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書くだけで幸福度と認知機能が高まる「筆記開示」初級ガイド

Writing

 

「筆記開示(Expressive Writing)」って本を読んでおります。

 



  

筆記開示ってなに?どんな効果があるの? 

筆記開示は1,980年代に生まれた心理療法で、その方法は、「自分が体験したネガティブな経験を、感情や思考を包み隠さず書き記す」というもの。誰にも見られない日記にグチを書いたりとか、クローズドなブログに悩みを書き込んだりとか、そういった行為も筆記開示の一種といっていいかも。

 

 

とてもシンプルな手法ですが、すでに数百を超す実証研究がありまして、不安やうつ状態への効果が認められているとか。本書にいわく、

 

数々の研究により、筆記開示を行った被験者の多くがより幸福感を持ち、ネガティブな感情が減った。さらには、筆記開示を始めて数週間から数ヶ月で、うつ状態や不安感、感情の波がおだやかになる傾向も見られた (Lepore 1997)。その他の研究でも、全体的な幸福感の高まりや、認知機能の改善などが見られた(Barclay & Skarlicki 2009)。

 

とのこと。幸福感が高まるうえに頭も良くなっちゃうそうで、かなり応用範囲が広そうなテクニックですね。

 

 

そのほかにも、

 

  • 日本で行われた研究(1)では、筆記開示を行った学生は5週間でワーキングメモリの働きが向上した
  • 筆記開示を行った男女のカップルは、ポジティブな感情が高まり、親密さが深まった(2)
  • 嫌いな相手に対する感情について筆記開示を行った被験者は、その相手を許せるようになった(3)
  • 8カ月の筆記開示を行った被験者の42%が、新しい仕事の面接試験をパスした(筆記開示をしなかった被験者の合格率は20%)(4)

 

などなど、かなり広い範囲で効果が認められているみたい。うーん、知らなかった。

 

 

筆記開示の方法は?

そんなわけで、私生活で嫌なことがあったら、まずは筆記開示を試してみるのもアリ。具体的なポイントは、以下の3つであります。

 

  1. まずは筆記開示を4日間続けてみる:研究によれば、最低でも4日間連続で自分の感情を描き続けないと、効果が薄れるそうな。実践の時間は、仕事終わりや寝る前がベストだそうです。
  2. とにかく1日20分は書き続ける:こちらも多くの実証研究で、1日20分以上は書き続ける必要があることがわかっているらしい。その際には、文章の体裁や誤字脱字にはこだわらず、ひたすら自分の悩みをノンストップで書きなぐるのがコツ。もちろん、同じ内容を4日間続けて書いてもOK。
  3. 悩みを展開してみる:筆記開示に慣れてきたら、その悩みを人生の他の分野とつなげてみる。仕事の失敗を悔やんでいるなら、その悩みが家庭や友人関係、過去、未来などに与える影響にも書いていく感じ。こうすることで、さらに深く自分の感情に気づけるようになるらしい。
 
とにかく、大事なのは書くことで自分の気持ちをクリアに把握して、それぞれの感情に名前をつけてあげるところ。筆者いわく、

 

トラウマの対処において重要なのは、ネガティブな感情やポジティブな感情を味わい、しっかりと認識できる能力だ。(中略)嫌な体験でわき上がった感情に、はじまりと終わりのある一貫したストーリーを与えることは、トラウマ対処の基本。そのため、自身のトラウマについて書くと、さまざまな効果が得られるのだ。

 

とのこと。嫌なことがあると、ついネガティブな感情に巻き込まれちゃいがちですが、悩みを書きまくることで、その体験を客観的に見られるようになるわけですね。そういえば、マインドフルネス瞑想も客観的な視点をきたえてネガティブな感情に対処する方法の1つなので、目指すところは近いものがありそう。「黙って座るのは辛い!」という方は、瞑想のかわりに筆記開示を試してみてもいいかもですねー。

 

 

credit: paloetic via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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