老化で筋肉が落ちるのは「年齢」のせいなのか?それとも「使わない」せいなのか?問題
「年を取ると筋肉が落ちる!」って話は、もはや健康クラスタの常識。実際、30代以降は筋肉量は少しずつ減りやすくなり、60代にもなると「昔より階段がつらい!」「ちょっと歩いただけで疲れる!」みたいな変化が出てくるんですよね。いわゆるサルコペニア問題です。
が、ここでいまいち答えが出ていないのが、
- 筋肉が落ちるのは、老化そのもののせいなのか? それとも、年を取って体を使わなくなるからなのか?
って問題です。これはかなり大事な問題で、もし筋肉が減っちゃう理由の大部分が「老化そのもの」で決まるなら、私たちができる対策はほとんどないことになるじゃないですか。しかし、もし「使わなくなること」が大きな原因なら、筋トレや運動習慣でかなり対策できるかもしれないわけです。つまり、「年齢だから仕方ない」とあきらめるべきなのか、それとも「使ってないから衰えてるだけじゃね?」と考えるべきなのかってことですな。
で、この問題について、ちょっとおもしろい研究(R)が出てまして、ここで研究チームが何を考えたのかと言いますと、
- 「脚の筋肉」と「アゴの筋肉」を比べれば、老化と不使用の影響を分けて考えられるのでは?
みたいな感じです。ちょっとわかりづらいかもですけど、「脚の筋肉」って、年を取るごとに使う機会が減りがちじゃないですか。若いころは走ったり、旅行で歩き回ったりするけど、年齢とともに活動量が下がってしまって、どうしても運動時間が減っちゃう人が多いんですよね。
一方で、アゴの筋肉ってのは、年を取っても使い続けるじゃないですか。もちろん食事の内容は変わるだろうけど、だいたいの人は高齢になっても毎日ものを噛みます。つまり、アゴの筋肉は「老化しても使い続けられる筋肉」として扱いやすいわけです。これはナイスなアイデアですよねぇ。
でもって、今回の研究では、健康で活動的な女性を集めたうえで、
- 18〜30歳
- 40〜50歳
- 65〜75歳
の3グループに分けて、太ももの前側にある大腿四頭筋と、噛むときに使う咬筋のサイズと筋力を調べたんだそうな。
そこで、なにがわかったかと言いますと、
- 脚の筋肉は、年あたり約1.02%ずつ減少する
- アゴの筋肉は、年あたり約0.49%ずつ減少する
という感じだったそうです。脚の筋肉は、アゴの筋肉のおよそ2倍のスピードで小さくなっていたってことですね。なので、これをざっくり解釈すれば、年を取って筋肉が減っちゃう問題のうち、半分ぐらいは老化そのもので、残りの半分ぐらいは「使わなくなること」の影響かもしれない……と言えるかもですな。まぁ、これは年齢の違うグループを比べた横断研究なので、めっちゃ精度が高い結論ってわけじゃないんですけど、「使っている筋肉は比較的残りやすそう」ってのは、それなりに正しそうな結論じゃないかなーと思うわけです。
ただし、この研究ではまた別の知見も出てまして、筋力に関してはこんな結論も出ております。
- 筋力で見ると、脚とアゴの低下率はかなり同じような感じだった
ということで、普通は筋肉が小さくなったら、筋力も同じように落ちそうなもんですけど、実際にはそんなこともないらしいんですな。というのも、筋力ってのは単に筋肉の大きさだけで決まるわけではなくて、
- 筋肉のサイズ
- 神経から筋肉への指令のうまさ
- 筋線維のタイプ
- 動作への慣れ
- 脳がどれだけ効率よく筋肉を動員できるか
などいろんな要素が関わってるんですよ。筋肉量と筋力は関係するけれど、完全にイコールじゃないんですな。
この点を考えると、今回のデータってのは、「筋肉を使い続ければサイズの低下はある程度防げるかもしれないが、筋力の低下には神経系の老化も関わる」ぐらいに見ておくのがいいんでしょう。なので、この研究から得られる実用的なメッセージとしては、
- 老化による筋肉低下は避けられない部分もあるが、かなりの部分は生活習慣で変えられるかもしれない
って感じでとらえておくといいでしょうね。これは有酸素能力の話とも近くて、一般的に運動しない人のVO2maxは25歳ぐらいから10年ごとに約10%ずつ落ちるんだけど、トレーニングを続けているマスターズアスリートでは、その低下を10年あたり約5%に抑えられる可能性があると言われてるんですよ。体力低下の半分ぐらいは老化で、半分ぐらいは活動量の低下ってのは、筋肉でも心肺機能でも同じなんでしょうな。
そう考えると、老化対策として大事なのは、若いころと同じことを無理に続けることではなくて、「使わない筋肉」を増やさないことだと申せましょう。若いころのように毎日運動する必要はなくて、体に対して「この筋肉はまだ使う必要があるぞ!」ってシグナルを送り続けるのが肝要ってことでして、具体的には以下のような感じで十分でしょう。
- 脚の筋肉は最優先で守る:アゴの筋肉は放っておいても毎日使うけど、脚の筋肉は意識しないと簡単に使用量が落ちちゃうんで、老化対策としては、やはり下半身が最優先。スクワット、ランジ、階段上り、レッグプレス、速歩あたりはやっときたい。特にスクワットやランジは日常動作に直結するので、コスパが高め。
- 筋肉量だけでなく「神経の使い方」も鍛える:今回の研究では、筋肉サイズと筋力の低下パターンが一致しなかったので、筋肉を大きくするだけではなく、神経系も鍛えたほうがよさげ。そのためには、ゆっくり丁寧に動く、片脚立ちをする、バランス系の動きを入れるなどのトレーニングも大事。特に年を取ると「バランスを崩して骨を折る」問題が頻発するんで、神経系のトレーニングもめっちゃ大事。
- 「できなくなってから減らす」のではなく「できる限り続ける」:今回の論文では、「老化に配慮して、先回りして冒険を減らしすぎる必要はない!」と指摘されている。年を取ると、多くの人は「もう年だから」と言って、先回りして行動範囲を狭めがちだが、体は使わない機能からガンガン衰えてしまう。もちろん、痛みや病気を無視して無茶をしろという話ではないが、まだ歩けるなら歩き、まだ階段を上れるなら上る、といった具合に「できる範囲を勝手に狭めない」態度が、かなり重要になる。
ということで、今回の話をまとめると、
- 老化による筋肉の低下は避けられないが、生活習慣でかなり抵抗できる可能性がある
- 特に脚の筋肉は意識して使わないと落ちやすい
って感じです。いずれにせよ、「年齢で落ちる筋肉」と「使わないから落ちる筋肉」は別物なので、「使わないことによる老化」はかなり減らせるのだと申せましょう。どうぞよしなにー。


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