今週の小ネタ:「マッチングアプリは見た目が9割、脳の老化予防に会話、ポルノの意外なデメリット
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
マッチングアプリは見た目が9割
「短期の恋愛では圧倒的にルックスが大事!」ってのはよく聞く話であります。長期的な関係だと見た目の重要性は下がるんですが、マッチングアプリみたいに瞬間の印象が物を言うフィールドでは、やはり見た目が良い者が絶対の強者になるみたいなんですな。
で、新しい研究(R)もマッチングアプリにおけるルックスの重要性を扱ってまして、まず結論から申し上げますと、
- マッチングアプリで最も重要なのは「見た目」であり、それ以外の要素(知性、職業、身長など)は、見た目の20分の1の影響力しかない
みたいになります。頭が良い人や背が高い人がモテるってのも間違いないんだけど、そこらへんよりも絶対的に見た目は重要なんだ、と。うーん、なるほど。
この研究がどんなものだったかと言いますと、ドイツに住む18〜35歳の男女445名を対象に、みんなにマッチングアプリのスワイプ画面を12パターンほど見るように指示。各画面には3つのプロフィールが表示されていて、参加者はその中から1人を選ぶかスキップしてもらったらしい。
このプロフィール情報には、顔写真(上半身)、身長、職業、IQスコア、短い自己紹介文などがつけられ、それぞれが「相手がどれだけ自分に似ているか(見た目・身長・知性)」も計測できるようになってたらしい。このような設計により、見た目・中身・類似性といった要素が、どれくらいマッチングに影響するかを正確に測れるようになっているわけですな。よくある「アンケート調査」じゃなくて、実際の“スワイプ行動”を分析しているところが、過去の類似研究よりもすばらしいポイントであります。
さて、気になる結果ですが、だいたいこんな感じです。
- 見た目の魅力を「1段階」上げただけで、マッチされる確率が約20%もアップした
- 一方で、その他のスペックについては、結果は以下のような感じだった。
- 知性のアップ → +2%
- 自己紹介文の魅力 → +2%
- 身長や職業 → ほぼ誤差レベル
要するに、他のすべてのモテ要素を合わせても、見た目1つのインパクトにはまったく敵わないってことですな。すげー。
また、ここでは「男性と女性に差はない!」って結果が出てるのも面白いところです。これまでの進化心理学では、
- 男性は見た目を重視する
- 女性は経済力や知性を重視する
みたいな説が根強く語られてきたんだけど、今回の実験ではその傾向がまったく見られず、男女ともに圧倒的に見た目重視だったらしい。短期の恋愛市場はおそろしいですなぁ……。
さらに、研究チームは、「みんな自分と似た人を好きになる」って心理現象(類似性選好)についても分析が行われてまして、こんな結果が出ております。
- みんな見た目・身長・知性が自分と似ている人を、“やや”選びやすかった
やはり類似性選考は実在していたものの、その影響は“見た目の魅力”の前では誤差レベルだったらしい。まあ、この問題については、そもそも「自分の知性や見た目は平均よりちょっと上だ!」みたいに思い込んでる人が多いので、自己評価をベースにした類似性選考ってのは計測が難しい気もしますが。
ってことで、この研究から教訓を得るならば、「アプリを使うなら、とにかく写真にこだわれ!」という実に常識的なものになるでしょうな。マッチングアプリの世界では“見た目が9割”っぽいので、プロフィール文に凝るよりも写真にリソースを投入したほうが実りが多そうであります。
ちなみに、ここで研究チームは「マッチングアプリでは他人に選んでもらった写真を使うと良い」とすすめてまして、これも実用的なアドバイスでよろしいですな。友人に「どの写真が一番いい?」と聞いてみるだけでも、マッチ率は変わってくるかもしれませんので、こちらもお試しください。
頭をよくしたいならとにかく日常会話だ!
50歳を目前に、「名前が出てこない……」なんてことが増えてきた昨今であります。これはもう老化の宿命なのかなーと思ってるわけですが、新しい研究(R)では、
- 脳の働きをキープしたいならとにかくしゃべれ!
って結論になってて、ずっと引きこもって原稿を書いてる私は、さらにがっかりしたわけです(笑。
これはチューリッヒ大学の研究で、「高齢者の脳と社会的交流の関係」に注目したもの。友だちとよく会う人は認知症になりにくいと昔からよく言われてたんですが、この話をより正確に測る方法はないか? ってとこから研究を進めたんですな。
というのも、従来の研究では「週に何回誰かと話しましたか?」というアンケートでコミュニケーションを測ることが多かったんですが、これだと記憶違いや自己申告バイアスが入るので、なかなか正確なデータが取れなかったんですよ。そこで研究チームは、65歳以上の男女83名を集めてボタン型のレコーダーを胸元に装着してもらい、毎日18分おきに50秒間の音声を録音したんだそうな。この状態を4週間続けてもらい、合計で数千回分の“日常の声”を収集してまして、「実際にどれだけしゃべってるか?」を客観的に計測したわけです。わりと画期的なアプローチですね。
でもって、参加者にはこの記録とは別に、認知機能をチェックするテストも受けてもったところ、
- よくしゃべっている高齢者ほど、ワーキングメモリ・処理速度・意味的流暢性が高かった(意味的流暢性は、お題に沿って言葉をすばやく思い出す力のこと。「動物の名前を1分でできるだけたくさん挙げてください」みたいな感じ)
って相関が認められたらしい。とくに意味的流暢性と会話の量には強い関係があったそうで、やはり昔から言われてきたことは正しかったわけっすね。
まあ確かに“日常会話”をスムーズに行うためには、情報を一時的に保持&処理しながら即興的に言葉を組み立てなきゃいけないですからね。その点で、普段の会話ってのは意外なほど脳を使う行為だったりするんですよ。そう考えれば、会話が少ない人ほど脳が低下するのはよくわかる話です。
この研究を見ても、日常会話が「ワーキングメモリ」「処理速度」「意味的記憶」など、複数の認知機能を総動員する行為であるのは間違いなさそうなので、「最近あんまり話す機会がないな〜」という方は、意識して「ダベり時間」を確保してみるのが良さそうであります。ここで難しい話をする必要はまったくなくて、天気のこと、近所のスーパーの話、ドラマの感想、なんでもOKですんで。
エロ動画の悪影響とか
「エロ動画で恋人との仲が壊れるのでは?」って研究(R)が出ておりました。ポルノでよく興奮する人はその後2カ月で恋人との関係が悪化しやすいのではないか?って話でして、なかなか困った話になってますな。
研究の概要をざっくりまとめると、以下のような感じです。
- 18〜72歳のカップル経験者309名を集め、パートナーへの興奮度、ポルノへの興奮度、関係の質と安定性なんかを調べる
- 2カ月後にも同じ内容を調査して、すべての項目の変化を追跡する
これによって、エロ動画視聴とパートナーとの関係性を調べたら、結果はこんなふうになりました。
- パートナーに性的に興奮できる人ほど、関係の安定&満足度が高い
- ポルノで簡単に興奮する人ほど、2カ月後に関係が不安定になり、性的な満足度も下がっていた
ってことで、かなり明確なコントラストが出てますね。これだと直接的な因果関係は断定できないんだけど、エロ動画が対人関係によくない可能性は大きそうですね。
その原因はいくつも考えられまして、
- ポルノは視覚的な刺激が強いので短時間でドーパミンがドバドバ出てしまい、そのぶんリアルなパートナーとの関係が物足りなくなる。
- ポルノ視聴は自分のペースで完結できるので、これに慣れすぎると「相手に合わせる」「感情を共有する」といった要素が面倒に感じられてしまう。
- 性的興奮は「相手に関心を向け、関係を深めたい」と思わせるモチベーションでもあるため、その源泉がパートナーではなくなることで関係維持のモチベも下がる。
みたいなメカニズムはありそうな気がするわけです。だからといって「ポルノ=即アウト」って話ではもちろんないものの、「どういう使い方をしているか?」ってのはモニタリングしてみる必要があるかもですな。もし「最近なんか冷めてきたな…」という兆しを感じている方は、“興奮の源泉”を見直してみるのが良いかもしれません。