なぜ人は恋愛に依存するのか?―心理学が明かす「恐怖型愛着」の正体
恋愛依存になる人の心理を深堀りしたぞ!って研究(R)がおもしろかったのでメモっておきましょう。これはイタリアの研究チームによる報告で、まずは恋愛依存の特徴を、以下のようにピックアップしておられます。
- 相手の愛情を常に確認したくなり、過剰に連絡を取ってしまう
- 自分に自信がなく、パートナーに「価値」を保証してもらいたくなる
- 相手から見捨てられることに極端な恐怖を感じる
- 一人になることへの耐性がめっちゃ低い
- 嫉妬深くなったり、束縛が激しくなったりする
- 恋愛がうまくいかないと、うつ状態や強い不安に陥る
こんな感じで、恋愛関係へ過剰にエモーショナルになっちゃう行動パターンを恋愛依存と呼んでるわけですな。場合によっては、相手と別れた後に強烈な「離脱症状」(不安、抑うつ、強迫的な行動など)が起きることもあるそうで、薬物依存やアルコール依存に近い特徴を持ってるんだそうな。すごいもんですねぇ。
この問題を掘り下げるために、研究チームは恋愛依存と愛着スタイルの関係に注目しております。「愛着スタイル」ってのは、このブログでも何度か取り上げてきたポイントで、私たちが人間関係の中でどのようにふるまうかを決める、いわば「コミュニケーションにおけるクセ」のようなもの。幼少期の親子関係などを通じて形成されると言われてまして、通常は以下の3つに分類されます。
- 安定型: 他人と自然に親しくなれ、離れていても不安を感じにくい。
- 不安型: 他人に対して強く依存し、拒絶や見捨てに対する過剰な恐怖がある。
- 回避型: 他人との距離を保ちたがり、感情の共有や親密さを避ける傾向。
この中だと私は回避型が強いタイプでして、そのせいでいろいろなチャンスを逃してまいりました。困ったもんですねぇ。
で、この研究では、上記の3つに加えて、新たな愛着スタイルをひとつ加えております。その名も「恐怖型」というもので、研究チームは「他人との親密さを望むものの、拒絶を恐れて近づけず、自分から距離を取ってしまう人っているよねー」と新たに想定したらしいんですな。恐怖型の特徴をいくつかピックアップしてみると、
- 関係が深くなるほど不安になる
- 親密さを求めるが、同時に拒絶や見捨てられることを極度に恐れる
- 相手を試すような行動や、無視・嫉妬・束縛といった不安定な行動になりやすい
- 「捨てられるくらいなら自分から終わらせた方がマシ」と感じやすい
みたいになるんだそうな。いかにも難儀な性質ですが、このメンタリティが恋愛依存を引き起こすのだと研究チームは考えたわけですな。
この研究は、いま恋愛関係にある332名の大学生(平均年齢23歳、80%が女性)を対象にしたもので、みんなの「恋愛依存の傾向」「愛着スタイル」「分離不安」「防衛機制」といった心理的特性をチェック。すると、思った通り、恐怖型と恋愛依存にははっきりした相関が見られたんだそうな。ここでわかった心理メカニズムがどんなものかといいますと、
- 恐怖型の愛着が強い →
- 「別れるかもしれない!」って不安が高まる →
- ネガティブなコミュニケーションを連発 →
- 恋愛依存に陥る!
みたいになってます。つまり、「捨てられたくない…でも近づくのが怖い…」という心の板挟みのせいで強い不安が起こり、それをなんとかしようとして“間違った方法”で自分を守ろうとした結果、恋愛依存が深まっちゃうわけですな。
でもって、ここで出てきた「間違った方法」ってのは、心のストレスから自分を守ろうとする無意識的な行動や思考のクセのこと。本来は悪いものじゃないんですが、使い方を間違えると、現実逃避や自己破壊的な行動に変わってしまうこともあるので注意が必要であります。恋愛依存と関連が強かった「間違った方法」には2つのタイプがありまして、
- 神経症系の間違った方法
- 打ち消し:「あんなこと言ったけど、プレゼントしたから帳消し!」的な行動
- 理想化:相手を過大評価し、「この人さえいれば私は幸せ」と思い込む
- 反動形成:「本当は好きなのに、つい冷たくしてしまう」ような態度
- 未熟系の間違った方法
- 投影:「相手が冷たいのは、自分が嫌われてるせいだ」と思い込む
- 受動攻撃:はっきり言わずに、無視や態度で不満を伝える
- 解離:現実のつらさから感情を切り離してしまう
- 身体化:ストレスが原因なのに、腹痛や頭痛として現れる
みたいな感じになります。これは恋愛依存とは関係なく、普通にコミュニケーションの問題を抱えた人にもよく見られるパターンですな。
なんとも困ったもんですが、研究チームによると、恐怖型の愛着スタイルはなかなか解決が難しいらしい。というのも、この愛着スタイルは、子どもの頃に「愛されたいけど、傷つくかもしれない」って経験を繰り返したせいで脳内に植え付けられるものなので、ちょっとやそっとの対策では症状が緩和しづらいみたいなんですな。
これはかなり難しい問題なんだけど、とりあえず上に挙げた「間違った方法」に気づくだけでも、だいぶマシはなるらしい。感情が揺れたときに、「今、自分はどんな行動をしてるか?」と振り返りつつ、「これは打ち消しをやってるのだ!」と考えてみるのが、対策の第一歩だってことですな。
研究チームいわく、「自分のクセや心の仕組みを理解し、うまくつき合っていくことができれば、依存ではなく成熟した愛情関係を築くことも可能だ」とのことなんで、お悩みの方はぜひトライしてみてくださいませ。どうぞよしなに。