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1回2分でめっちゃ健康になれる運動法を調べたメタ分析の話

   

 

「運動する時間がない!」ってのは健康に関する悩みのド定番。実際、世界の成人の4人に1人は運動不足と言われてまして、なかなか難しい問題っすね。

 

が、ここで近年よく言われるようになったのが、「エクササイズスナック」って考え方であります。これは「1回1~2分の超短時間運動を1日数回、いつもの生活の合間に差し込む方法」みたいな感じで、たとえばこんな感じです。

 

  • 出勤前にスクワット1分

  • 階段を30秒だけ全力上り

  • 昼休みにバーピー40秒

  • 夕方にジャンプランジ30秒

 

これを1日だいたい3〜6分ぐらいやればいいんじゃない?ってのが、エクササイズスナックなんですな。当然、時間がなくてもできるし、運動嫌いでも継続しやすいし、それでいて心肺機能を高める効果が期待できるしで、かなり実用的な方法じゃないかと思うわけです。

 

 

 

エクササイズスナックは本当に効果あるのか?

では、エクササイズスナックは本当に効果あるのかってことで、最新のメタ分析(R)が良い結論を出してくれておりました。研究の方法をざっくりまとめると、

 

  • 1回2分〜最大10分の短時間運動の効果を示した研究14件をピックアップ(うちRCTは12件)

  • 合計483人分のデータをまとめる

 

みたいになります。もちろんPRISMAガイドラインに準拠してまして、エクササイズスナックの信頼できる総合評価としてはよろしいのではないでしょうか。

 

その分析の結果は、以下のようになってます。

 

  • VO₂maxがアップした:VO₂maxは「走ったときの強さ」「階段で息切れしにくさ」などに直結する心肺能力の最重要指標。VO₂maxが高い人は死亡リスクが圧倒的に低いことがわかってまして、アンチエイジングを狙うならぜひ高めておきたいとこっすね。で、分析の結果は、全データ解析では統計的に有意じゃなかったものの、バイアスリスクの高い1件を除外するとMD=1.43で有意な改善が見られたそうな。2分の運動を分けてやっても心肺機能はちゃんと上がるってのは、かなり良い結果ですな。

 

  • ピークパワー(全力の瞬発力)もアップ:ピークパワーは瞬発系の能力で、こちらはSMD=0.68の有意な向上が見られたそうな。また、サブグループ解析では、日常の運動量が少ない人ほど効果が大きいって結果でして、こちらもめっちゃ希望がありますな。

 

  • 脂質(コレステロール)にも効果がある:血中脂質にも良い影響があり、総コレステロールとLDLコレステロールは有意に改善。ただし、HDLコレステロールと中性脂肪には変化がなかったとのこと。食事制限なし・薬なしでもコレステロールが改善したってのは良いですね。

 

  • 体重や体脂肪には変化なし:一方で、体重や体脂肪は変わらなかったようで、これはちょっと残念ポイント。だけど、まあ体重は健康の本質的な指標じゃないので、代謝と機能が改善してるなら十分ってことじゃないでしょうか。

 

ってことで、エクササイズスナックは、脂肪燃焼の効果はないものの代謝エンジンを強化するかもってことで、これは非常によろしいですな。

 

では、「なぜそんな短時間で良い効果が得られるの?」ってことですが、これはいくつかのメカニズムが考えられるでしょう。

 

 

  1. ミトコンドリアへの“点火回数”が増える:強い刺激はPGC-1αなどのシグナルを通じてミトコンドリアの生合成を促してくれるので、短時間でも1日複数回の点火で積分的に効くイメージっすね。

  2. 末梢の血流が上がる:階段ダッシュやバーピーなどで一気に血流が増えると、血管内皮への“よいストレス”がかかり、一酸化窒素(NO)経路が活性化して血管機能が改善する。

  3. インスリン感受性の小刻みブースト:食事の合間に短い高強度を入れると、骨格筋への糖取り込みが促進しやすいのも良いところ。なので、長い有酸素運動をするよりも良い可能性がある。

 

ここらへんをふまえると、「あんまガッツリ運動したくないけど健康は維持したい」みたいな方は、エクササイズスナックに取り組んでみると良いのではないでしょうか。

 

 

 

エクササイズスナックはどう実践すべきか?

では、このメタ分析をベースに、エクササイズスナックを実践するための、具体的な方法をチェックしてみましょう。たいていの研究では、どんなエクササイズが使われているのかと言いますと、

 

  • エアロバイクで全力ダッシュ

  • 階段昇降(ダッシュ/速歩)

  • 自重筋トレ(スクワット等)

 

って感じでして、これらを1回2分ぐらい実践すればOKって感じです。ただし、これだといまいち取り組みづらいでしょうから、だいたい以下のように考えてみるのがお勧めっすね。

 

 

1日6分のエクササイズスナック(器具なし)

  • 基本
    • 1セット=2分以内
    • 1日3回(朝・昼・夕が基本)
    • RPE8〜9/10の辛さを目指す(息があがる“ややキツい〜キツい”)
    • セット間は数時間空ける(生活の合間に差し込む)

 

  • 初心者向け
    • その場スクワット 30秒 → 休憩30秒 → 2セット(代替として階段ダッシュ 1フロア分 × 2往復でもOK)
    • 1日3回(朝・昼・夕)

 

  • 中級者向け
    • ジャンプスクワット 20秒 → 休憩40秒 → 2セット(代替として階段“速め〜全力”上り 20秒 × 2本でもOK)
    • 1日3回

 

  • 上級者向け
    • バーピー 30秒 → 休憩30秒 → 2セット(代替としてリバースランジジャンプ 20秒 → 休憩40秒 → 2セットでもOK)
    • 1日3回

 

いずれもフォームが崩れるほどの全力は不要なんで、「高強度だけどフォームが崩れない」レベルを守るようにしてくださいませ。この他にも、イスからの立ち座り(チェアスクワット)を「30秒 × 2セット」やったり、カーフレイズを「30秒 → 休憩30秒 → 2セット」でやってみたりなど、自分のライフスタイルに合わせた手法を選んでみてくださいませ。同じことばっかやってると飽きるんで、週替わりで2〜3種目をローテーションすると、さらに続きやすいんじゃないかと。

 

ってことで、これだけの小さな努力を積み重ねるだけでも筋肉・心臓・血管に良い影響が得られますんで、気になる方はぜひお試しください。ここで大事なのは“1日何回も身体に刺激を与える”ことなんで、そこさえ守ればなにがしかの良い効果を得られるはずであります。お試しをー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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