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「朝の光」と「夜のスマホ断ち」で日中のパフォーマンスが上がる理由

 
 

睡眠の改善について健康界隈でよく言われるアドバイスといえば、

 

  1. 朝に太陽光を浴びよう!
  2. 寝る前のスマホはダメ!

 

という2つでしょう。私もこのブログで何度か取り上げた話でして、個人的にも実践しております。

 

そんな中、近ごろ出た新しい研究(R)では、日本のエリートアスリートを対象に「朝の強い光20分+寝る前30分のデジタル断食」を2週間やってもらったらどうなるか?という実験をしてくれてまして、とても参考になりました。

 

まず実験のデザインをチェックしてみると、こんな感じになっております。

 

  • 対象になったのは、フェンシング、競泳、体操、スキーなど、バリバリのトップアスリート25名
  • 実験では、みんなに2つの作業を2週間ほど続けてもらう。

    • 朝起きたら10,000ルクスの光を20分浴びる(専用ライトを35cm先に置く)

    • 寝る30分前はスマホなど電子機器を完全にシャットアウト
  • 比較として、普段どおりに生活する人たちを設定し、睡眠、昼間の眠気、気分、反応速度、ジャンプ力などをチェックする

 

ということで、朝に強い光を浴びるのと、寝る前のスマホ禁止を徹底してもらい、アスリートたちにどんな変化が出るのかを調べたわけですね。ここまで実践的かつパフォーマンス指標までチェックした研究って意外と少ないので、まことにありがたいことであります。

 

で、結論がどうだったのかと言いますと、まず大事なポイントとして、

 

  • 睡眠の内容はほぼ変わらなかった

 

って感じだったんだそうな。睡眠には光のコントロールが大事ってのはよく言われることなんで、これはちょっとガッカリな結果ですね。

 

ただし、ちょっと面白いのはこの先で、「朝の強い光20分+寝る前30分のデジタル断食」を続けた参加者は、

 

  • 元気のスコアが改善した
  • 昼間の眠気が減る傾向があった
  • 反応時間が速くなった
  • ジャンプ系のパフォーマンスが向上した

 

という結果だったんだそうな。要するに、睡眠は変わらないのに体感的・パフォーマンス的な部分は地味に改善してたらしいんですな。

 

「睡眠が変わらないのに元気になるってどういうこと?」って疑問がわくかもですが、これは人間の体が光によって“体内時計の微調整”を進めるからであります。

 

光ってのは体内時計のマスタースイッチみたいなものでして、

 

  • 朝の光を浴びる → 体を「活動モード」へ押し上げる

  • 夜の光をカットする → 体を「休息モード」へ滑らかに切り替える

 

という働きがあるんですよ。これによって、たとえ睡眠の“量”や“質”には影響が現れないレベルでも、

 

  • 日中の覚醒レベルが少し上がる

  • 集中力が上がる

  • パフォーマンスの“立ち上がり”がよくなる

 

という効果がじわっと出るみたいなんですよ。しかも、この研究はたった2週間での効果なので、研究チームも「1カ月続けたらもっとハッキリ効果が出るかも」と言っていまして、これには私も同意っすね。

 

でもって、興味深いポイントがもう1つありまして、実は今回の研究では、光+デジタル断食を行ったグループのほうが、なぜか「睡眠時間がバラついてしまった!」という謎の現象が起きているんですよ。普通に考えれば、朝の光ってのは体内時計を安定させる方向に働くはずなので、これはよくわからん事態なわけです。

 

なんとも不思議な話ですけども、これについては実験の参加者が「生活が忙しいアスリート」なので、大会準備やトレーニング時間の変動、日々の生活リズムなどで、むしろ不規則になってしまったのだと考えられております。この点を考えると、参加したアスリートたちはコンディションが最悪だったにも関わらず、反応速度アップや活力スコアアップなどの効果が出たわけですから、意外とポジティブに解釈できるのかもしれません。

 

ちなみに、この結果について、自分はアスリートじゃないから関係ないなどと思うなかれ。朝20分のライト+夜30分のスマホ断食ってのは普通の人にも十分効くと考えられてますんで、ぜひお試しいただきたいわけです。よしんば効果がなかったとしても、そもそも無料だし、リスクゼロだし、手間もほぼかからないので損もないでしょう。

 

具体的にこの実験の内容を生活に取り入れたい時は、以下のガイドラインを参考にしてください。

 

朝20分のライト

  • 時間帯:起床後30分以内(遅くとも1時間以内)
  • 光の強さ:10,000ルクス以上
  • 距離と角度:顔から30〜60cm、やや上から照射
  • 時間:連続で20分以上

 

  • 注意点
    • 遮光レンズ・ブルーライトカットメガネは避ける
    • 直視する必要はないが、視野に入れること
    • 日光の場合は直射日光を10〜15分

 

夜30分のスマホ断食

  • 就寝30分前からスマホ・PC・テレビをオフ
  • 光の強い画面・ブルーライトを避ける
  • スマホ断食中は、読書、ストレッチ・瞑想、ジャーナリングなどを行う

 

  • 続けるコツ
    • 時間を決めて「夜モード」を習慣化
    • スマホを別室に置く
    • 物理的に触れない仕組みをつくる(箱に入れるなど)
    • 夜の照明は電球色(3000K以下)に

 

ということで、いろいろ書いてきましたが、「なんか最近だるいな…」「朝ボーッとするな…」と思ったら、高価なサプリを買うより、まずは「朝の光20分・夜のデジタル断食30分」ってのを1カ月やるほうが良いかもしれません。お試しあれー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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