このブログを検索




性格は「一生変わらない」どころか、年を取るほど成熟するかもしれない説

 
 

「自分の性格って、もう変わらないんじゃないの?」みたいな不安は、わりと多くの人が持っているんじゃないでしょうか。特に「すぐ不安になる」「人に振り回されやすい」「自信がない」みたいな問題に悩んでいる人は、「これはもう自分の性格だから仕方ないのでは……」と思っちゃうケースがよくあるでしょう。

 

が、「社会は、静かにあなたを『呪う』」にも書いたとおり、近年は「性格はそこそこ変えられる」って見解が主流になってたりします。もちろん、遺伝で決まった性格はけっこう安定しているものではあるんですが、後天的な人生の経験やトレーニングで、それなりに変えられることがわかってきたんですな。

 

でもって、新しい研究(R)も似たような見解が出てまして、「年を取れば取るほど、人間は性格がポジティブに変わるんじゃない?」って結論になっておりました。これはチューリッヒ大学の研究で、「人格」と「性格」の変化を10年にわたって追跡した調査になっております。

 

ここで大事なのは、性格と人格をわけて考えているところでして、研究チームは、私たちのパーソナリティを、

 

  1. 性格特性:その人の“キャラ”や傾向

  2. 人格機能:その人が人生をうまく扱う“成熟度”

 

の2つにわけて調べてるんですな。この違いをもうちょい詳しく説明すると、たとえば、同じ「内向的な人」が2人いたとしても、

 

  • 自分のペースを理解し、自分に合った人間関係を選べるような内向型

  • 人を避けすぎて孤立し、自己否定にハマっちゃう内向型

 

では、性格が同じだとしても、その生き方はだいぶ違うじゃないですか。同じように、「神経質な人」が2人いた場合でも、

 

  • リスクに敏感で、細かいミスに気づける人
  • 不安に飲み込まれて、何も行動できなくなる人

 

では、人生への影響がまるで違うはずであります。つまり、私たちのパーソナリティを考えるうえで問題なのは「どんな性格か?」だけではなく、

 

  • その性格を、自分の人生の中でどれぐらいうまく運用できているか?

 

なんですよ。

 

そこで研究チームは、平均33歳の男女733人を集め、人格障害または抑うつ障害を持つ人々の変化を追跡。参加者にはビッグファイブによる性格テストなどを行い、時間の経過とともに「性格特性」と「人格機能」がどう変わるかを統計モデルで分析しております。

 

その結果、何がわかったかと言いますと、

 

  • 人間の人格は10年で成熟していき、人格障害の評価も低下する傾向が見られた。

 

だったそうな。つまり、人間は年齢を重ねるほど、自分の性格のクセに振り回されにくくなり、より成熟した形で人生を扱えるようになっていくわけですな。

 

この結果で、個人的に「大事だなー」と思ったのは、「性格がまったく別物に変わる!」という話ではないところです。たとえば、神経症傾向が高い人が陽キャになるわけではないし、内向的な人が外向的になるわけでもなく、「自分の性格のクセを抱えたまま、それを扱う技術が上がっていく」みたいなイメージに近いんですよ。

 

これは、なかなか希望がある話でして、そもそも私たちが苦しむのは「性格を変えなきゃ!」と思うからじゃないですか。「不安を抑えなきゃ」「もっと外向的にならなきゃ」みたいに考えると、そりゃあしんどくなりますからね。ただし、そこで今回の研究をもとに、「この性格を、もう少しマシに運転できるようになろう」と考えてみるなら、めっちゃ現実的な対策になるはずであります。

 

たとえば、

 

  • 不安が強いなら、不安を消すのではなく、不安に振り回される時間を短くする
  • 完璧主義なら、完璧を捨てるのではなく、「70点で出す練習」を増やす
  • 怒りっぽいなら、怒りを消すのではなく、怒ったときに一拍置けるようにする

 

みたいに考えてみると、だいぶ実践的になっていいんじゃないでしょうか。

 

では、どうすれば人格は成長するのかってことですが、ポイントは以下の3つになるでしょう。

 

  1. 自分の反応パターンを意識する:まずは、自分がどんな場面でネガティブになりやすいのかを意識するのが大事。たとえば、「どんな相手にイラッとしやすいか」「どんな仕事で先延ばししやすいか」「どんな言葉を言われると落ち込むか」「どんな時間帯に判断が雑になるか」みたいなパターンを把握し、できればメモなどに記録していくと吉。この作業の目的は、「自分はこういう条件でヤバくなりやすいんだなぁ」と知ることであります。

  2. 性格を変えようとせず、環境を変える:自分の性格を根性で変えようとしないのも大事。たとえば、誘惑に弱い人が「意志力でスマホを我慢する!」と決めても失敗するんで、自分の性格を前提に環境を組み直すほうがラクでしょう。たとえば、「スマホを別室に置く」「朝に重要な作業を入れる」「返信ルールを決めておく」みたいな感じ。「自分はこういう条件で崩れやすい」とわかっていれば、先に対策を立てられるんで。

  3. “良い失敗”を増やす:人格を育てるには、失敗の質を変えるのも大事。同じ失敗でも、「またやってしまった。自分は終わりだ」で終わるのと、「またこのパターンが出た。次はどこを変えるか?」と見るのでは、まったく違ってくるんで。なので、たとえば「先延ばししたら、『作業が大きすぎたから次は5分だけに分解しよう』と考える」「食べすぎたら、『昼のタンパク質が少なかった。次は昼食を厚くする』と考える」みたいな感じで、日々の失敗を「設計ミスのデータ」として扱えると吉。

 

ここらへんを意識しておけば、年を取ってから「自分の性格をうまく扱えるようになる」確率が上がるんじゃないでしょうか。つまり、私たちに必要なのは、「性格の改善」よりも「性格の運用」なのだとも申せましょう。そのために、自分のクセを観察しつつ、環境を整えていけばいいわけっすね。


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item



search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM

Popular Posts