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老いてますます賢くなる人 vs. そうじゃない人の決定的な差はこれだ!という研究の話

 
 

年を取ると人間は頼りがいが出てくるのか?」って問題を調べた研究が(R)面白かったんでメモ。年齢を重ねた人は、チームをまとめる能力に長けたり、若手に的確なアドバイスを送れるようになったりといった状態になるのか?みたいなポイントですな。近ごろは「年を取ったからといって優れた人間になるわけじゃない」みたいな言説もよく耳にしますんで、ちょっと気になるところっすね。

 

 

年を取れば人は優れたリーダーになるのか?

この研究は、オランダ・フローニンゲン大学のチームによるもので、彼らは「リーダーの年齢が上がると、職場での対立をうまく処理できるようになるのか?」という問いに取り組んだんだそうな。

 

研究で注目したのは、以下の2つの要素であります。

 

  • 年齢:人生経験の蓄積により、リーダーとしてのスキルが向上する可能性はあるのか?

  • ジェネラティビティ:年を取ることで、次世代を育てる意欲は向上するのか? ジェネラティビティは心理学者のエリクソンが提唱した概念で、「他者を育てたい」「自分の知識や経験を伝えたい」という欲求を意味している。たとえば、50代のマネージャーがいたとして、「部下を育てようと努力し、全体の調和を意識する人は「高ジェネラティビティ」で、「自分の評価や立場ばかりを気にして、他人の足を引っ張るような人」は「低ジェネラティビティ」だと言える。

 

でもって、研究では2つの実験が行われてまして、

 

  1. 23歳〜69歳のリーダーたち(平均年齢42歳)を対象に、自分のジェネラティビティ、部下との関係性、対立の対処スタイルなどを3回にわたって測定
  2. 部下たちが自分の上司のジェネラティビティを評価し、それと上司の感情コントロール能力を比較

 

みたいな感じで、年齢とジェネラティビティの関係を追ってみたんだそうな。

 

結果、何がわかったかと言いますと、

 

  • 年齢が高くなっただけでは、優れたリーダーにはならない(まあ当たり前ですな)
  • が、年齢が高くて、かつジェネラティビティが高く、感情コントロールがうまいという3つの要素がそろった場合には、最も部下から支持され、職場の人間関係もうまくいく傾向があった

 

だったそうです。つまり、優れたリーダーになるには、年を取ることに加えて、若手を育てたいという気持ちが強くなり、かつ感情の扱いが上手くなる必要があるってことですな。逆に言えば、年を取ってもジェネラティビティが低く、感情のコントロールが下手なままな人が「老害」と呼ばれちゃうのかもですな。

 

 

 

ジェネラティビティは、後天的に鍛えられるらしい

というと、「私にはジェネラティビティなんてない!」と思った方も多いでしょう。というか、かくいう私もジェネラティビティはあんまないです(人様に何か言うのはおこがましいって気持ちが強いんで)。

 

しかし、ありがたいことに、研究チームは「ジェネラティビティは育てられる!」とも述べてまして、特に以下のような方法が推奨されておりました。

 

  • 若手との定期的なメンタリングの機会を設ける → 自分の知識を伝える経験を積むことで、「育てたい」という気持ちが育つ

  • 職場での役割を“自分中心”から“他者中心”へと切り替える → 「自分が活躍する」から「チーム全体が良くなる」へと視点を広げる

  • 「自分の経験をどう残すか?」を考える習慣をつける → いわゆる“レガシー意識”を持つことで、行動の質が変わる

 

なんでも、多くの人は40代以降に「自分が主役じゃなくなってきたな……」と感じることが増えていくんだけど、それこそがジェネラティビティを育てる絶好のタイミングなんだそうな。ここで自分のためじゃなくて、“誰かのため”に動くぞ!とギアを入れ直すことにより、結果的に自分をより成熟させ、「賢いリーダー」への道が開くんじゃないか、と。確かに、ポジティブ心理学の世界でも、「年を取ったら『他人のため』マインドにシフトしないとやってらんないよ」みたいなアドバイスはよく見かけるところですな。

 

ってことで今回の研究を簡単にまとめてみると、

 

  • 年を取れば賢くなったり、人間として頼りがいが出てくるってわけではない。
  • しかし、年を取ったうえで、ジェネラティビティ(育てたい気持ち)、感情コントロール(冷静さ)、他者貢献志向(利他的な態度)を意識して育てることができれば、「年長の賢者」ポジションに移行できる可能性が高くなる。

 

ってあたりがポイントになるんでしょう。世の中には、年齢を重ねるほど「かっこいい!」と言われやすくなる人ってのがいますが、そういうタイプは上記のポイントを自然に満たしているのかもしれませんなぁ。ということで、私と同世代の40代・50代以降のみなさまは、「自分の中のジェネラティビティ」をちょっと意識してみてはいかがでしょうか。若手を育てることが自分自身の“成熟”につながるんだ!と思えば、ちょっとはやる気も出てくるってもんでしょう。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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