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今週末の小ネタ:フィトケミカルでメンタル改善? パフォーマンスを上げたいなら卓越主義? アジア人、やっぱビタミンDのサプリを使ったほうがいい?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。 

  

 

 

フィトケミカルで体内時計が整うし、メンタルヘルスも改善するし

フィトケミカルが体に良い!というのは「不老長寿メソッド」でも書いた話。いわゆる植物に入っている化合物で、アンチエイジングに欠かせない働きをしております。

 

 

でもって、新しい横断研究(R)は、「フィトケミカルが体内時計を調整してメンタルの改善に役立つのでは?」って話になっておりました。もともと良い食事が健全なメンタルに欠かせないのは常識ですけど、ここにはフィトケミカルがかかわっている可能性も昔から指摘されてきたんですよ。

 


この横断研究は、過体重および肥満のイラン人成人女性124人(平均年齢35歳、平均BMI30)を対象としたもので、

 

  1. 参加者を、フィトケミカルの摂取量に基づいて三分位に分ける
  2. ついでに、みんなのメンタルヘルスをチェックする(Depression Anxiety Stress Scale-21を使用)
  3. さらに、みんなの概日リズムもチェックする(Morningness-Eveningness Questionnaireを使用)

 

といった流れで、フィトケミカルとメンタルの関係を分析したんだそうな。その後で、上記のデータから、ライフスタイルや年齢、身体活動などの変数を調整したところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • フィトケミカルをよく食べている人ほど、抑うつおよび朝型(午前中の覚醒度および生産性のピーク)と関連があった(ただし粗調整なしのモデルにおいてのみ)。フィトケミカルと不安やストレスとの関連はみられなかった。

 

  • フィトケミカルの摂取量が低い参加者は、高い参加者よりも摂取カロリがー1,000kalも多く、マグネシウム、カリウム、β-カロチン、といった微量栄養素の消費量も少なかった。

 

ということで、やはりフィトケミカルの摂取量が多い人ほど体内時計が健全で、そのせいでメンタルヘルスも健全なのかも?ってところですね。もちろん、このデータはほとんどが自己申告だし、基礎となるメカニズムも明らかじゃないんで、「慎重に解釈してくださいねー」としか言いようがないんですが、あらためてフィトケミカルの可能性があきらかになったなーってとこですね。

 

 

 

ホントにパフォーマンスを上げたいなら完璧主義より卓越主義だ!

完璧主義はメンタルに悪い!というのはよく言われる話です。つねに完璧を目指しまくってたら脳が疲れちゃうのは当然で、それが続けばメンタルを止むのは理解しやすいところっすね。

 

 

で、新しい研究(R)もまた完璧主義の話で、まず結論から言っちゃうと「クリエイティビティを高めるには完璧主義より卓越主義だ!」みたいになります。卓越主義ってのは「excellencism」を訳したもので、まだ定訳がないので、とりあえず卓越主義としておきました。

 

 

卓越主義の考え方がどんなもんかと言いますと、

 

  • 完璧主義=つねに完璧を求め、自分に対して強烈に高い基準を設定し、自分の行動に対して非常に批判的な傾向
  • 卓越主義=自分に対して強烈に高い基準を設定し、優秀さを目指して努力する傾向

 

みたいになります。どちらも成果へのハードルが高いところは同じなんだけど、完璧主義が自己批判が強いのに対して、卓越主義は別に完璧を求めるわけではなく、良い状態を目指して努力できればほぼ満足する感じっすね。

 

 

研究チームいわく、

 

卓越主義では、優秀者に到達することでほぼ満足するのに対し、完璧主義では卓越性のさらに上に到達して初めて満足する。そのため、卓越主義においては「とても良い」「有能」「成し遂げた」「上出来」「適切」 などの言葉が典型的な表現として使われる。

 

とのこと。卓越主義は「十分によい」状態を目指し、その過程に満足する状態と言えますかね。

 

 

そこで、オタワ大学などの研究チームは、カナダの大学生280人にアンケートに答えてもらい、拡散的思考(クリエイティビティの指標)を測定。みんながどれぐらい良いアイデアを思いつく能力があるかを調べたうえで、さらにみんなが完璧主義か、それとも卓越主義かどうかを調べたんだそうな。

 

 

それで、どんな傾向が見られたかと言いますと、

 

  • 卓越主義の学生ほど学業成績が良く、創造性テストの課題に対する解答数が多く、より独創的な解答をしていた
  • 一方、完璧主義の学生ほど、創造性テストの回答数が少なく、独創的な回答も少なかった
  • さらに、卓越主義の学生は、完璧主義の学生と比べて、どんな体験でも受け入れる能力で高い得点を獲得した

 

って感じだったそうです。完璧主義がクリエイティビティを下げちゃうのに対して、卓越主義は良いアイデアを生み出す方向に働くわけっすね。どっちも高い基準を設定してるとこは同じながら、創造性については大きな違いがあるんですなぁ。

 

 

では、なんで完璧主義でクリエイティビティが下がるのかと言いますと、

 

  • 完璧主義者は迅速かつ完璧な解決策を見出そうとするあまり、従来の戦略を重視し、新しいものや不確実なものを避けるようになりがちだから
  • 完璧主義者は自分のパフォーマンスを過度に分析するため、創造的な脳の使い方ができなくなっちゃうから

 

といったあたりが指摘されておりました。分析や論理思考がクリエイティビティと食い合わせが悪いことは前から指摘されてたとおりですけど、ここでも似たような現象が見られたみたいですね。

 

 

研究チームいわく、

 

完璧さの制約を緩和するためには、「いつも完璧でなくても大丈夫」と思えるように、自分の物語を変える必要がらう。そのため、卓越主義は、完璧主義に代わる適切な選択肢となり得る。

 

とのこと。確かに、完璧を目指しても実りは少なそうなんで、卓越ぐらいを心がけておくのがよさそうっすね(そのサジ加減がムズいんだけど)。

 

 

 

アジア人、やっぱビタミンDのサプリを使ったほうがいい説

毎度おなじみ、ビタミンDにかんする系統的レビュー(R)が出ておりました。これがどんな話かと言いますと、

 

  • 膚の色が濃いアジア人は、ビタミンD3サプリを飲んだほうがいいかも?

 

みたいな内容です。肌の色が濃い人ほど太陽光からビタミンDを作りづらいのは有名ですけど、その点で白人に比べてアジア人は不利なんじゃないかなーという。

 

 

ってことで、この系統的レビューには、アジア人または黒人の参加者を対象にしたテストを集め、血中のビタミンDレベルについて調べた8件のランダム化対照試験を分析。データの内容は、アフリカ系アメリカ人(2試験)、インド人(1試験)、バングラデシュ人(1試験)、パキスタン人(1試験)、日本人(1試験)、南アジア人(1試験)って感じになってしまして、日本も対象になっております。

 

 

でもって、研究チームがどんなことを推奨しているのかと言いますと、

 

  • 皮膚の色素が高いと日光の吸収が妨げられ、体内での天然ビタミンD産生に影響を及ぼす
  • そのため、皮膚の色が濃い人はビタミンD3を補給したほうがいいっぽい
  • 現在の文献によると、黒人またはアジア人の場合、1日7,000~10,000IUの摂取が適切である可能性がある(COVID-19の有害な転帰のリスクを減らすために)


みたいになります。まぁ黒人およびアジア人の集団に限定したとはいえ、幅広い参加者を分析してるんで、ここで使われたデータで考慮されなかった差異がある可能性もありますんで、そこはご注意ください(公衆衛生、医療へのアクセス、食物/栄養環境とか)。

 

 

とはいえ、やっぱビタミンDは重要だなーといういつもの結論でどうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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