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会話中に無表情な人は、思ったより自分で自分の信用を下げているかもしれないぞ!という研究

 
 

「笑顔が大事!」って話はよく聞くところで、実際のところ、不機嫌そうな人にわざわざ近づきたいとは思わないですからね。

 

では、正味のところ笑顔にはどれぐらいの効果があるのかってことで、そこらへんを調べた研究(R)が出ておりました。

 

これはフンボルト大学などの研究で、「笑顔の人が信頼されやすいのはなぜか?」を調べたものです。研究は3つの実験で構成されてまして、

 

  • 実験1:参加者71人を集め、みんなに笑顔・怒り顔・悲しい顔の動画を見せ、それぞれの顔が「信頼できそうか」「魅力的か」「自信がありそうか」を評価してもらう。同時に、みんなの顔の筋肉を測り、相手の表情をどれぐらいマネしたかも調べる。
  • 実験2:参加者50人を集め、みんなにあえて笑顔っぽい表情を作らせ、相手の表情をマネすると信頼感が高まるのかどうかを確かめる。
  • 実験3:参加者70人を集めて「お金をやり取りするゲーム」をするように指示。その際に、みんなが相手をどれぐらい信頼したかを測定。

 

みたいになってます。いずれの実験も、「相手の笑顔を見たら自分も笑顔になり、それによって相手を信頼しやすくなるのか?」って仮説をチェックする内容になっております。なんで研究チームがこういう問題を調べたのかと言いますと、そもそも人間ってのは、誰かの顔を見ると、単に「この人は怒っている」「この人は悲しそう」「この人は楽しそう」と感情を読み取ってるだけではなくて、

 

  • この人は信用できそう
  • この人は感じがよさそう
  • この人は誠実そう
  • この人は近づきにくそう

 

みたいに、相手の人格まで勝手に推測してるんですよ。たまたま疲れて無表情だっただけなのに「冷たい人」と思われるみたいなことは誰にでもあるんで、このへんの判断がいかに適当に行われているかは実感しやすいでしょう。

 

で、ここで重要になるのが、表情のミラーリングであります。これは、「誰かが笑っていたら、こちらもつられて少し笑ってしまう」「誰かが不機嫌そうな顔をしていると、こちらもなんとなく顔がこわばる」みたいな現象のことで、他人の表情を無意識にマネしちゃう現象のことです。

 

このミラーリングは、人類に備わった普遍的な機能なんですが、過去の研究によると、こいつは私たちが他人に与える第一印象にかなり影響するらしいんですよ。どういうことかと言いますと、

 

  1. 相手の笑顔をマネする→
  2. 自分の中にもポジティブな感情が少し生まれる→
  3. 「この人、なんか信用できそう」と感じる

 

という流れになっております。どうやら笑顔を浮かべる人ってのは、「私はいい人ですよ!」というメッセージを発しているのはもちろん、相手の顔の筋肉を無意識のうちに同調させることで、相手にポジティブな感情を発生させているみたいなんですね。

 

この前提をふまえた上で、実験の結果がどうだったかと言いますと、こんな感じになりました。

 

  • 笑顔の人物を見ると、たいていの人は自分も笑顔になり、それによってさらに信頼感が高まった。
  • 統計的に見ると、笑顔そのものが信頼を高めるのではなく、その笑顔を見た人が表情をマネすることが信頼感を高めていた。
  • 逆に怒った顔や不機嫌な顔は相手にマネされにくく、そのせいで相手の中にポジティブな感情が生まれず、結果として「なんか信用できない」「距離を置きたい」と思われやすくなる。

 

ということで、笑顔がダイレクトに信頼を高めるわけではなく、相手の笑顔を反射的にマネするから信頼が高まるのだ!って結果ですね。面白いですねぇ。

 

そう考えると、誰かと会話してるときに自分が無表情のままでいた場合、自分では「ちょっと不満が出ただけ」のつもりでも、相手から見ると「この人、なんか敵対的だな」「話しにくいな」「信用していいのかな」みたいな印象に変換される可能性があるわけでして、こいつはちょっと怖い話ですなぁ。

 

もちろん、これは「常に笑顔でいろ!」って話ではないんですけど、現実問題として私たちの表情がかなり強い社会的シグナルであることは間違いないでしょうな。なので、仕事の打ち合わせなどで、

 

  • 少し退屈そうな顔をする
  • 不満そうに眉をひそめる
  • 相手の発言中に口角が下がる
  • 「はいはい」みたいな顔になる

 

といった小さな反応は、本人が思っている以上に自分の信頼度にダメージを与えてるのかもですなぁ。

 

しかもここで怖いのが、こちらがネガティブな顔をしているときに、相手が「この人はちょっと疲れてるのかな」と解釈してくれることはまずなくて、多くの場合は、

 

  • この人は自分に否定的だ
  • この人は面倒くさそうだ
  • この人とは協力しにくい

 

といった感じで、無意識のうちに性格や関係性の判断を行っちゃうとこでしょうね。ここらへんのジャッジはほぼフルオートで行われるんで、本人の意図とは関係なく第一印象が決まってしまうことも多いっすね。

 

ちなみに、個人的には、この研究には逆の教訓もあると思ってまして、簡単に言うと、

 

  • 私たちは笑顔の人を過剰に信用しやすい

 

とも言えるでしょうね。相手がニコニコしていると、自分もつられて同じような表情になり、その結果として「この人は信頼できる!」と自動で判断しちゃいますからねぇ。

 

が、当然ながら、その笑顔が本当に誠実さを反映しているとは限りませんで、営業がうまい人、詐欺師っぽい人、距離の詰め方がうまい人などは、意識的に自分の表情をコントロールしてこちらの感情をポジティブな方向に動かそうとしているでしょう。なので、実践的には、

 

  • 自分が笑顔を使うのはいい。
  • でも、他人の笑顔だけで信用してはいけない。

 

ぐらいのバランスで考えておくのが大事なんでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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