「健康を守る人ほど、つまらない行動を毎日やっているぞ!」という本を読んだ話
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「健康の方程式(The Formula for Better Health)」って本を読みました。著者のトム・フリーデン博士は、オバマ政権下でアメリカCDC(疾病対策センター)のトップを務め、エボラや新型感染症の最前線で人類の命を守ってきた凄い人なんだそうな。
「また健康本かー」と思う人もおりましょうが、本書では単に「健やかに過ごすにはどうすればいいか?」って話は展開されておらず、「心臓病やがん、認知症などの“悲劇”の大半は、避けられる!」という希望に満ちたメッセージが展開されていて、より射程の長い一冊になっておりました。ということで、いつものように本書から勉強になったポイントをピックアップしてみましょうー。
- まず博士が強調するのは、“見えないものを見る力”の重要性であり、健康診断で血圧、血糖、脂質、視力、聴力、体力が「正常値」にあっても油断してはいけないと指摘する。なぜなら「正常」と「最適」はまったく別物だからである。
たとえば、血圧120〜139の範囲は「正常」とされるが、120を超えるたびに心血管リスクは右肩上がりになる。同じように、血糖値やコレステロール、BMIなども“正常範囲”の中であっても、すでに上昇傾向が続いていればリスクは高まっている。このように、人によって“基準点”は違うのに、私たちは平均的な数字に安心してしまう。
- つまり、健康を考える際は毎年の数値を比較して“変化の傾き”を追うのが重要であり、健康とは“点”ではなく“線”で見るべきものだと言える。体重や体脂肪率、睡眠の質、集中力など、「自分の平常値」からのズレを早めに察知できれば、ダメージは防ぎやすくなる。健康とは、異常値を見つけることではなく、劣化の兆候を“先読み”する技術である。
- では、現代の環境で健康を追うためには何をすべきか?ここで博士が強調するのが“単純化”である。フリーデン博士がかつてニューヨークで結核対策プロジェクトを率いていたころ、どれだけ分析しても感染が減らないことに焦っていた彼に、尊敬する医師が「去年あなたが診断した3,811人の患者のうち、何人が治った?」と尋ねた。これに答えられなかった博士は、その日から、患者一人ひとりを追跡するシステムを作成したところ、状況は劇的に改善したという。この経験から、博士は「複雑さは敵だ」という哲学を持つにいたり、成果を出したいなら簡単にするこおとを心がけるようになった。健康習慣もこれと同じで、単純化しなければ改善は見込めない。
- この点をふまえて博士が提唱する「健康の方程式」とは何か? 博士は6つの行動だけで、主要な死因のリスクを劇的に下げられると指摘している。
死亡率激減行動1 血圧のコントロール:高血圧は“沈黙の殺人者”と言われ、症状が出たときにはすでに動脈は傷ついている。目標は収縮期血圧120未満で、1日1回の測定と薬の服用だけで、寿命が何年も延びるというデータもある。
死亡率激減行動2 LDLコレステロールを下げる:脂質異常は10代から始まる“時間差爆弾”である。その点でスタチン系薬は世界で最も研究され、安全性・コスパともに優秀。食事だけで頑張るより、薬を上手に使うほうが長生きする時代だと言える。
死亡率激減行動3 タバコ・アルコールを避ける:タバコは今も世界最大の予防可能な死因で、喫煙者は平均で10年早く死に、見た目も10年老けることがわかっている。同じように、アルコールも、少量であっても心臓・脳・肝臓にダメージを与えることがわかっており、「飲まないのがベスト」が科学的な結論である。
死亡率激減行動4 毎日、楽しめる運動をする:博士いわく「運動は万能薬」であり、30分のウォーキングを週4日行うだけでも、がん、糖尿病、認知症、うつ病リスクが大幅に減少する。
死亡率激減行動5 体が喜ぶ食べ方をする:食事の鍵は「カリウム>ナトリウム」である。そのためには、アボカド、トマト、さつまいも、サーモン、ヨーグルトなどのカリウム食を増やし、塩は「カリウム入り減塩塩」に変えるだけで血圧が下がる。また、当然ながら、砂糖はめっちゃ慎重になるべし。
死亡率激減行動6 睡眠を最優先に:7時間未満の睡眠は、寿命を確実に縮める。記憶、免疫、ホルモン、代謝、どれも寝ている間に修復されるため、就寝1時間前のスマホ断ち、部屋を暗く・涼しくするだけでも、睡眠の質は劇的に向上する。
- ここまで読んで「なんだ、地味だな」と思った人も多いかもしれないが、博士が指摘するとおり、健康は退屈なほど地味な行為の積み重ねだと言える。SNSで話題のサプリやデトックス法、最新のダイエットなどの“刺激的な方法”も続かなければ意味がないし、むしろそれらに振り回されて失敗するほうが多いのが現実。フリーデン博士は「健康は、地味な行動を続ける“忍耐の芸術”だ」と何度も強調しており、言い換えれば健康の本質とは「飽きない才能」にあるとも言える。長生きとは「同じことを何度もやれる人」が勝つゲームである。
- ちなみに、「親が高血圧だったから」「うちはがん家系だから」といったように自分の遺伝を嘆く人は多いが、博士は「心疾患・脳卒中による早死の80%、がんの40%は、避けられる」と断言する。あくまで遺伝は病気の“確率”を少し上げるだけの要素でしかなく、実際の運命を決めているのは生活習慣だからである。
かつての世界は健康リスクに満ちており、鉛入りガソリンを使い、シートベルトもせず、日焼けオイルを塗って炎天下で煙草を吸いながら酒を飲むのが当たり前だった。そんな状態が「普通」だった世界では、がんや心筋梗塞が多かったのも当然だと言える。しかし、現在、その“普通”は大きく変わり、私たちの健康レベルは大きく改善した。
その点で、現代の「過剰な糖質」「睡眠不足」「ストレスまみれの働き方」は、未来から見れば異常な行動に映るのかもしれない。これらの要因をコントロールすれば、私たちの疾患リスクはさらに下がる可能性がある。
- 上記のなかでもし「何から始めればいいかわからない」と思ったなら、まずは血圧を測ることから始めるとよい。血圧は健康の“ダッシュボード”のようなもので、ここが乱れ始めると、他の数値も連動して崩れていく。一方で、血圧が安定すると、心臓も脳も穏やかに働きはじめる。健康は“見える化”からしか始まらず、その第一歩が家庭用血圧計なのだと言える。
ということで、処方される健康法はめっちゃ地味なんだけど、結局のところ健康の8割は「自分でコントロールできる習慣」で決まることを改めて教えてくれる良い本でありました。健康を保つには「地味さへの耐性」が大事だって話も、非常に共感するとこでしたねー。