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現代人の脳を正しく動かすには「9つの要素」が必要だ!って本を読んだ話


  

ハードワイヤード・フォー・ハピネス(Hardwired for Happiness)」って本を読みました。著者のアシシュ・コタリ先生は存じ上げなかったんですが、ハピネス・スクワッドって企業のCEOで、科学ベースで「人間が満足して生きる方法」を追求している方だそうです。

 

本書のサブタイトルは「ストレスに打ち勝ち、最高の人生を送るための9つの実践法」って感じでして、ポジティブ心理学系の本を読んでいる方なら、そこまで目新しい観点はないかも。「現代人の脳は不適応を起こしているのだ!」って観点は、拙著「最高の体調」と似た観点でおもしろかったですが。

 

ってことで、いつもどおり本書から勉強になったところをまとめてみましょうー。

 

 

  • 私たちの脳は現代社会で不適応を起こしている。たとえば、私たちは過去のどの世代よりも豊かで、1950年代には60%近くあった貧困レベルも、現在は10%以下であるのに、多くの人はよりストレスを感じ、より多くのものを消費している。

    また、ほとんどの人間はかつてないほど長生きしているが、その晩年は慢性的な病気に悩まされる。同じように、人とのつながりが増えたにもかかわらず孤独な人は増え、何をするにも効率的になったのに、かつてないほど忙しく、休暇を取る時間もないと感じる人が多い。

 

 

  • 私たちは、無意識のうちに、自分のキャリアや外的な報酬を追求することに過剰な投資をし、短期的には目に見える利益を追い求め続けている。その代わりに、本当に重要なことを常に前面に出し、それに従って時間とエネルギーを配分しないと、脳は幸福を感じてくれない。

 

 

  • これらの問題は、私たちの脳が現代に不適応を起こしているのが原因である。私たちの脳は、もともとは危険を探しながら生き続けるように配線されている。野生の世界では、物陰に隠れている猛獣を感知し、すばやく反応する能力が生死を決めていたからである。

    ところが現在では、「複雑化する社会」が、かつての猛獣と同じ地位についている。厳しいキャリアと多忙な家庭生活、24時間365日流れるストレスフルなニュースなどに対し、私たちの脳は、物理的な脅威と同じように反応する。人間の脳は、物理的な脅威と脆弱な自我への脅威を区別できないからである。

    その結果、現代人は、つねに心理的な欠乏と恐怖が高まった状態で生活している。社会で成功できないことへの恐怖、取り残されることへの恐怖、愛されないことへの恐怖などに対し、私たちは日々、恐怖を感じるように仕向けられている。

     

 

 

 

 

  • 時間をかけて練習すれば、私たちの神経回路を再形成し、外界の経験の仕方を変えることができる。例えば、マインドフルネスによって、脳の扁桃体(恐怖と逃走の反応を司る)が縮小し、前頭前皮質の灰白質が増える。たいていの人は知識に溺れているので、とにかく実践あるのみ。

 

 

  • 新年に決めた目標を貫徹できる人は、全体の8%にも満たない。その理由としては、取るべき行動が具体的でない、すぐに劇的な変化を求める、やる気を失う、障害を予測しない、説明責任を果たさない、などがある。

    このような状況を好転させるには、まずは「自分がその行動を目標にした理由」を明確にし、ゴールに向かうすべての行動を5分以内の小さなものに分割する。次に、その新しい目標を、すでに毎日やっていることに継ぎ足す。忙しい生活に新しいことを加えるのではなく、既存のルーチンを再構築するのが理想的である。

    そして3つめに、説明責任を果たすシステムを構築する(失敗したら友人に報告するとか)。さらに良いのは、友人や家族、同僚を巻き込んで、一緒に脳の配線変更トレーニングをすることである。

 

 

  • 脳の再配線に欠かせない9つの要素の中で、もっとも重要なのは「自己認識」である。自己認識は、他の8つの要素の力を引き出す前提となる能力である。

    自己認識は、内面を見つめることから始め、自分の好きなこと、得意なことと、世界が必要としていること、喜んでお金を払ってくれることなどを自分の内面で統合する形で行われることが多い。

    この能力がないと、自分の人生における感謝すべき存在に気づけないし、過去、未来、現在のどこに注意を向けるかをマインドフルネスに意識できないし、自分の考え方が怒りや恐怖を生み出している事実に気づくことができない。

 

 

  • どんな人でも、親や教師、模範となる人たちから学んだこと、経験したことなど、私たちが育った広い文化的背景によって自己が形作られている。そのため、自己認識のトレーニングは、本当の自分を理解し、自分を縛っている恐れを乗り越える助けとなる。

    自分の不安と恐怖を刺激するトリガーやストレス要因などに気づくことで、心の中にスペースを作り、ネガティブな感情に駆られることなく意識的な反応を選べるようになる。そうすることで、私たちの脳は再配線されていく。

 

 

  • 人生において、唯一不変なものは「変化」であり、どんなに綿密な計画を立てても、絶え間ない変化によって妨げられる。しかし、「自分はどのような人間か?」「どのように生きれば良いのか?」を考えれば、脳の不適応に巻き込まれずに、自分にとって有益な行動をとり続けることが可能となる。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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