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高タンパク食と筋トレで、筋肉を増やしながら脂肪を落とす「リコンプ」は本当に可能なのか?

 
 

「筋肉を増やすならカロリーを増やせ!」

「脂肪を落とすならカロリーを減らせ!」

 

ってのは、筋トレにおける基本ルールであります。増量期にはたくさん食べて筋肉を増やし、減量期には食事を絞って脂肪を落とすってのは、筋肉界隈のゴールデンルールなわけですな。

 

この考え方が正しいことは間違いなくて、筋肉を増やすには材料とカロリーが必要ですし、脂肪を落とすにはエネルギー収支をマイナスにする必要がありますからね。ここを無視して「食べなくても筋肉は増える!」みたいな方向に行っちゃうと、だいぶヤバいやつになっちゃいますからね。

 

しかし一方で、トレーニングをしている人なら、一度はこう思ったことがあるんじゃないでしょうか。

 

  • 筋肉を増やしながら、同時に脂肪を落とすことってできないの?

 

これは、筋肉クラスタでは「リコンプ」として知られるテーマで、ざっくり言えば「体重はあまり変わらないのに、筋肉が増えて脂肪が減る現象」のことです。通常は、筋肉が増えれば脂肪も増えるので、脂肪だけを落としながら筋肉だけを増やすなんて、都合のいい話はそうそう起きないわけです。

 

で、今回チェックした研究(R)は、まさにこの問題を扱ってまして、筋トレ好きを対象に「高タンパク食+筋トレでリコンプが起きるのか?」をガッツリ調べてくれております。具体的には、これは30人のトレーニング経験者を対象に10週間の実験を行ったもので、参加者をざっくり以下の3グループにわけております。

 

  1. 維持カロリーグループ:維持カロリー+高タンパク食+筋トレ

  2. カロリー制限グループ:軽いカロリー制限+高タンパク食+筋トレ

  3. 対照グループ:食事指導なし+筋トレ

 

ここで重要なのはグループ1と2のタンパク質量で、どちらも1日あたり体重1kgにつき2.5g のタンパク質を摂るように指示されたんだそうな。つまり、体重70kgなら1日175gにもなるんで、これはなかなかの量ですな。この実験のテーマはあくまで「脂肪を落としつつ、筋肉も増やしたい」なので、タンパク質もかなり高めに設定されているわけっすね。

 

では、結果はどうだったのかというと、ざっくり言うとこんな感じになりました。

 

  • 維持カロリーグループ:脂肪が約1.4kg減り、筋肉が約1.0kg増えた

  • カロリー制限グループ:脂肪が約2.9kg減り、筋肉が約1.0kg増えた

  • 対照グループ:脂肪と筋肉ともに大きな変化なし

 

ご覧のとおり、カロリー制限グループは、脂肪をより多く落としながら、維持カロリーグループとほぼ同じぐらい筋肉を増やすことに成功しております。つまり、軽いカロリー制限をした場合は、高タンパク食と筋トレをちゃんと組み合わせれば、筋肉を増やしながら脂肪を落とせる可能性があるかも!ってことですな。これはなかなかよろしいですな。

 

というと、「従来の理論は間違いなのか?」って気になるかもですが、ここで大事なのは、この実験で行われたカロリー制限が“かなり軽め”だったってところです。カロリー制限グループは、維持カロリーより250kcalほど少ないレベルのカロリー制限だったそうで、そんな極端な減量じゃないんですよ。

 

今回の研究においては、

 

  • 筋トレは週4回
  • タンパク質は2.5g/kg/日
  • カロリー制限は軽め
  • 実験の参加者には、まだ脂肪を落とす余地があった(平均体脂肪率が約25%前後なんで)

 

という条件がそろってますんで、これなら人体は脂肪をエネルギーとして使いつつ、タンパク質と筋トレ刺激をもとに筋肉を増やすことができるってことなんでしょう。

 

なので、この研究を見て、「じゃあ誰でも筋肉を増やしながら脂肪を落とせるんだ!」と考えるのは早計でして、基本的にリコンプってのは以下のような人じゃないと起きにくいんで、そこは頭に置いておきましょう。

 

  • 筋トレ初心者〜中級者なので、筋肉が増える余地が大きい

  • 体脂肪率がやや高めなので、使えるエネルギーが体内にある

  • タンパク質の摂取量が十分で、筋肉の材料が足りている

  • カロリー制限が軽めで、トレーニングの質を保つことができる

  • 睡眠と回復がバッチリで、ちゃんと筋合成を進めることができる

 

これとは逆に、すでにかなり体を絞れていて、筋トレ歴も長く、筋量も多い人は、リコンプの難易度が一気に上がりますんで、あえて目指すのは得策じゃないでしょうな(私もリコンプはあきらめてます)。

 

実用的な目安として、リコンプを狙いやすいラインをまとめておくと、

 

  • 男性:体脂肪率15%以上、FFMI 25未満
  • 女性: 体脂肪率25%以上、FFMI 20未満

 

この条件から外れている場合は、「筋肉を増やす」と「脂肪を落とす」のどちらも狙うより、どちらかに集中したほうがよいでしょう。

 

で、一般人がこの研究をどう使えばいいのか?ってことですが、以下のような戦略を使うのがいいんじゃないでしょうか。

 

  1. カロリー制限は小さくする:リコンプ狙いでいちばんやってはいけないのが極端な食事制限で、1日500〜800kcalも削ると、脂肪は落ちやすいですが、筋トレのパフォーマンスも落ちて意味がなくなりがち。今回の研究に近づけるなら、まずは維持カロリーからマイナス200〜300kcalぐらいを目安にするとよさげ。

  2. タンパク質はかなり多めにする:リコンプを狙うなら、タンパク質はケチらないのが基本。今回の研究では2.5g/kg/日だけど、いきなりここまで増やすのが難しい人も多いはずなんで、現実的には「体重1kgあたり1.6〜2.2g/日」をまず狙い、リコンプや減量中の筋量維持を強く狙うなら、もう少し高めにするのもアリ。

  3. 筋トレの質と量を上げる:筋肉を増やすためには、週3〜4回は筋トレしつつ、重量、回数、セット数のどれかを少しずつ伸ばすのが必須。リコンプを狙うなら、「消費カロリーを増やすための運動」よりも、まずは筋肉に成長シグナルを送る筋トレのほうが大事。

  4. 体重だけで判断しない:リコンプがややこしいのは体重があまり変わらないとこで、脂肪が2kg落ちて、筋肉が1kg増えたら、体重は1kgしか減らない。なので、普通のダイエット感覚だと、「全然体重が落ちてない……」と思いがちだけど、見た目や体組成はかなり良くなっているので、そっちを重視したほうが吉。

 

ということで、今回の話をまとめると、

 

  • 高タンパク食と筋トレを組み合わせれば、軽いカロリー制限でも筋肉を増やしながら脂肪を落とせる可能性がある

 

んだけども、

 

  • リコンプが起きるには複数の条件があるんで気をつけてねー

 

って感じっすね。リコンプに失敗する人の多くは、食事を削りすぎたり、タンパク質が足りなかったり、筋トレの質が落ちてたりするんで、そこらへんはぜひご注意くださいませー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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