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NMNサプリとかNAD点滴とか流行ってるけど、その効果が実際どうなのか決着つけたるぞ!という研究の話

 
 

アンチエイジング界隈で人気のサプリといえばNAD⁺であります。NAD⁺は細胞がエネルギーを作ったり、DNAが修復されるときに必要な補酵素のことで、年齢とともに体内の量が減ると考えられております(まぁ、この前提が実は怪しいんじゃないかって議論もありますが)。そのため、市井のクリニックなどでは「NAD点滴で細胞レベルから若返る!」みたいに宣伝するとこもありまして、1回数万円ぐらい取るケースも珍しくなかったりします。

 

では、実際のところNAD⁺サプリやNAD点滴はどれぐらい効くのか?ということで、新しく出た系統的レビュー(R)を見ていきましょう。このレビューでは、動物研究80件とヒト試験33件がまとめられてまして、NAD⁺関連サプリにどんなメリットがあるのかをチェックしてていい感じです。

 

 

 

結論として、NADは「血中濃度を上げる」ことはできるが……

ってことで、いきなり結論から行きましょう。まず、いちばん確実そうなメリットとしては、

 

  • NRやNMNを飲むと、血中のNAD関連マーカーは上がる

 

ってのがあります。NRとNMNは、どちらも体内でNAD⁺を作る材料みたいなものです。このレビューによれば、NRやNMNの摂取によって、血液中のNAD⁺関連物質はかなり安定して上がるそうで、ここだけ見ると「おお、効いてるじゃん!」と思うわけですが、そう簡単にいかないのが栄養学の難しさ。血中NADが上がることと若返ることは同じじゃないんで、血液検査で数値が上がったとしても、本当に狙った効果が得られないみたいな話はざらにあるわけです。

 

では、具体的なメリットはどうだったのかと言いますと、

 

  • VO₂max、握力、6分間の歩行距離、椅子立ち上がりテストなどの効果をチェックしたところ、結果はかなりバラバラだった。
  • 具体的には、一部の研究では、歩行距離や歩行速度が改善したものの、VO₂maxや握力のような指標では、明確な改善が見られない研究もわりとある感じ。

 

みたいになります。ここは解釈が難しいところで、6分間歩行や椅子立ち上がりテストは、体力だけでなくその日のコンディションにも影響されるので、少し良くなったとしても、それが細胞レベルの若返りなのかはよくわかんないんですよねぇ。ってことで、少なくとも現時点では、「NMNやNRを飲めば、筋力や持久力がバリバリ上がる」とは言えないよなー、ぐらいの消極的な結論になるでしょうな。

 

 

 

代謝改善も「一部では効いたが、再現性が弱い」

次に代謝のメリットも見てみましょう。NAD⁺サプリは、一般的に「ミトコンドリアが元気になる」「インスリン感受性が上がる」「脂肪が燃えやすくなる」などと言われてたりするんですけども、このレビューによれば、

 

  • 空腹時血糖、コレステロール、HbA1c、インスリン感受性などに対して、健康な人では一貫した改善が確認されなかった。
  • ただし、過体重または肥満で糖尿病予備群の女性25人を対象にした研究では、10週間のNMN摂取により、筋肉のインスリン感受性がベースラインから25±7%改善したと報告されている。……が、その後の研究では同じような効果が再現されていない。

 

みたいに報告されてたりします。なので現時点では、「特定の条件の人には効く可能性があるが、一般的な代謝改善サプリとしてはまだ弱いよなー」ぐらいの評価が妥当でしょうな。

 

 

血管・血圧への効果もかなり小さい

血管機能については、まだあんま研究例なくて、

 

  • NRの摂取により最高血圧がプラセボ比で約3.9mmHg低下したという研究がある。血圧が高めの人にとって、3〜4mmHgの低下はそれなりに意味がある感じ。
  • ただし、他のNMN試験では、動脈硬化の指標に大きな変化は見られていない。

 

みたいな感じっすね。なので、ここもまだ「期待はあるが確定ではない」ぐらいの立ち位置でしょうな。

 

 

睡眠・疲労・美容への効果はかなり怪しい

NAD⁺系サプリでよく宣伝されるのが、「疲労回復」「睡眠改善」「集中力アップ」「肌の若返り」「髪のツヤ改善」あたりですけども、このレビューによりますと、

 

  • 睡眠や疲労に関するデータは少なく、結果も一貫していないため、結論を出すには不十分。
  • 髪については、NMNで髪の弾力、ツヤ、ボリュームが改善したという研究が1件あるが、これは対照群なしなのでめっちゃ弱い。
  • ヒトで肌老化を評価した試験は見つかっていない。

 

みたいになります。これを見る限り、美容目的でNMNを飲む場合は、「効いたらラッキー!」ぐらいに考えたほうがよさそうですね。

 

 

NAD点滴はもっと注意が必要。というかオススメしない

さて、NAD⁺系のなかでも、特に派手に売られているのがNAD点滴で、「経口サプリと違って、点滴なら直接細胞に届く!」みたいに宣伝がされております。

 

が、このレビューでかなり強調されているのは、

 

  • アンチエイジングやウェルネス目的のNAD⁺点滴を検証したコントロール試験はゼロ

 

という点であります。「エビデンスが少ない」ってレベルの話ではなく、NAD⁺点滴が疲労の回復に役立つ試験は存在していないってことですな。

 

ちなみに、ここで大事なツッコミをしとくと、NAD⁺は分子が大きいので、そのまま細胞膜を自由に通過できないってのも大事なとこです。そのため、もしNAD⁺が血中に入っても、細胞外の酵素によってニコチンアミドやADPリボースなどに分解され、それらが細胞に取り込まれてNAD⁺再合成に使われると考えられるんですよ。

 

つまり、これがどういうことかと言いますと、

 

  • 高額なNAD点滴も、最終的には口から飲むNRやNMNサプリと似たように体内で処理される可能性が高い

 

ということです。それなのに、1回数万円も取られるとなると、さすがにコスパはかなり疑問ですなぁ。

 

 

まとめ

そんなわけで、今回の研究をまとめてみると、

 

  • NAD⁺サプリは血中のNAD関連物質を上げる。

  • しかし、それが筋力、代謝、睡眠、疲労、認知、美容、寿命の改善につながるかはまだ不明。

  • NAD点滴に至ってはデータゼロ。

 

という感じです。なので、今のところは「ロマンはあるが、まだ金を出すのは早い!」ってとこでしょうね。特にNAD点滴は、価格も高く、データも弱く、点滴特有のリスクもあるんで、まったくオススメできる段階じゃないですな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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