を「毎日比べる」:昨日と今日で葉の色がどう違うか? のような小さな変化を探す。
- 天気を「五感で味わう」:雨なら音や匂い、晴れなら光や影をじっくり感じる。
- 「窓辺のサボテン」を先生にする:小さな観葉植物でもOK。ときどきじーっと観察するだけでNRは上がる。
要は「自然を見ながら、意識的に観察するのが大事だよー」って話でして、これだけで心の反応は変わっていく可能性が大。とにかく自然をよく見ようぜ!ってことですね。私の過去のブログでも、「観察」をベースにしたマインドフルネスが自然関連性(NR)の効果を引き出してくれるって話はしたことがなかったんで、今回の研究はまことにありがたいことでありました。次回のトレランは、もっと観察を意識してみよう……。