このブログを検索




たった4つの習慣で脳は若返る!と主張するワシントン大学の2年研究の話

  

 

「最近、物忘れが増えた気がする」「将来、認知症になったらどうしよう」みたいな不安は普遍的なもの。私も50歳を目前にして「あの映画に出てた俳優誰だっけ!」の量が増え、日々不安におびえております。

ということで、近ごろ発表された研究(R)では、「脳の衰えを防ぐ4つの習慣を特定したぞ!」って結論になってて大変ためになりました。これはワシントン大学の神経科学者ローラ・ベイカー博士が主導で行った研究で、認知機能が下がるリスクを抱える2111人の高齢者(平均68歳)を対象にしたもの。被験者は2年間にわたって、以下の2つのプログラムのどちらかにランダムに振り分けられたんだそうな。

 

  1. 構造化プログラム:専門家による対面指導(食事・運動・交流などをチームでサポート)
  2. セルフガイド型プログラム:自分で進める在宅型プログラム(教材と簡単なミーティングのみ)

 

どちらのプログラムとも、栄養研究の世界で「脳を若返らせる多領域介入(multidomain intervention)」と呼ばれる考え方をベースにしてまして、簡単に言うと「単一の要素(運動だけ、食事だけ)に頼らず、食事・運動・知的刺激・社会交流をすべて含んだアプローチをしようぜ!」みたいな発想であります。体にいいことは全てやってみて、その相互作用を狙うのがいいよって考え方っすね。

 

でもって、2年後にどんな成果が出たのかと言いますと、

 

  • 両グループともに記憶力や注意力などの総合的な認知機能が大きく改善した
  • しかも、専門家による直接指導と、セルフガイド型(自分でやる)に大きな差はなかった。

 

って感じだったそうです。両グループともに脳が改善したってのは予想どおりの結果ですけど、「お金をかけずに自宅でやっても、脳はちゃんと鍛えられる」ってところを示してくれたのが、この研究のナイスなポイントでしょうな。

 

となると、皆さま「脳を若返らせる多領域介入では、どんなことをやっているの?」ってのが気になるでしょうから、そのあたりも紹介しときます。

 

 

戦略①:脳を“血流”で若返らせる

まず1つ目の柱は「運動」で、この研究では、有酸素運動と筋トレを組み合わせたプログラムが採用されてます。といっても難しいプログラムは使ってなくて、被験者には「週に数回ぐらい、地元のジムで中〜高強度の運動を行ってねー。筋肉と心臓を同時に鍛えてねー」みたいな指示が出されてます。

 

これが脳に効く理由はシンプルで、「脳は血で動く臓器」だから。脳は体重のわずか2%しかないものの全体の血流の約20%を消費してまして、もし血流が悪くなったら、神経細胞が栄養不足になってダメージを受けていくんですよ。逆に、有酸素運動を続けると、

 

  • 海馬の体積が増える

  • 神経新生を促すBDNF(脳由来神経栄養因子)が増加

  • 認知症リスクが30~40%低下

 

ってメリットを得られるわけですね。ちなみに、この研究ではウォーキングやサイクリングなどを推奨してますんで、めっちゃゆるめの運動を使えばOKであります。

 

 

戦略②:「MIND食」で神経を守る

次に重要なのが「食事」で、この研究では、認知症の予防食として「不老長寿メソッド」でも取り上げたMIND食を採用してます。MINDってのは「Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay」の略で、要するに「地中海食+高血圧予防食」のいいとこ取りした内容になってるんですな。

 

一応その基本ルールもまとめとくと、こんな感じです。

 

積極的に食べるべきもの

  1. 緑黄色野菜(1日1回以上)

  2. その他の野菜(1日2回以上)

  3. ナッツ(1日1回)

  4. ベリー類(週2回以上)

  5. 豆類(週3回以上)

  6. 全粒穀物(毎食)

  7. 魚(週1回以上)

  8. 鶏肉(週2回以上)

  9. オリーブオイル(主な脂質源に)

 

控えるべきもの

  • バター・マーガリン

  • チーズ

  • 揚げ物・ファストフード

  • 赤身肉

  • お菓子・甘い飲み物

 

この食事パターンを9割ぐらい守ると、アルツハイマー発症リスクが最大53%減少するって報告もありまして、なかなか凄いもんですね。

 

戦略③:「知的遊び」でシナプスを増やす

次に大事なのが脳トレで、この研究では、参加者に市販の認知トレーニングアプリを使わせたというんですな。ただし、ここで重要なのは「ゲームの種類」ではなくて、研究チームも「継続して知的刺激を与えること自体が目的だ」と強調しておられます。

 

つまり、脳に負荷がかかるものなら何でもよくて、

 

  • クロスワードや数独を解く

  • 新しい語学を学ぶ

  • 楽器を練習する

  • 難しめのノンフィクションを読む

 

みたいな感じでOKです。私たちの脳は「難しいけどできるかもしれない」と感じた瞬間に最も成長するもんでして、SNSを眺めているだけだとシナプスは増えないんですよね。なので、ぜひ少し負荷を感じる“知的な遊び”を習慣にしてくださいませ。

 

 

戦略④:社会的つながりが「脳の免疫」

最後に残るのは「人間関係」で、この研究では、どちらのグループも定期的な交流会を行うように指示を出したんだそうな。その頻度は意外と少なくて、2年でたった6回だったとのこと。それでも、孤立していた人たちの認知機能は顕著に改善したというから凄いもんですな。

 

ご存じのとおり、孤独はストレスホルモンの分泌量を上げ、脳の萎縮を早めることが知られております。逆に、誰かと笑い合う時間は、オキシトシンやドーパミンの分泌を促し、神経ネットワークを守ってくれることもわかってまして、友人とのお茶、趣味のサークル、家族との食卓みたいなちょっとしたコミュニケーションは、すべて立派な「社会的介入」として働いてくれるみたいなんですな。これも大事なポイントっすね。

 

 

ってことで、いろいろ書いてきましたが、研究の結論をシンプルにまとめとくと、

 

  • 脳の健康は、生活の積み重ねで守れる。
  • セルフガイド型でも十分に効果がある。

 

って2点が最も重要なところです。「忙しくてジムに行けない!」とか「お金がない!」みたいな人も、上記の4点なら十分に実行できるでしょうから、ぜひやっときたいところです(もちろん、薬やサプリも一切使ってない)。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM