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いくら食べても食欲がおさまらないのはなぜ?「初めてのセットポイント理論 その3」

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初めてのセットポイント理論 その1」では、人間の体はスリムな体型を維持するようにできているって話をしまして、「その2」では脳の混乱が原因で太る仕組みを見てみました。シリーズ3回目の今回は、細胞レベルでセットポイントが狂って脂肪が増えちゃう理由についてです。



 

 

なぜ人間の食欲は暴走するのか?

軽くおさらいしますと、人間の脳には自動でスリムな体型を保とうとする「セットポイント」って仕組みが備わっているんですが、いったんこの機能が狂い出すと、どんなに頑張っても痩せない体になっちゃう。その原因として大きいのが脳の混乱で、もう1つが細胞レベルの不調であります。


前提として、セットポイントがきちんと動いていると、人間の体は以下のように働いて、一定の体重をキープしようとがんばります。

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ところが、いったん肥満になってしまった方のなかには、いくら食べても空腹感がおさまらず、逆に代謝は下がって脂肪が燃えないって状態になったりするんですね。


これは「レプチン抵抗性」と呼ばれる現象でして、ホルモンのバランスが崩れちゃった状態。「痩せるホルモン『レプチン』を適切に調整するためのガイドライン」でも触れたとおり、レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、脳に「もう満腹です!」と伝える役目を持っております。


そのため、本当なら脂肪が多いほど簡単に満腹感を得られるはずなんですが、「レプチン抵抗性」がアップすると事態は大きく変わってきちゃう。脳がレプチンに反応しにくくなるので、どれだけ食べても食欲がおさまらなくなるんですな(1)。つまり、肥満の人というのは、見ためはいくら太っていても脳のなかは飢餓状態と同じなわけですね。これはツラい。


では、なぜ「レプチン抵抗性」なんて現象が起きるんでしょう?

 

レプチン抵抗性の原因その1・ダメージ食品 

脳がレプチンに反応しなくなる原因の第一は、細胞にダメージを与える食品の存在であります。具体的には、

 

  • オメガ6の摂り過ぎ:オメガ6は多価不飽和脂肪酸の一種で、大豆油やキャノーラ油なんかに多くふくまれる成分。当ブログでは、何度かオメガ3とオメガ6のバランスの重要性について書いてきましたが、西洋式の食事が多い人ほどオメガ6の摂取量も多い傾向がありまして、細胞のダメージもガンガンと増えちゃう。実際、オメガ6については相当な研究例がありまして、いずれもオメガ6の量が増えると、インシュリン抵抗性が高まったり(=糖尿病のリスク)、甲状腺ホルモンが減ったり(=慢性疲労や鬱病の原因)と、さまざまな害が指摘されております(2,3,4,5,6,7)。

 

  • グルテンの摂り過ぎ:グルテンは小麦にふくまれるタンパク質の一種。当ブログでも、グルテンの害については何度か書いてきたところです。もちろん、生まれつきグルテンに強い人もいるので、いちがいには言えないんですけども、パンやパスタを食べて飢餓感やアレルギーなどが起きた場合は、なるべく摂取をひかえるのが吉であります。
 
  • 抗栄養素の摂り過ぎ:抗栄養素とは、ビタミンやミネラルなどの吸収をブロックする成分。これには様々な種類がありますが、主に小麦系の食品豆類玄米などにふくまれてまして、リーキーガットを引き起こす原因になっちゃいます。人によっては、ナッツ類でも問題が起きるケースがあるんで、腸が弱い方は避けたほうが無難かも。
 
 
  • アレルゲン:これはアレルギー体質の方に限定の話ですが、アレルギー反応は体に炎症や酸化が起きている証拠ですんで、当然ながら細胞には大きなダメージが起きちゃう。ちなみに、食品アレルギーのように、すぐには反応が出ないタイプの症状もあるんで、気になる方は検査をオススメいたします。
 
 

もちろん、これらの食品は、あくまでも「摂り過ぎた場合」に問題になるので、少量であれば、そこまで肥満の原因にはならないかとは思います(トランス脂肪酸以外)。ただし、毎日のようにベジタブルオイルで料理しつつパンを食べ続ければ、やがて蓄積されたダメージが自分の体にはね返ってきますんで、なるべく量を減らしていくことをオススメいたします。


ちなみに、糖質制限ダイエットの世界では「炭水化物こそが食べ過ぎの原因!」って説もありますけど、さまざまなデータを見る限り、わたしはかなり疑わしい話だと思っております。なんだかんだで糖質は大事な栄養素なんで、「適切に炭水化物を食べて痩せるための4ステップ」でご紹介した量を参考に、適量を食べるのが大事かと思います。

 

レプチン抵抗性の原因その2・慢性的な過食 

レプチン抵抗性が起きる原因の2番めは、慢性的な食べ過ぎであります。カロリーオーバーな食事が続くと、細胞は大きなダメージを受けることが知られてまして(8,9)、血液にあふれだした栄養素が上手く吸収されなくなった結果、インシュリン抵抗性がどんどんアップ(=糖尿病になりやすくなる)していっちゃう。


おそらく、これはオメガ6やグルテンの摂り過ぎなどよりも深刻な状態なので、つねに食べ過ぎの自覚がある人は、プチ断食目的別ファスティングなどのテクニックを使って、定期的にカロリーを減らす日を作ってみたほうがよいかと。

 

レプチン抵抗性の原因その3・慢性的なカロリー制限

慢性的な過食が良くないように、慢性的なカロリー制限も細胞はダメージを受けます。確かに一瞬だけ体重は減るんですが、すぐに筋肉量が減って代謝が落ちるのでリバウンドしちゃう。その具体的な仕組みについては、「なぜカロリー制限ダイエットの95%は失敗に終わるのか?」にくわしく書きましたので、あわせてご参照ください。

 

レプチン抵抗性の原因その4・栄養不足

 意外なほど多いのが、カロリーは足りているのに、栄養素が足りなくて太ってしまうパターン。たとえば極端な低脂肪ダイエットは細胞膜の再生をさまたげて代謝を落としますし、糖質制限ダイエットも行き過ぎると甲状腺ホルモンが減って脂肪が燃えにくくなることが知られております。


同じく、 ビタミンやミネラルなどの微量栄養素の不足も、激しく体の代謝を落とす原因になりますので、野菜が足りない方はマルチビタミンの摂取が吉。

 

レプチン抵抗性の原因その5・座りすぎ

これは「『座りっぱなしが寿命を縮める理由』を描いたインフォグラフィック」でもご紹介したとおり、イスに座ると足の電気信号がストップして消費カロリーがガンガンと減っていくうえに、脂肪を燃やす効果のある酵素の量も少なくなっていっちゃう。


実際、座り仕事が多い人は格段に肥満率が高いって論文(10)が多くあるうえに、ガンや糖尿病の発症率が2倍にはね上がったり(11,12)、遺伝子に異変が起きたり(13)、食欲のコントロールが効かなくなったりと(14,15,16)、嫌なデータが満載。わたしはスタンディングデスクを愛用してますが、仕事の都合でどうにもならない方は、できる限り歩数を増やすように意識しましょう。

 

まとめ

そんなわけで、今回は細胞レベルのダメージがセットポイントを上げる理由を見てみました。次回は、ここまでの話をふまえた上で、「じゃあセットポイントを下げるにはどうすればいいの?」ってところへ進んでいきたいと思います。

 

【初めてのセットポイント理論シリーズ】

 

credit: daniellehelm via FindCC


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