「SNSを完全にやめればメンタルは良くなる!」とか言いますが、それが本当か調べてみましょう
「SNSをやめればメンタルは回復する!」みたいな話を、ここ数年でよく聞くようになりました。実際、インスタやXなどを見ていると、他人のキラキラ生活にやられたり、どうでもいい炎上に巻き込まれたり、気づいたら30分ぐらいが消えたりすることはよくあるんで、「これはもう一回全部やめたほうがいいのでは?」と思っちゃうのも無理からぬところです。いわゆるデジタルデトックスですな。
この考え方には確かに納得感がありまして、一定期間SNSを完全に断てば脳を休ませられるし、そのおかげでストレスが減り、人生の満足度が高まるんじゃないかと思われるわけです。過去のデータでも、「SNSで他人と自分の生活を比較することでメンタルを病む!」とか「SNSの通知が現代人の集中力を削っている!」みたいな知見も出てまして、いよいよデジタルデトックスへの期待が高まっちゃうところですね。
では、「SNSを完全にやめればメンタルは良くなるのか?」ってことで、新しく出たメタ分析(R)では、この問題をガッツリ掘り下げてくれておりました。
研究チームは、過去に行われた「SNSを完全にやめたらどうなるか?」を調べた実験だけを10件ほどピックアップ。合計4674人分のデータを分析して、以下の3つの指標をチェックしてます。
ポジティブ感情:活力、熱意、楽しさ、エネルギーなど
ネガティブ感情:不安、怒り、罪悪感、悲しさなど
人生満足度:自分の人生全体をどう評価しているか
いずれも人間の幸福に欠かせないポイントでして、果たしてSNS断ちによってここらへんの感情は変わるのかってとこを調べたんですな。
ここで大事なのは、単に「SNS時間を減らした」研究ではなく、完全にSNSを断った研究だけを対象にしてるとこです。たとえば、
Instagramを1日30分に制限する
TikTokの通知だけ切る
寝る前だけスマホを見ない
みたいなゆるいデジタルデトックスではなく、FacebookやInstagramなどを、一定期間まるっと使わないようにした実験を集めたわけっすね。
で、その結果がどうだったのかと言いますと
- SNS断ちは、どの指標にも統計的に有意な影響を与えていなかった!
だったそうです。つまり、SNSをやめたところで、
- 楽しさや活力が増えるわけではない
- 不安や悲しみが減るわけでもない
- 人生の満足度が上がるわけでもない
ってことでして、これは「SNS断ちでメンタルが改善!」派には、なかなか厳しいデータでしょう。個人的にも、もうちょい良い影響があるかと思ってたんで、これはちょっと意外でしたねー。
でもって、さらにこの研究で面白いのが、SNS断ちの期間による影響であります。今回のメタ分析では、SNSをやめる期間が1日から約1ヶ月までいろんな研究が含まれてまして、普通に考えれば「1日だけSNSをやめても変わらないかもだけど、4週間やめたらさすがに効果が出るのでは?」みたいに思うところでしょう。ところが、分析の結果は、
- SNS断ちの期間の長さは、メンタルへの効果と関連していなかった!
って感じだったんですな。つまり、SNSを1週間やめようが、4週間やめようが、メンタルの変化は変わらなかったってことです。うーん、不思議。
この結果について、研究チームは、「SNS断ちにはメリットとデメリットが同時に存在して、それらが相殺されているんじゃない?」みたいに推測しておられます。どういうことかと言いますと、
- SNSをやめると、通知や比較から解放されるので、リラックス効果を得ることができる。
- しかし、その一方で、友人の近況がわからなくなったり、退屈を感じたり、孤立感が増えたりといったデメリットも出てくる。
みたいな話でして、「通知が減ってラクになるメリット」と「つながりが減って寂しくなるデメリット」が打ち消し合ってるのかもしれないんですよね。
たしかに、SNSはすべてが悪いってわけではなく、現代人にとっては連絡手段であり、情報源であり、仕事道具であり、コミュニティでもありますからね。なので、薬物やギャンブルのように「刺激を断てば回復する」という単純なモデルでは説明しきれないんでしょう。
言い換えれば、単に「SNSを断てば幸せに!」みたいな考え方は、「お菓子を全部やめれば健康に!」と言っているようなものかもですな。たしかにダイエットのためにお菓子をやめるのは大事なんだけど、その空いた時間や欲求をどう扱うかを決めてないと、ただ退屈になって別の刺激に流れたりするかもですからねぇ。SNS断ちもこれと同じで、単にアプリを消すだけでは不十分で「SNSに使っていた時間に何をするのか?」を考えるのがめっちゃ大事だってことなんでしょう。
というわけで、研究チームも、「SNSを完全にやめるよりも、別の使い方を考えるべきだ」と述べておられます。たとえば、
- 1日の使用時間に上限をつける
- 通知だけを切る
- 特定のアプリだけ制限する
- 寝る前だけ見ない
- 朝イチだけ見ない
- 目的なく開くのを防ぐ
- SNSを見る場所と時間を固定する
みたいな方法のことでして、完全に断つのではなく「制限する仕組みを考えよう!」みたいなイメージですな。
個人的にもSNSは「ゼロにする!」と考えるよりも「使う目的を明確にする」ほうが実用的だと思ってまして、おそらく以下のように調整していくのがいいんじゃないかなー、と。
- 通知は「人間」だけ残す:まずやっときたいのは通知の整理でしょう。SNSで一番やっかいなのは、アプリ側が勝手にこちらの注意を奪ってくるところなので、通知は原則として「自分が返信する必要のある人間」だけ残すぐらいがよろしいかと。いいね、リポスト、おすすめ投稿、ニュース通知、セール情報などは基本オフ。
- 「開く前の質問」を1つ作る:SNSを開く前に、「いま、自分は何をしにアクセスしたのか?」を自問してみるのもいい感じでしょう。「友人に返信するため」「投稿するため」「情報収集するため」「仕事の告知を確認するため」「ただ逃避したいだけ」みたいに、目的を一瞬だけ確認してみるだけでも、無自覚のアクセスが減るはずであります。
- SNSの代替行動を決める:SNSを断っても、だいたいの人はその時間を別の刺激で埋めたくなるので、その代わりに入れる行動を先に決めておくのが吉。そのためによく使われるのは「5分散歩」「紙の本を2ページ読む」「ストレッチを1種目だけやる」「メモ帳に今の気分を書く」みたいな感じっすね。
- 「見るSNS」と「出すSNS」を分ける:SNSの問題は、受動的に見る時間が増えすぎることなので、SNSを完全に断つより「投稿する」「必要な情報を探す」「コミュニティでやり取りする」みたいな能動的な使い方は残しつつ、「目的のないタイムラインチェック」「おすすめ欄の無限スクロール」「炎上ウォッチ」を減らすほうが現実的でしょう。
そんなわけで、今回の研究を一言でまとめると「SNSを完全に断っても、ポジティブ感情は増えないし、ネガティブ感情も減らない」ってことになります。もちろん、SNSをダラダラ見るのが良くないのは当たり前なんですけど、このデータを見る限り、全部やめてみたところで益は少ないかもなんで、SNSとの距離感を考えたほうがいいかもですな。


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