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【質問】自分をちゃんと知るにはどうすればいいんですか?

 


こんなご質問をいただきました。

 

科学的な適職」で、鈴木さんは、自分のことは自分が一番よくわからないと言ってます。自分で自分はわからないから、自分を掘り下げないと適職が見つからないというお話だと思います。

 

ただ、自分では自分で自分がわからない感じがよくわかりません(自分が多くてすみません)。そのせいで、自分を分析しようという気持ちもわきません。あと、自分を分析するための簡単な方法はないでしょうか?こんな私に、アドバイスをください。

 

ということで、「自分で自分が一番よくわからない問題」についてです。これは確かにわかる話で、「自分がわからないことをわかる」ってのはめちゃくちゃ難しいですからね。目の端の盲点はつねにそこにあるのに、普段はまったく気づけないのと同じで。

 

 

で、そもそもの話でいうと、「自分で自分が一番よくわからない」ってのはかなり実証されてる話で、最も有名なのはテンプル大学などのチームが行ったメタ分析でしょう(R)。これは一般的な職場で働く数千人を対象とした16の研究をまとめたもので、

 

  • 「自分で認識する自分の性格と、そこから予想される仕事のパフォーマンス」と「他人が認識する自分の性格と、そこから予想される仕事のパフォーマンス」にはどのような違いがあるの?

 

ってところをまとめてます。もうちょいくわしく言うと、たとえばあなたがこの実験の参加者だったとすると、

 

  1. まずは、あなたが「私の性格はどれだけ安定していて、信頼でき、友好的で、外向的で、好奇心が強いだろう?」と考えてみたうえで、そこから「私の性格のおかげで仕事のパフォーマンスはどうなるだろう?」ってところをチェックしてみる。

  2. 次に、あなたの同僚や友人に「私の性格はどうだと思います?」「私の仕事のパフォーマンスどう思います?」と尋ねてみる。

 

みたいな感じっすね。こうやって、自分の認識と他人の認識との違いをチェックしてみるわけです。

 

 

でもって、それでどんな結果が出たのかと申しますと、

 

  • 性格と仕事のパフォーマンスを認識する能力は、本人よりも同僚の方が2倍以上も優れている

 

だったそうです。他人のほうが自分のことを2倍以上も正しく認識できるってことでして、こりゃあすごいもんですな。

 

 

さて、この研究をふまえれば、「簡単に自己分析を行う方法」もすぐにわかるかと思います。すなわち、

 

  • 他人に「自分の性格とか仕事ぶりってどう思う?」と尋ねるのが一番ラク!

 

ってことです。同僚のほうが2倍も正確なら、尋ねてみない手はないですからね。

 

 

ってことで、これが今回のご質問のお答えになりますが、「他人からフィードバックをもらって自己分析を深める」ってやり方には、ちょっとしたニュアンスがありますんで、ついでにそのへんも押さえておきましょう。

 

 

具体的に参照するのは、心理学者のシミン・ヴァジール先生による有名な研究(R)で、これで何を調べたのかと言いますと、

 

  • 自分で自分を理解するのが難しいポイントと、自分で自分を理解するのが簡単なポイントは違うのか?

 

ってところです。いくら「自分で自分はわからない」と言っても、そこにはニュアンスの違いがあるんじゃないの?みたいな疑問ですね。

 

 

そこで、ヴァジール先生は、数百人の学生を対象に、だいたいこんな実験をしてます。

 

  1. みんなに、各自の自己評価と友人評価を尋ねる(40項目のパーソナリティ・インベントリを使用)

  2. その後、初対面の参加者で3人から5人の新しいグループを作り、しばらく自由に会話して中を深めてもらう

  3. ある程度の会話をしたら、相手の性格や知性、創造性などをどう思ったかをお互いに評価する

 

というわけで、自己評価と他者評価のずれを何度もチェックしてみたところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 基本、多くの人は「自分の感情が安定してるかどうか」についてはわりと正しく判断できる。「いまの自分がどれぐらい不安そうに見えるか?」や「自分の話し方がどれぐらい不安そうに聞こえるか?」を判断するときなどは、他者より自分のほうが優れていた。
  • 「自己主張の強さ」については、自己判断よりも友人の判断のほうが優れていた(それどころか、8分前に会ったばかりの他人も、自分より正しい判断ができた)。
  • また、「IQの高さ」や「創造性の高さ」を予測しようとする際にも、自己評価より他者評価のほうが優れていた。

 

で、この結果を見て、個人的にどう思ったのかと言いますと、

 

  • 私たちは自分の感情や恐怖を隠したりごまかしたりすることがうまいので、本心ではビビりまくっていても、友人や知人は必ずしも正しく読み取れるわけではなさそう。

 

  • 「知性」や「創造性」などは、コミュニケーションのなかで自然とにじみ出るものなので外部からも判断しやすく、そのおかげで自己判断はよりも他者判断のほうが正確になるのかも。

 

  • どうやら、自分について望ましい部分や望ましくない部分を評価する際に、他者の評価のほうが正しくなる傾向があるっぽいなー。

 

って感じです。まぁ誰でも自分のことは「優れている!」と思いたいので、社会的に望ましいとされる側面について判断がゆがむのはしょうがないところでしょう。

 

 

さて、以上をふまえて、ざっくりまとめると、

 

  • 人間の自己評価はエラーが多いが、私たちはそれを「正しいはずだ!」と思い込みやすい。ゆえに、自己評価のエラーに対しては頭すら回らないので、基本「自己評価は間違っているはずだ」という態度で臨むぐらいがちょうどいい

 

  • 自分のことを本当に理解したいなら、他人からフィードバックをもらうのが一番。できれば、他人からのフィードバックは文章化して、目に見える形にしておいたほうが良い(定期的にフィードバックを見直さないと、またすぐ自己評価にもどっちゃうので)

 

  • できれば、フィードバックのソースは大量に容易しておいたほうがいい。研究では、友人1人から自分の知性や創造性を判断してもらうよりも、友人4人から判断してもらったほうが精度はかなり高くなるとのこと。

 

みたいになります。まー、自己分析の方法ってのはいろいろあって、自分のライフストーリーを書き出してみたり、複数のテストで自分のIQや性格を判断したりとかあるわけですけど、なんだかんだで「最低でも4人の友人からフィードバックをもらう!そして、そのフィードバックに『俺はそうは思わない!』とか反論しない!(たいていは友人の言葉のほうが正しいので)。もらったフィードバックはメモに書いとく!」ってやり方が一番手軽で精度が高いような気がしております。ひとことで言えば、「自分探しは他人から」ってことですな。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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