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今週の小ネタ:たった5日間のジャンクフードで脳がダメージを受ける?コーヒーは「痩せ型の人」にしか効かない?クレアチンは女性の“むくみ”対策にも使える?

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

たった5日間のジャンクフードで脳がダメージを受ける?

たった5日間ジャンクフードを食べるだけでも脳にダメージが!」みたいなデータ(R)が出ておりました。これがどんな実験だったかと言いますと、

 

  • 被験者たちに、5日間にわたって、普段よりも1,100kcal多い超加工スナックを摂取してもらう

 

って感じになります。ここで参加者が食べた食事は、脂質70g+糖質100gのいわゆる「ジャンク飯」で、カロリー密度の高い食品が中心だったそうな。

 

その結果、参加者に何が起きたのかというと、

 

  • 脳のインスリン反応が乱れる(一部の部位では過敏化→1週間後には鈍化)
  • 報酬への反応が鈍くなる(快の感受性が低下)
  • 罰への反応が強くなる(ネガティブな刺激への感度が上昇)
  • 肝臓の脂肪量が急増する(体重に変化がないにもかかわらず)

 

というものだったらしい。つまり、体重が増えていなくても、脳と肝臓は確実に“ダメージ”を受けていたってことですな。

 

ここで言う“脳のインスリン感受性”ってのは、脳がインスリンにどう反応するか?を示す指標のことです。一般的に、インスリンは血糖値を下げるホルモンとして知られていますが、実は脳内にもインスリン受容体があり、空腹感や報酬感、記憶力などを調整する役割を持ってるんですよ。

 

とくに関与が大きいのが、以下の3つの領域であります。

 

  • 視床下部:空腹感のコントロールセンター
  • 線条体:報酬や快楽に関連する部位
  • 海馬:記憶の統合や学習を担う

 

これらの領域がインスリンに適切に反応していると、

 

  • 食べすぎを抑える
  • 食への過剰な報酬依存を防ぐ
  • 記憶や判断力の維持にも寄与する

 

といった“脳のセルフコントロール”が働んですが、今回の研究では5日間のジャンクフード摂取で海馬の感受性が鈍化し、報酬系もダウンしたというから、要するに「食べても満足できず、判断力も鈍る」ような脳になっちゃったってことですね。

 

興味深いのは、このような脳と肝臓の変化は、体重や血糖値などの変化としては現れなかったって点。つまり、見た目や体重で「問題なし」と安心していても、内側では静かに体が崩壊し始めてるんだってことっすね。これは怖いぜ……。

 

ただし、この研究によれば、食事を通常に戻して1週間ぐらい経った後は、被験者の脳のインスリン反応が元に戻りはじめたそうで、このダメージは回復の余地もあるってことになるんでしょう。いずれにせよ「ジャンクフードは、たった5日で脳を変える」かもしれないって話なので、今すぐ加工食品をゼロにせよとは言わないものの、「脳がジャンクフードでどう変わるのか?」を知っておくのは重要っすね。

 

 

 

コーヒーは「痩せ型の人」にしか効かない?

「コーヒーは健康にいい!」って主張、もはや聞き飽きたという方も多いかもしれませんが、新しい研究(R)では、徳島大学の研究チームが「コーヒーの代謝改善効果は、非肥満者にしか現れない可能性があるぞ!」とのこと。つまり、「誰がコーヒーを飲むか?」によって、健康効果の出方がまったく変わってくるって話ですな。

 

で、まずこの研究で大事なのが、アディポネクチンってホルモンであります。これは脂肪細胞から分泌されるホルモンの一種で、インスリンの感受性を高め、血糖値を安定させ、さらに動脈硬化を予防するという、いわば「代謝の守護神」的な働きをしているんですよ。近年の研究では、このアディポネクチンの血中濃度が高い人ほど、

 

  • 2型糖尿病のリスクが低い
  • 脂質異常や高血圧になりにくい
  • 心血管疾患の発症率も下がる

 

といった傾向があることがわかってきたんですね。でもって、近年は「コーヒーでアディポネクチンが増える!」と言われてまして、実際のところ、いくつかの疫学研究ではコーヒーとアディポネクチンの関係にポジティブな関連があることが報告されているんですよ。

 

ならば、コーヒーってのは、私たちの代謝に良い影響を与える健康飲料なのかと思ってしまうわけですが、徳島大学の先生方は、このあたりをがっつり調べてくれたわけです。具体的には、J-MICCに参加した606人を対象にした調査で、コーヒー摂取量と血清アディポネクチンの関係を解析し、参加者を「非肥満者」と「肥満者」に分けて」重回帰分析を行ったんだそうな。

 

すると、ここで興味深い結果が出ましして、

 

  • 太っていない人では、コーヒー摂取とアディポネクチン濃度に有意な正相関あり
  • 肥満者では、その相関がまったく見られない

 

みたいな感じだったんだそう。つまり、コーヒーによってアディポネクチンが上昇するかどうかは、体型の違いによって変わってくるってことですね。この差が生まれる原因はまだよくわからないんだけど、アディポネクチンってのは「脂肪細胞から分泌されるホルモン」なので、脂肪組織が多すぎるとホルモン分泌のバランスが崩れやすくなっちゃうのかもしれませんな。

 

じゃあ、太ってる人はコーヒーを飲んでも意味がないのか?と思いますが、これに対しては「まったく意味がないとは言えないけど、効果の出方が違う可能性がある」としか言いようがないですかねぇ。そもそも肥満という状態自体が、インスリン抵抗性や慢性炎症などの原因になるので、同じ刺激(=コーヒー)を与えても反応が鈍くなっちゃうのは当然かもですな。

 

こういう結果については、コーヒーや赤ワイン、ナッツ、魚油など、一般に“健康に良いとされる食品”にも言えるのかもですなぁ。これからは、自分の体質によって食習慣をチューニングしていく意識が大事になりそうっすね。

 

 

 

クレアチンは女性の“むくみ”対策にも使える?

「クレアチン」と言えば、ご存じ筋トレ好きに愛される。“筋肥大サプリ”っすね。もちろん私も日々飲んでいるわけですが、新しい研究(R)では、それ以上に“回復系サプリ”としても役立つよって側面が強調されておりました。

 

これは、慶應義塾大学の研究で、「運動で起きる筋肉のダメージ」に対して、クレアチンがどれだけ回復を助けるか?さらに、性別や年齢によってその効果が変わるのか?ってポイントを掘り下げた内容になります。

 

ここで調べられた筋肉のダメージ(運動誘発性筋損傷)ってのは、筋トレやスポーツなどで筋肉に負荷がかかることで発生する微細な損傷のこと。こいつが起きると、

 

  • 筋肉痛(特に遅れて出るやつ)
  • 関節の動かしづらさ
  • 筋硬直(こわばり)
  • 筋力の一時的な低下

 

といった現象がセットでやって来るんですよ。つまり、しっかり鍛えたくても「回復が追いつかず、質の高いトレーニングができない」という状態に陥ってしまうわけですね。

 

過去にも「クレアチンで筋肉のダメージが早まる」って報告はありましたが、今回はより実践的なデザインで、男女・年齢差まで考慮された内容になっているのが大きなポイントであります。具体的には、60人の男女(平均25〜26歳)を無作為に「クレアチン摂取群」と「プラセボ群」に分け、28日間サプリを飲んでもらったあと、筋損傷が起きやすい運動を実施。その後も5日間サプリを継続してもらい、筋肉の回復具合を比較しております。

 

その結果、クレアチンを飲んだ群には以下のようなメリットが確認されました。

 

  • 筋力の回復が早い(48時間後まで有意差あり)
  • 痛み・疲労の軽減(96時間後まで低下が持続)
  • 筋硬直も少ない(96時間後に有意差)

 

つまり、筋肉の「損傷からの立ち直り」が明らかに速かったということですね。データを見ていると、割と明確な違いが出ているようでして、よろしいですな。

 

さらに注目すべきは、女性での効果がより顕著だったという点でしょう。クレアチンを摂取していた女性は、

 

  • 上腕の腫れ(周囲長の増加)が少ない
  • 筋肉の硬直も軽い
  • 全身・細胞内の「水分量(むくみ)」が少ない

 

といった点で、男性よりも明確な差が見られたんだそうな。これは、クレアチンが「筋肉の炎症」や「毛細血管の透過性(むくみの原因)」を抑える働きがあることと、さらに女性ホルモンであるエストロゲンの抗炎症作用と相乗効果を起こしている可能性があると考えられております。

 

というわけで、この研究から得られるメッセージは明快でして、

 

  • クレアチンは筋力アップだけじゃなく、「筋肉のダメージ回復」にも効果的
  • 女性では「むくみ抑制」にもつながるかも

 

って感じですな。もちろん、クレアチンの効果は個人差があるものの、トレーニング直後にむくみやすい人や疲労回復が遅くて困っている人は、サプリメントを取り入れる価値がありそうですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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