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「太らずに増量したい」は可能か?──16時間断食×筋トレの研究が示す“脂肪をつけない増量”の可能性

  

「筋肉を増やしたいけど、できれば脂肪はつけたくない!」というのが全筋トレ民の希望でしょう。筋肉を増やそうとしてカロリー摂取量を増やすと、どうしても脂肪も増えてしまうため、この問題さえ起きなければ……と願う人は少なくないはずであります。

 

そんな状況下、近ごろ「16時間断食なら脂肪がつきにくくなるのでは?」と思わせる研究(R)が出てまして、とても参考になりました。16時間断食ってのは「1日8時間だけ食べて16時間断食する」スタイルのことでして、このブログでもリーンゲインズの名前で何度も取り上げてますな。

 

この研究は、週3以上の筋トレを1年以上やってる男性10名・女性7名を対象にしたもので、全員に以下のような食事とトレーニングを指示してます。

 

  • いまの体重を維持するのに必要なカロリーに+10%したカロリーの食事を毎日する。

  • タンパク質の摂取量は、1日に体重1kgあたり2.2gを目指す。

  • 筋トレは週4回で、少しずつ負荷を増やしていく定番のやり方を採用。

 

が、この時に、食事法を2つのグループに分けてまして、

 

  • 16時間断食グループ:すべての食事を、トレーニングの1時間後から始めて8時間以内に収めるようにした
  • 通常食事グループ:1日の13時間以上にわたって、同じ内容の食事を分散して摂取した

 

みたいに設定してます。つまり、どちらのグループも栄養と運動量は同じなんだけど、「食べられる時間の長さ」だけを変えたわけですね。

 

この実験を8週間ほど続けたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 結果1:筋肉は両者とも増えた(むしろプチ断食が優勢)

    16時間断食グループ:筋肉は+2.67kg 
    通常食事グループ:筋肉は+1.82kg

    わずかな差ではありますが、一般的に言われる「断食=筋肉が減る」って考え方は、ここでは完全に否定されてますね。

 

  • 結果2:脂肪の増加は、通常食事グループのほうが大きい

    16時間断食グループ:脂肪量の変化ほぼゼロ 
    通常食事グループ:+1.4kgの脂肪増加

    ということで、プチ断食は「筋肉だけを増やす」方向に効果があったということですね。

 

  • 結果3:ただし、下半身の筋力はTREが少し劣った

    スクワットの1RM(最大重量)で比べた時は、プチ断食は通常の食事よりも伸びが約4kgほど低かったとのこと。その理由としては、プチ断食のほうが1日のレップ数が少なかったのと、主観的な“エネルギー不足感”が強かったからだと言われております。

 

 

ってことで、この結果を見て何がわかるのかと言いますと、

 

  • 増量期にプチ断食を行っても筋肉はしっかり増える

  • むしろ脂肪がつきにくくなる可能性が高い

  • ただし、筋力・パフォーマンスはやや落ちるかも

 

という感じでして、プチ断食には良いところも悪いところもあるので、このトレードオフを考えて使ったほうがよさそうっすね。

 

個人的な見解としては、 「短期間でデカくなりたい!」というよりも、「脂肪を抑えながら、ゆるやかに筋肉を増やしたい」 という人に向いていると感じましたね。なので、プチ断食と筋トレの組み合わせは、特に以下のような方と相性がよさそうであります。

 

 

プチ断食+筋トレの組み合わせが向いている人

  • 増量中に脂肪が増えちゃうのが気になる 

  • 空腹に耐える能力が高い、または 朝は食欲がわきにくい

  • 時間をかけて筋肉を増やしたい 

  • コンテストや撮影前に“クリーンバルク”をしておきたい

 

プチ断食+筋トレの組み合わせが向いてない人

  • 爆発的な筋力アップが欲しい(特に下半身)

  • トレーニングの後に、すぐに炭水化物を摂取したい

  • 空腹に弱く、トレーニングの強度が落ちるタイプ

 

 

まあ、この研究はサンプル数が少ない(17名)ので、どうしても限界が出てしまうんですが、過去に行われた類似の研究とも整合性がとれた結果が出てますんで、信頼性は高めだと言ってよいのではないかと。

 

また、研究者も最後にこんなことを述べておられます。

 

16時間断食は、筋肥大・筋持久力・筋力アップが必要な状況下でも適応が可能。ただし、目標や生活スタイルによって効果の出方は異なる。

 

つまり、16時間断食ってのは「脂肪を抑えた増量期に使える戦略」の一つとして活用するのが良さそうっすね。実戦例としては、

 

1. 食事時間を固定(例:12:00〜20:00)

  • 朝は無理に食べない。
  • 昼から夜の8時間に全カロリー(+10%増量)を集中させる。
  • 起床後のトレーニングは、プロテイン(20〜30g)で軽く補ってからでもOK。

2. トレーニングは“断食明け”に合わせる(例:11:00〜)

  • 食事開始の1時間前にトレーニング。
  • 終了後すぐに最初の食事を摂取することで、筋タンパク合成と回復を最適化

 

3. 食事構成:高タンパク・高密度・低GI中心

  • たんぱく質:2.2g/kg を確保(例:体重70kgなら154g)
  • 脂質・炭水化物は、吸収速度やトレーニング時間に合わせて調整
  • 例:トレ後→白米・赤身肉、夕方→サーモン・野菜・玄米など

 

みたいになりますんで、気になる方はお試しください。いずれにせよ、いままでは「断食は減量用」と言われてきたのに対して、「脂肪をつけずに増量するために使えるかも」って可能性が見えたのはナイスなことではないかとー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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