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今週の小ネタ:最も死亡リスクが下がるコーヒーの飲み方と量の話、オシャレな場所でデートしても効果がない説


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

最も死亡リスクが下がるコーヒーの飲み方と量の話

「コーヒーは体にいい!」って話はもはや常識ですが、新しい研究(R)では、「コーヒーに砂糖とクリームを入れててもOKなの?」「コーヒーはそもそも何杯ぐらい飲めばいいの?」って問題をあらためて掘り下げてくれてて参考になります。ここらへんの細かいポイントは、いまだに混乱が多いのも事実なので、これはありがたいですねぇ。

 

この研究は、46,222人のアメリカ人(平均47歳)を9〜11年間追跡したコホート研究でして、

 

  • 24時間の食事記録をもとに「どんなコーヒーを飲んでるか」を記録
  • その後の死亡率(全死因・心疾患・がん)との関係を分析

 

という流れで調査を進めたものになっております。シンプルながら大規模なデータで良いですね。

 

その結果がどうだったかと申しますと、

 

  • ブラックコーヒーの効果
    • 全死亡リスク:-14%
    • 心疾患による死亡リスク:-35%

 

  • ちょっとだけ砂糖・クリームならOK
    • 砂糖が1杯あたり2.5g未満(小さじ1/2以下)、飽和脂肪が1g未満(10%クリーム大さじ1以下)の場合
    • 全死亡リスク:-14%
    • 心疾患リスク:-25%

 

  • でも「ガッツリ甘クリーム系」はアウト
    • 砂糖たっぷり(2.5g以上)、クリームどっさり(飽和脂肪1g以上)の場合は、死亡リスクの改善は見られず

 

だったそうです。やはりブラックが最強で、ガッツリ甘くしたコーヒーは、味はうまいけど健康効果は消えるみたいっすね。

 

続いて、日々のコーヒーの量について見てみると、

 

  • 1日2〜3杯のコーヒーで、死亡リスクが最大33%減!

 

という結果だったそうです。これは過去のメタ分析の結果とも整合性がありまして、1日2〜4杯が「健康効果のゴールデンゾーン」ってのは間違いないっぽいですね。

 

ただし、個人的に意外だったのが、今回の研究では「デカフェは効果ナシ」という結果が出ているところです。まあ、これについてはまだ謎が多くて、他の研究ではデカフェでも効果が出てるものも多いんで、ここはまだ議論の余地あるでしょうな。個人的には、おそらくデカフェでも良いだろうと思ってますが。

 

ということで、今回の結果を簡単にまとめておくと、以下のようになります。今後のコーヒーライフの参考にしてください。

 

  • ブラック=最強。苦手な人には飲みにくいかもだが、それだけ恩恵も大きい。
  • 微糖・微脂肪(砂糖<2.5g,脂肪<1g)= 全死亡率↓14%、心疾患リスク↓25%なので、妥協点としては優秀。
  • 高糖・低脂肪=全死亡率は変化なしで、心疾患リスクは↓29%。味重視派にはギリギリの選択かなー。
  • 低糖・高脂肪=全死亡率は変化なしで、心疾患リスクは↓37%(有意差ナシ)。健康効果は期待できなくなる感じ。
  • 高糖・高脂肪=全死亡率と心疾患リスクに変化なし。ただカロリーが増えるだけなので、飲まないほうがマシ。

 

 

 

オシャレな場所でデートしても効果がない説

初デートにおしゃれな場所を選ぶ人は多いでしょう。実際、照明・匂い・音・インテリアは人間関係の印象を左右することがわかってますんで、なるべく居心地のいい場所を選ぶのがセオリーではありましょう。

 

が、新たな研究(R)によれば、「あえて最悪な場所でデートすると意外と仲が深まりやすいかもよ?」という結論になってておもしろかったです。

 

これはジョージア大学などの研究で、201人の学生を使って「第一印象の親密度は場所で変わるのか?」を実験しております。その手順をざっくりまとめておくと、

 

  1. 初対面の男女にペアを組んでもらう
  2. それぞれのペアに「誰とでも最速で親密な関係になれる36の質問」をベースにした会話を45分間やってもらう
  3. その際に、半分のペアは、オシャレ空間(ラベンダーの香り・間接照明・植物)で会話を実施。残り半分には、ダサいオフィス(蛍光灯・書類の山・狭いスペース)で会話をしてもらう。

 

って感じで、オシャレな部屋とダサい部屋で会話してもらった後、それぞれの参加者に、

 

  • 会話の楽しさ
  • 相手への好意・恋愛的興味
  • また会いたいかどうか
  • 実際に連絡先を交換したか

 

などを評価してもらい、1ヶ月後にフォローアップ調査まで行ったらしい。なかなかしっかりした研究でよいですね。

 

さて、気になる結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 75%は連絡先すら交換しなかった

  • 1ヶ月後に会った人は13%

  • 友情や恋愛に発展したのは8%だけ

 

と、全体としてはまあ「そんなもんだろうなー」って感じだったんですけど、唯一おもしろいのが、

 

  • 部屋の居心地の良さと親密度は、ほぼ無関係だった

 

って結果が出てるところです。つまり、オシャレ空間で話をしていても、雑然とした空間で話しても、会話の満足度・好感度・恋愛的な関心などには大きな差は出なかったんですね。まあ1ヶ月後のアンケートでは、オシャレ空間での会話のほうが親密度が高まるかも?って傾向も出てるんですけど、いずれにせよ場所のオシャレさにはそこまでの違いがなさそうな印象であります。

 

ちょっと不思議な結果ですけど、ここで研究チームが挙げている理由はざっくり2つでして、

 

  •  会話タスクが強力すぎた説:今回使われた「誰とでも最速で親密な関係になれる36の質問」は、自己開示をうながす超強力なツールでして、普通の会話よりもはるかに親密になりやすいんですよね。なので、深い話ができたおかげで、場所の威力が関係なくなったんじゃないか、と。

 

  • 「実験だから」と割り切っていた説:被験者の多くが「これは研究だからなぁ」みたいな態度でのぞんだんで、デート気分になってなかった可能性も指摘されております。これもありそうですね。

 

みたいになります。こうなると、なかなか「デートにおける場所の影響」を把握するのは難しいですが、「場所よりは会話の影響のほうが格段に大きい!」が、「オシャレな場所のほうが“あとあと印象に残る”かも」ぐらいに考えておくのが良い落とし所かもですな。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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