ボディービルダーって早死にじゃない?だから、高タンパク食の人も早死にしちゃうんじゃない?問題を考える
「タンパク質は大事だぞ!」って話は、健康の世界ではもはや常識。タンパク質は、筋肉を増やしたい人はもちろん、ダイエット中の食欲コントロール、加齢による筋肉減少の予防、運動後の回復にめっちゃ大事なんで、最近ではコンビニでもスーパーでも「高タンパク!」を売りにした商品が増えまくっているのがご存じのとおりです。
が、その一方で、Xなどを見てますと、「タンパク質ヤバい!」勢のコメントも多くて、
- 「タンパク質を摂りすぎると寿命が縮む!」
- 「高タンパク食は内臓に負担をかける!」
- 「ボディビルダーみたいな食事は危険!」
みたいな警告も根強かったりします。いずれもなかなか怖い話なんですけど、なかでも恐ろしげなのが「ボディビルダーは早死にしてる!」って指摘であります。というのも、亡くなったボディビルダーの体を調べた過去の報告(R)などを見ると、心臓や肝臓、腎臓などの臓器が大きくなっていたケースが散見されまして、これが「ボディビルダーは、一般人よりもはるかに多くのタンパク質を摂るからじゃないのか?」とか言われてるんですよ。
実際のところ、2020年の論説(R)では、タンパク質をたくさん摂ったときに、筋肉で使い切れなかった分のタンパク質合成がどこへ行くのかはよくわかっておらず、もしかすると内臓肥大につながるのでは?という懸念も示されております。確かに、「臓器が肥大化」とか言われると、「やっぱり高タンパク食と筋トレは内臓に悪いのでは?」と思いたくなるのも自然であります。
ということで、新しい研究(R)では、本当にタンパク質の摂りすぎで臓器がふくらむのか?を調べてくれておりました。この研究は、45人の男性を以下の3グループに分けて比較したものでして、
| グループ | 人数 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一般的に活動的な男性 | 15人 | 対照群 |
| ナチュラルの競技ボディビルダー | 15人 | 薬物なし |
| 薬物使用の競技ボディビルダー | 15人 | ステロイド等を使用 |
その上で、すべての参加者の体組成をDXAで測り、MRIで筋肉量や内臓の大きさをチェック。さらに、食事内容、トレーニング内容、薬物使用歴などを確認したんだそうな。さらに、当然ながらみんなのタンパク質の摂取量も調べてまして、
| グループ | タンパク質摂取量 |
|---|---|
| 一般男性 | 約1.4 g/kg/日 |
| ナチュラルボディビルダー | 約2.5 g/kg/日 |
| 薬物使用ボディビルダー | 約2.9 g/kg/日 |
こんな感じで分類しております。つまり、ナチュラル組も薬物使用組も、どちらもかなりの高タンパクな食事をしていたわけですね。
で、みんなの内臓の大きさがどうだったのかと言いますと、かなり明確な結果が出ております。
- 肝臓、心臓、脾臓、腎臓のサイズが大きかったのは、薬物使用ボディビルダーだけだった。
- 一方で、ナチュラルボディビルダーと一般男性の内臓サイズには、有意な差がなかった。
ということで、もし「高タンパク食そのもの」が内臓を巨大化させるなら、ナチュラルボディビルダーにも内臓肥大が見られるはずが、実際には、かなりの高タンパクだったナチュラル組に内臓肥大は見られなかったというんですな。となると、少なくともこのデータからは、
高タンパク食や筋トレで内臓が肥大するわけじゃなくて、たんに薬物使用の影響が大きいのでは?
と考えるほうが自然になるわけっすね。
まぁ、個人的にはこの結果には納得でして、過去のボディビルダーを見てみると、逆に長生きであることが多いんですよ。たとえば、ボディビルダーの寿命を時代別に見たデータ(R)を見てみると、
| 年代 | 平均死亡年齢 |
|---|---|
| 1900〜1930年 | 約74.8歳 |
| 1930〜1960年 | 約80.2歳 |
| 1960〜1990年 | 約68.6歳 |
みたいになります。ボディビルの世界でステロイド使用が広まり始めたのは1960年ごろなんで、ご覧のとおり、その前の時代のボディビルダーは、同世代の一般男性よりもむしろ長生きしていた可能性があるんですよ。1900〜1930年と1930〜1960年のボディビルダーは、当時の一般男性より約10年ほど長生きしていたとされてまして、「ボディビルダーは短命!」と言われるようになったのは、もっと後の話なんですな。
もちろん、これは歴史データなので限界はあります。生活環境も医療も時代によって違いますし、完全な因果関係を証明するものじゃないんで、そこは慎重にしときたいところです。とはいえ、個人的には「昔のナチュラルなボディビルダーは長生き→ステロイド普及後のボディビルダーは短命」って流れを見ると、やはり怪しいのは「タンパク質」や「筋トレ」そのものではなく、薬物使用や極端な身体づくりのほうでは?と思えてくるわけです。
そんなわけで、今回の話をまとめると、
- 高タンパク食はしばしば「内臓に悪い」と言われるが、ナチュラルボディビルダーと一般男性では、内臓サイズに大きな差は見られなかった。
- 内臓が大きかったのは、薬物使用ボディビルダーだった。
- ステロイド以前のボディビルダーは、むしろ一般男性より長生きしていた可能性があり、高タンパク食や筋トレそのものを怖がりすぎる必要はなさそう
みたいになります。そんなわけで、結局は毎度おなじみの結論に落ち着きますけど、いま筋トレをしている人なら、
- 体重1kgあたり1.6〜2.2g/日ぐらいのタンパク質を目指す
- 減量中やかなりハードに鍛えている人なら、もう少し高めでもOK
- 腎疾患などがある人は医師に相談しよう!
ぐらいで考えるのが無難でしょう。たとえば体重70kgなら、1日112〜154gぐらいを目指す計算ですな。どうぞよしなに。


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