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今週の小ネタ:不健康な習慣が増えるほどメンタルを病む、心肺機能が高い人ほどメンタルが強い、SNSを使ったメンタル改善は効くのか?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

不健康な習慣が増えるほどメンタルを病む

不健康な生活習慣がいくつも重なると、若者の不安とうつはどれぐらい増えるのか?」ってのを調べた研究(R)が出ておりました。悪い食事、運動不足、睡眠不足、飲酒など、不健康を引き起こすライフスタイルはいくつもありますが、これらが組み合わさると、メンタルはどこまで悪化するのか?ってことですな。

 

調査の対象になったのは中国の学生6656人で、平均年齢は14歳。彼らを1年間追跡して、食事、運動、睡眠、飲酒、スクリーンタイムと、不安・うつの症状の関係をチェックしております。その際に、研究チームは若者たちを4つのタイプに分類してます。

 

  1. 低リスク群:比較的、生活習慣が整っているグループで、全体の24%。

  2. 食生活が悪い群:食事の質に問題があるタイプで、全体の40%。

  3. 座りっぱなし&スクリーンタイム多め群:運動不足で、画面を見る時間が長いタイプ。全体の22%。

  4. 複数の不健康習慣を抱える群:食事も悪い、運動もしない、睡眠も乱れる、スクリーンタイムも多い、みたいに問題が重なっているタイプで、全体の14%。

 

その上で、みんなの1年後のメンタルはどうなったのかと言いますと、

 

  • 座りっぱなし&スクリーンタイム多め群は、不安とうつを同時に抱えるリスクが約50%高かった

 

  • 複数の不健康習慣を抱える群は、不安とうつを同時に抱えるリスクが3倍以上だった

 

とのこと。まぁ予想はしてましたが、やはり悪い生活習慣が複数まとまると、メンタルへのダメージが一気に跳ね上がるみたいっすね。いやー、これはだいぶ怖い数字ですな。

 

さらに、この研究で重要なのが、不健康な習慣の数が増えるほどリスクも上がるという点です。具体的には、

 

  • 不健康習慣が4〜6個ある若者は、不安とうつを同時に抱えるリスクが約40%アップ

  • 不健康習慣が7個以上ある若者は、リスクが約3倍

 

という感じになってまして、ざっくり言えば、「悪い習慣が多いほどメンタルも悪くなりやすい」という、かなり直感に合う結果ですね。

 

実際のところ、生活習慣ってのはすべて緊密にからみあってまして、たとえば、

 

  • スクリーンタイムが長いと夜の光刺激で睡眠が乱れやすくなる→
  • 睡眠が乱れると、日中のエネルギーが落ちて運動量が減る→
  • 運動量が減ると、気分転換の機会が減って、ストレス耐性が落ちる→
  • ストレスが増えると、ジャンクフードや甘いものに手が伸びやすくなる→
  • 食生活が乱れると、炎症などを通じて、さらに気分が不安定になる可能性がある

 

みたいな感じっすね。つまり、ひとつの悪い習慣は、ドミノ倒し的にメンタルを悪化させていくわけです。

 

とはいえ、これは希望でもありまして、悪い習慣が連鎖しているなら、どこか1カ所を変えるだけで、他の習慣にも良い影響が広がる可能性がありますからね。いきなり「食事も運動も睡眠もスマホも全部改善しよう!」としても辛いですけど、一番レバレッジが高い習慣を1つだけ直すぐらいなら取り組みやすいでしょうし。

 

その点で、個人的に最初に改善しておきたいと思うのは「睡眠」でして、というのも、睡眠はメンタル、食欲、運動意欲、集中力、スクリーンタイムのすべてに関係するからであります。睡眠が崩れると他の生活習慣も一気に崩れやすいんで、「何か変えないとなぁ」と思っている方は、まずはここから手を付けてみるといいんじゃないでしょうか。

 

 

 

心肺機能が高い人ほど、メンタルのが強いかもしれない

心肺機能が高い人ほど、怒りや不安に巻き込まれにくいのでは?」というナイスなデータ(R)が出ておりました。一応説明しておくと、心肺機能ってのは、身体が酸素をどれだけ効率よく使えるかを表す能力のことで、ウォーキング、ランニング、サイクリング、水泳などを長く続けられるか、運動後にどれだけ早く回復できるか、みたいなところに関係しております。長寿にも欠かせないので、できるだけ鍛えておきたい能力のひとつなんですよ。

 

で、今回の研究では、「心肺機能はストレスの耐性と関係しているのか?」を調べております。研究チームは、18〜40歳の健康な男女40人を集めて、

 

  1. まず、みんなの身長や体重を測定し、普段の怒りやすさ、不安になりやすさを評価。「もともと不安になりやすいか」「怒りやすい傾向があるか」という性格的な傾向を調べている。

  2. さらに、参加者は自分の身体活動量を報告し、そのデータをもとに研究チームが心肺機能を推定。直接VO2maxを測ったわけではないので、ここは注意点だけど、とりあえず参加者を「心肺機能が平均以上のグループ」と「平均以下のグループ」に分けている。

  3. その後、参加者はラボに2回訪問し、それぞれの回で画像を見せられる。1回は不快な画像を69枚。もう1回は中立的な画像を69枚。

 

って感じで実験をしたそうな。要するに、「人間の感情を揺さぶる画像」を見せて、怒りや不安がどう変化するかを調べたってことですね。

 

で、その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 普段の傾向を見ると、心肺機能が高い人ほど、特性不安が低い傾向がありました。要するに、VO2maxが高いと推定された人ほど、日常的に不安になりにくかった。

 

  • ただし、実験前の状態では、心肺機能が高いグループと低いグループのあいだに、状態不安、状態怒り、心拍数の大きな差はなかった。

 

  • 心肺機能が低いグループは、不快な画像を見たあとに、状態不安と状態怒りが大きく跳ね上がった。一方で、心肺機能が高いグループは、その上昇がかなり抑えられていた。

 

  • 心肺機能が低い人たちは、不快画像を見たあとに状態不安が「中程度」から「高い」レベルへ上がる確率が775%高かった。これはかなり派手な数字ですが、サンプル数が40人ぐらいなんで、ここは過剰に受け取らないほうがよさげ。

 

だったそうな。ということで、心肺機能が低い人は、ストレス刺激に対して感情が一気に燃え上がりやすい可能性があり、その一方で心肺機能が高い人は、同じような嫌な刺激を見ても、感情の急上昇をある程度ブレーキできるかもしれない……ってことですね。

 

確かにこれは実感に合う話でして、たとえば睡眠不足で体力が落ちているときほど、ちょっとしたLINEの返信の遅さにイライラしたり、SNSのコメントに過剰反応したり、ニュースを見て不安が爆発したりすることはありますからね。逆に、体調が良くて適度に運動しているときは、同じ出来事が起きても「まあ、そんなこともあるか」と流せることが多かったりしますし。

 

もちろん、認知行動療法やマインドフルネスのように、思考や注意の使い方を変えるアプローチも大事ではあるものの、今回の研究を見る限り、ストレスへの耐性を上げるには「心肺機能で土台を作る!」って考え方もかなり重要になるんでしょうな。怒りや不安に振り回されやすい人は、「自分はメンタルが弱い」と責める前に、「最近、心肺機能が落ちてないか?」と考えてみてもいいかもですね。

 

 

 

SNSを使ったメンタル改善は効くのか?

「SNSでメンタル改善できるのか?」を調べたメタ分析(R)が出ておりました。SNSを使ったメンタル改善ってのは、いくつか例を挙げると、

 

  • セラピストが運営するオンライン支援グループ
  • ピアサポート系のコミュニティ
  • 心理教育の投稿
  • チャットによるメンタル相談
  • SNSに気分を記録する
  • 認知行動療法やマインドフルネスを使ったワーク

 

みたいな感じです。要するに、SNSを「ただの情報消費の場」ではなく、メンタルケアのための支援環境として使うようなイメージですね。

 

メタ分析に含まれた研究の数は17件で、参加者の数は合計5624人。すべてひっくるめて「SNSを使ったメンタルヘルス介入は、うつ、不安、ストレス、ネガティブ感情、心理的苦痛をどれぐらい減らすのか?」を調べたところ、

 

  • SNSベースのメンタルヘルス介入は、全体としてメンタル症状を改善する傾向があった
  • 特に効果が大きかったのはストレス症状で、こちらは中〜高程度の改善が見られた。
  • 一方で、うつ症状や不安症状への効果は低〜中程度だった。

 

という結果が出たんだそうな。つまり、「メンタルが劇的に治る!」みたいな話ではないものの、「ちゃんと設計されたプログラムをSNS経由で行うなら、そこそこ役に立つ可能性がある」とは言えそうですね。

 

ちなみに、研究チームの分析によると、効果が出やすいプログラムにはいくつかの特徴があったそうで、こちらも押さえておきましょう。

 

  1. 人間によるガイドがあること:これはセラピスト、コーチ、研究スタッフなどが介入をサポートするタイプのプログラムのこと。逆に言えば、ただ心理学っぽい投稿を流したり、自動化されたコンテンツを見せたりするだけでは、効果が弱くなる可能性がある。メンタルが落ちているときには、「自分の状況を見てくれている人がいる」「困ったら反応してくれる人がいる」という感覚が大事なのだと思われる。

  2. 社会的なつながりを重視したプログラムのほうが効きやすい:研究では、主に社会的交流、感情的サポート、仲間意識を提供するプログラムのほうが効果的だったとのこと。というのも、うつや不安、ストレスが強いときには、人はだいたい孤立しちゃうので、同じような悩みを持つ人との交流や、感情を受け止めてくれる場があるほうが良いのだと思われる。

  3. 女性の参加者が多い研究ほど効果が出やすい:具体的には、参加者の70%以上が女性の研究で効果が高かった。ただし、これは「女性だけに効く」という意味ではなく、女性のほうがオンライン上で感情共有や支援を活用しやすいのかもしれない。

 

ということで、SNSというとつい悪者にされがちなんだけど、一方でSNSには「つながり」「支援」「学習」「行動変容」の道具としての側面もあるんで、こちらの側面は積極的に使っていきたいとこっすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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