【質問】酒はどれぐらい飲むと寿命が縮みますか?
こんなご質問をいただきました。
鈴木さんは、アルコールは少しでも良くないかもしれないという話をたまにされています。アルコールが良くないことはわかったのですが、くわしく飲酒の量によってどう違いが出るのかを知りたいです。どれぐらい飲むと、どれぐらい健康に悪くなってしまうのかが気になりました。
ということで、確かに、アルコールについては、わたくし過去に以下のようなことを書いております。
かつては適量の酒なら体に良いとか言われたもんですが、 最近の研究では、ちょっとの酒でも体にダメージが起きてしまうって考え方の方が有力なんですよね。 そのため、 近年では、長寿の専門家で「酒は体に良い!」と言っている人はほぼいないんじゃないでしょうか。
ただし、お酒の量とダメージの関係については、 まだよくわからないところが多いんですが、 現時点での研究をまとめると、だいたい 以下のようなことが言えるでしょう。
- アルコールと脳:ある研究によると、少量から中程度の飲酒はアルツハイマー病や認知症のリスク低下と関連するが、大量飲酒ではそのリスクは有意に上昇することがわかった(R)。少量のアルコールでも、慢性的なアルコール摂取は神経変性を引き起こす可能性があり、健康な中年3万人以上を対象とした研究(R)では、1日平均1~2杯の飲酒でも、大脳皮質の白質と灰白質が縮小することが判明した(どちらも、連想記憶や思考・計画能力をつかさどる脳のエリア)。
ちなみに、脳のダメージは30代から始まっており、自覚症状がないから大丈夫だと思っていても、70代に向かって神経細胞が徐々に侵食されていく可能性が高い。
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アルコールと癌:アルコールは水溶性であり脂溶性であるため、臓器や細胞に入り込みやすく、体内の広範囲にダメージを与え、強力な発がん性物質として働くことがわかっている(R)。WHOによると、アルコールは少なくとも7種類のがんを引き起こす可能性があり、1日10グラムのアルコール(ビール、ワイン1杯が約10グラムから12グラム)を摂取するごとに、乳がんのリスクは4パーセントから13パーセント増加する。がんの発症リスクは、アルコールの摂取量が多ければ多いほど増加する。
- アルコールと腸:アルコールは腸内の善玉菌を殺し、腸の内壁を破壊して、悪玉菌を血液中に放出する可能性がある。ある研究(R)では、この悪玉菌が脳内で炎症性サイトカインとからみ、神経回路を混乱させることがある。
- アルコールと心臓:軽度から中等度の飲酒が心血管疾患の予防に役立つ可能性があり、1日1~2杯の飲酒は心臓発作や脳卒中のリスクを低下させる(R)。ただし、そこからもう1杯飲むだけで、どちらのリスクも大幅に上昇する(R)。
ということで、アルコールでよい影響を得られるケースもあるんだけど、基本的には1日1~2杯でもダメージはあり、これが3杯を超えていくとダメージが激増しちゃう傾向はありますね。あくまで1日1杯でもダメージはあるものの、週単位で見た場合は、女性なら週に5~7杯、男性なら10~14杯になったあたりから、病気のリスクが激増するとは言えるでしょうね。
もうちょい具体的に言うと、ある研究によると、週に7杯未満しか飲まない人と比べると、週に7~14杯の酒を飲む人は寿命が6カ月ほど短かったそうな(R)。つまり、いま酒好きの人が週に14~25杯の飲酒を控えると、寿命が1~2年延びることになりますな(めっちゃ単純計算ですけど)。
そう考えると、なんだかんだでアルコールは少なければ少ないほど良いとは言えまして、個人的には、男女ともに週7杯以下ぐらいに抑えないとキツいんじゃないかなーって印象ですね。
そうなると、「長寿の人たちも意外と酒を飲んでない?」って問題が気になる人もいるかもしれません。確かに、100歳オーバーの人たちが多く暮らすブルーゾーンでは、赤ワインやミルト酒をよく飲むにもかかわらず、心臓病の発症率が異様に低かったりするんですよ。サルデーニャの長寿の人々も、1日にグラス2、3杯のワインを飲むのが普通ですしね。
ただし、ブルーゾーンの方々は、先進国の人たちよりも日光を浴び、カロリーの質が高いものを食べ、めっちゃ体を動かしているので、飲酒習慣があるから長生きするわけじゃなくて、飲酒習慣があるにもかかわらず長生きでろているんだ、と考えるのが自然でしょうね。
ということで、基本は「飲まないのがベスト!」ではありつつも、どうしても飲みたい場合は1日に1杯以下ぐらいを目指すのが良いのではないでしょうかー。