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今週の小ネタ:AIに相談すると人は“せっかち”になる?現代人は見た目のコンプレックスが激増する?TikTokで魅力的な人の動画を見ると恋愛関係が悪化する?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

AIに相談すると人は“せっかち”になる?

AIに相談すると、私たちはより“せっかち”になるのでは?」って研究(R)が出ておりました。まずは実験の内容をざっくり説明しておくと、

 

  1. 参加者に旅行の相談をしてもらう。その際、片方は人間のアドバイザー、もう片方はAIチャットボットに相談し、どちらも「20秒待つ」という条件をつける。
  2. その後、「今すぐ30ドルもらう」か「4週間後に35ドルもらう」のどちらかを選ばせる

 

みたいな感じで、人間の“時間割引”のクセをチェックしたわけですね。時間割引ってのは、「人間は未来の価値を過小評価する生き物だよー」って考え方で、「今すぐ30ドルもらう」と「1ヶ月後に35ドルもらう」だと、合理的には後者の方が得なはずなのに、多くの人は前者を選びがちなんですよね。これは、「人間は“待つこと”自体に大きなストレスを感じるから」というシンプルな理由によっております。

 

で、今回の研究では、この時間割引の心理にAIがどう影響するかを調べたわけですが、

 

  •  AIに相談した人の方が「今すぐ30ドルをもらう」を選びやすかった
  •  AIに相談した人ほど、「4週間がめちゃくちゃ遠く感じた」と報告した

 

という結論だったそうで、どうもAIに触れると未来がより遠く感じられるようになり、そのせいで目先の利益を選んでしまうって現象が起きたんだそうな。不思議なもんですねぇ。

 

なぜこんなことが起きるのか言いますと、ここで出てくるのが「内部時計」という概念であります。これは、ざっくり言うと、

 

  • リラックスしていると、時間は早く過ぎる
  • 緊張・刺激があると、時間は長く感じる

 

みたいな心理のことで、脳の中で時間の進み方が変わってしまうわけです。

 

この点で、AIは一般的に「速い!効率的!即答してくれる!」というイメージが強いんで、この「スピード感」が脳に影響して内部時計が加速し、待ち時間が長く感じるという現象が起きるかもしれないんだそうな。なるほどねぇ。

 

というと、「AIを使うと忍耐力がなくなるのかなぁ」と思っちゃうわけですが、実はこの研究では、

 

  • 参加者に「このAIはじっくり分析するタイプです」と説明した場合は、せっかちになっちゃう効果は消えた

 

とも報告されてたりします。つまり、人間が感じているのは「実際の回答速度」ではなく、「AIって速そうだよな……」というイメージだってことですね。

 

ちなみに、この研究では現実の場面でも同じ現象が起きるのかを調べてまして、「ローンやサブスクでも同じことが起きるかも?」と指摘しておられます。たとえば、ローン選択のデータを調べてみたところ、アルゴリズム経由で判断したほうが返済期間が長く感じ、短期ローン(毎月高い)を選びやすくなったんだそうな。AIに触れるだけで意思決定の質が変わるってのは不思議なもんですな。

 

もちろん、AIはめちゃくちゃ便利なんでガンガン使ったほうがいいんだけど、AIが判断の質を上げてくれるとは限らず、むしろ歪めるケースもあるってところは頭に置いとくといいかもしれません。このあたりを理解したうえで使うかどうかで、長期的な損得が変わってくるかもしれないんで。

 

 

 

現代人は見た目のコンプレックスが激増する?

現代の若者は見た目のコンプレックスが激増している!」みたいな研究(R)が出てましたんで、内容をチェックしておきましょう。

 

こちらは13歳〜22歳の若者565人を5年間追跡した縦断研究で、ここで何を見たかというと、

 

  • SNSの使い方
  • 不安や抑うつのレベル
  • 見た目へのこだわり(外見への執着)

 

といったポイントであります。これらが時間とともにどう変化するかを追いかけたわけですな。

 

で、分析で明らかになったのは、こんなポイントです。

 

  • 調査のスタート時点でSNSをよく使い、不安・抑うつが高く、外見への関心が強かった人たちは、5年後もずっとそのまま自分の外見を気にし続けた。

 

  • さらには、調査のスタート時点では自分の外見に無関心だった人も、年ごとに見た目への不安が増加し、最終的にはほぼ全員が「中〜高レベルの見た目不安」に到達した。

 

  • この現象に、男女の違いはなかった。

 

ということで、「私は外見を気にしないタイプだから大丈夫」「SNSを見ても影響されない」と思っている人でも、現代では時間が経つにつれて見た目へのコンプレックスをこじらせる可能性が高いわけっすね。

 

で、なんでこんなことが起きるのかって疑問について、研究チームは以下のポイントを挙げております。

 

  1. SNSによる比較のインフレ:人間は本能的に他人と比較する生き物なので、SNSを使えば使うほど上位数%の“加工された人”と自分を比べるようになり、普通の自分が相対的に低く見える。

  2. SNSによって見た目が価値になりやすい:研究では「オンライン外見執着」という概念が使われていて、これはざっくり言うと「写真を何度もチェックする」「フィルターで修正する」「いいね数を気にする」といった行動のこと。これをやると、「見た目=自分の価値」という認識が強化され、不安が増えるループに入ってしまう。

  3. 不安・抑うつとの相互強化:不安や抑うつが強い人は外見を気にしやすく、逆に外見を気にする人は不安・抑うつが悪化しやすい、という相互強化の関係がある。なので、メンタルが揺らぐほど、見た目の悩みも増え、それによってまたメンタルが揺らぐループに入る。

 

ということで、なかなか世知辛い話ですけども、現代人であれば誰もがこの罠にハマるかもしれないってところは、頭に置いておいたほうがいいんでしょうなぁ。また、この研究では、SNS使用量が多いほど外見不安が強いって相関が出ているので、SNSは1日30分〜60分に制限!ぐらいに考えておくのがいいんじゃないでしょうか。完全に断つ必要はありませんが、「どう付き合うか」を意識するだけでダメージはかなり変わるんじゃないかと。

 

 

 

TikTokで魅力的な人の動画を見ると恋愛関係が悪化する?

TikTokで“魅力的な異性”を見ていると、恋愛関係は悪化するのか?」って問題を調べた研究(R)が出ておりました。言わずもがな、TikTokみたいなSNSを使っていると、放っておいても“魅力的な異性”が延々と目に入るわけですが、これは果たして恋愛関係に影響あるの?ってところを調べたわけですな。

 

ということで、研究チームは65組のカップル(合計130人)を集めて、

 

  • 自分がどんな動画を見ているか
  • パートナーがどんな動画を見ていると思うか
  • 関係の満足度・信頼度

 

などをチェックしまして、それぞれのデータを照らし合わせたんですよ。すると、その分析結果がなかなか興味深くて、

 

  • 相手を疑うだけでは関係は悪くならない:相手から「パートナーがTikTokでエロい異性を見ているのでは?」みたいに疑われたとしても、関係の満足度や信頼にほぼ影響はなかった。これはちょっと意外で、普通は「疑い」が強いほど関係は悪化しそうなものだけど、どうもそう単純ではないっぽい。

 

  • 実際の行動はガッツリ影響する:一方で、パートナーが魅力的な異性の動画に「いいね」やフォローをしているのを見つけたら、恋愛関係の信頼や満足度は低下した。また、TikTokで魅力的な異性の動画を見ただけでも、恋愛の関係満足度は下がる傾向があった。つまり、「疑い」までならセーフだが、「何をしてるか」はそのまま関係の質に反映される。

 

  • パートナーと“違うタイプ”を見るとダメージ大:特にダメージが大きかったのは、こちらが「自分と全然違うタイプ」の異性の動画を見ていたときで、この場合は恋愛関係の信頼と満足度は大きく低下した。これは心理的には納得で、「この人はこういうタイプが好きなんだろう」という前提が崩れ、これが不安・自己評価の低下につながったのだと思われる。

 

って感じだったんですな。「あの人、TikTokでちょいエロ動画ばっか見てるんじゃ…」と思われるぐらいなら問題ないものの、夫が妻とまったく異なるタイプの女性の動画を見ていたら、一気に関係が悪くなるってことですね。まぁ、なんとなくわかる気がしますな。

 

ちなみに、この現象が起きる理由を、研究チームはこう説明しておられます。

 

  1. 代替選択肢の増加:魅力的な異性が常に目に入ると、「他にも選択肢がある」「もっといい相手がいるかも」という無意識の比較が発生。これが恋愛関係の悪化につながる。

  2. パートナーの価値の相対的低下:人間の評価は相対的なものなので、ハイスペックな異性を見続けると、今のパートナーの価値が下がって見える現象が起きやすい。これが恋愛関係の悪化につながる。

 

どちらもめっちゃわかる話で、人間ってのは比較で物事の価値を決めるバイアスがあるんで、TikTokがこのような問題を引き起こすってのは納得じゃないでしょうか。ということで、いま特定のパートナーがいる方は露骨な動画には反応せず、健全なコンテンツにいいねすることを考えたほうが、長期的には幸せなままでいられそうでありますな。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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