AIに愚痴ると不安は減るのか?をガッツリ調べた研究の話
「AIへの悩み相談には意味があるの?」みたいな問題を、ここ数年でかなり耳にするケースが増えてきましたな。近年はChatGPTのような会話AIにちょっとした不安や落ち込みを相談する人が増えてますんで、「AIとの会話は本当にメンタルヘルスに効果があるのか?」って疑問がわくのも当然でしょう。
で、近ごろ、この問題を調べたランダム化比較試験(R)が出まして、研究チームは、メンタルを少し病んでいるイスラエルの大学生995人を集め、全体を3つのグループに分けております。
- 会話型AI「Kai」を12週間使うグループ
- 臨床心理士による対面グループ療法を12週間受けるグループ
- 待機リストのグループ
ここで使われた「Kai」ってのは、ただ雑談するだけのチャットボットではなくて、CBT、ACT、DBT、マインドフルネス、ポジティブ心理学などの知識を組み込み、日々の感情チェックや個別ルーティンといった提案までしてくれるものになってたそうな。つまり、単なる「優しいAI」ではなく、心理療法の技法を組み込んだデジタルツールだったわけですな。
一方、対面グループ療法は臨床心理士が担当し、週1回90分のセッションを12週間実施。内容としては、AIグループと似たような対処スキルを扱ったとのこと。
その上で、みんなの不安、うつ、人生満足度などを測定したところ、結果はこんな感じになりました。
- 会話型AIを使った参加者は、対面グループ療法や待機リストの人たちよりも、不安症状が大きく減っていた。
- うつ症状についても、AIグループは待機リストより改善が見られた。
ってことで、AIは「人間の代わり」にはならないものの、少なくとも軽めの不安や落ち込みを整理するツールとしては十分に使えそうな感じがするわけです。
特に不安に対してAIが効いた理由として、研究チームは「AIはすぐに反応してくれるからいいよね!」と指摘しておられます。一般的に、不安ってのは、じわじわ積み上がるというより、瞬間的に暴走することが多いものでして、たとえば、
- 試験前に急に心拍数が上がる
- 夜中に将来不安が止まらなくなる
- 会議の直前に頭が真っ白になる
- 失敗を思い出して反すうが始まる
みたいな感じで発生することが多いじゃないですか。こういうときに、「次のカウンセリングは来週です!」と言われても、「それじゃ遅すぎる!」としかならないわけです。
が、AIならその瞬間にアクセスできまして、不安が最高潮に達する前に、呼吸法、認知の整理、セルフコンパッションみたいな対策を即座に提示できるじゃないですか。これは、不安対策としてはかなり大きなメリットなんですよ。
さらに面白いのは、AIに相談したグループは、単にネガティブな感情が下がっただけではなく、ウェルビーイングや人生満足度も上がったところです。AIを使ったグループは「自分の人生は思ったより悪くないかも」「もう少し前向きに暮らせそうだ」と感じるようになり、しかもこの改善は3ヶ月後のフォローアップでも残っていたそうなんですな。
こちらも地味なポイントで、メンタルヘルスの改善というと、だいたいは「不安を減らす」「うつを減らす」みたいにマイナスをゼロに戻す話になりがちですからね。しかし、幸福に生きるために大事なのは「症状が減ったあとでどうするか?」だったりしますんで、AIがその助けになるならめっちゃ良いことだと思うわけです。
が、一方では、AIの効果が認められなかったものもありまして、PTSD症状については、AI、対面グループ療法、待機リストのあいだに大きな差は見られなかったそうな。まぁトラウマ関連の問題ってのは、単なるストレスや不安とは違い、かなり複雑な臨床判断が必要になりますからね。解離とかフラッシュバックとか、人間の専門家が慎重に扱うべき領域が多いので、これも当然でしょう。
なので、今回のデータをざっくりまとめると、
- AIは軽度〜中等度の不安や抑うつには役立つかも!でも、深いトラウマ治療まで任せるのは危ないよ!
みたいに解釈するのが妥当なんでしょうな。AIの話をすると、とかく「もうセラピストは不要!」みたいに極端な話になりがちですけども、あくまで便利な支援ツールぐらいに考えておくのが無難でしょう。
ちなみに、個人的に今回の研究でもうひとつ面白かったのが「治療同盟」に関するデータであります。「治療同盟」ってのは、クライアントと支援者のあいだにある信頼感や協力関係のことでして、「この人は自分を理解してくれている」「安心して話しても大丈夫そうだ」みたいな感覚のことですね。心理療法ではこの感覚があるとないとでは、治療の成果がまったく変わってくるとされてるんですよ。
で、今回の研究では、参加者はAIに対しても、人間のセラピストと同じくらい「温かい」「専門的だ」と評価していたんだそうな。私たちはAI相手でも「治療同盟」を結ぶことができるようで、この感覚が強い人ほど、メッセージ数が増え、より深く関与し、メンタル症状の改善も大きかったというから面白いもんです。
まぁ、これも考えてみれば当然の話でして、私たちが人間に悩みを話すときってのは、つい「変に思われないかな」とか「迷惑じゃないかな」みたいに思ってしまいがちですからね。AI相手だと、この不安が下がるので、「AIのほうが本音を出しやすい!」と感じられる人も少なくないでしょう。「人間に話す前の予備的な相談相手」としては、かなりAIってのは有望な存在なのかもですな。
ということで、「この研究から何を学べばいいのか?」ってことですが、個人的にはAIはステップドケアの一部として考えるのが良いんじゃないかと。ステップドケアってのは、問題の重さに応じて支援のレベルを変えよう!って考え方でして、たとえば、
- 日常のモヤモヤは、AIに書き出して整理する
- 軽い不安は、AIに認知の整理や行動計画を手伝ってもらう
- 落ち込みが続く時は、専門家への相談を検討する
- トラウマや重い症状は、専門的な治療を受ける
みたいなイメージっすね。AIは軽度のメンタル不調に強そうなんで、日ごろの不安や反すう思考の整理には大いに活用しつつ、それ以外は人間の専門家を当たるのが良いんでしょう。
以上をふまえたうえで、AIをメンタルケアに使うなら、以下のようなガイドラインを参考にしてみてくださいませ。
- まずは感情をラベリングする:自分の感情に名前をつけるのは、メンタルケアの基本。不安や落ち込みがあるときは、AIに「今の感情を整理したいです。いま感じていることを、感情・思考・身体反応・行動衝動に分けてください。」みたいに投げてみるといいでしょう。ここが明確になるだけでも、感情の暴走が弱まったりしますんで。
- 認知の偏りを点検する:認知のチェックもメンタルケアの基本なので、「(自分がいま考えていることを書く)。この考えに含まれる認知の偏りを、責めない形で整理してください。そのうえで、もう少し現実的でやさしい見方を3つ出してください。」みたいに投げてみるといいでしょう。これは、極端な思考を現実に近づけてくれる大事なステップですね。
- 次の行動を提案してもらう:不安や抑うつが強いときは、長期目標を考えるほどしんどくなってしまうので、AIには「今の状態でもできる、2分以内の行動を5つ出してください。できるだけ負荷が低い順に並べてください。」みたいに頼むのが良いでしょう。メンタルが落ちているときは、できるだけ小さな行動を積み重ねるのが大事になりますんで、これもやっときたいところです。
ってことで、いろいろ書いてきましたが、AIを日々の不安や落ち込みを整理するための補助ツールぐらいに考えつつ、上手くつきあっていってくださいませ。


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