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「熱意」の科学:前向きな行動を生む感情のメカニズムの話

 

熱意だ!熱意が大事なのだ!」ってデータ(R)がおもしろかったので、内容をチェックしておきましょう。

 


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これはライデン大学などの研究で、500人のイギリス人を対象に、熱意・喜び・希望の違いを分析したんだそうな。なんでこのような調査をしたのかと言いますと、心理学の世界では、「喜び(joy)」や「希望(hope)」といったポジティブな感情はよく研究されてきたんだけど、「熱意」はこれまであまり注目されてこなかったからです。この研究チームによると、「熱意」には独特な特徴がありまして、

 

  • 未来志向:熱意は、達成した結果に喜ぶのではなく、「これから何かを成し遂げよう」とする段階で生まれる感情。

  • エネルギッシュ:熱意を感じると、自然と行動したくなる。

  • 自己効力感の向上:「これならできる!」という感覚が高まる。

 

って感じで、他のポジティブ感情とはまた異なる方向性を持ってるんだよーって点が強調されておりました。たとえば、友人が「絵画のクラスに行ってみない?」と誘ってきたときに、自分が「ちょっと面白そう」と感じたなら、それが「熱意」だってことでしょうな。言ってみれば、熱意ってのは「まだ達成していない目標」に対して生まれる感情であり、ただの喜びや希望とは異なる特性を持つため、それゆえに独自の良い効果をもたらすのではないか?とチームは考えたわけです。

 

で、ここでどんな実験が行われたかと言いますと、

 

  1. 参加者に「あなたが熱意(喜び・希望)を感じた状況を説明してください。」と指示して、「熱意」「喜び」「希望」のいずれかの感情を体験した時のことを思い出す
  2. 参加者の回答を分析して、それぞれの感情にどんな特徴があるのかを調べる

 

みたいになってます。これによって「熱意」が持つ特徴を分析してみたんですな。

 

分析の結果、チームは「熱意」に次の5つの要素があることを指摘しておられます。

 

  • 目標の達成可能性を強く感じる:熱意は「これならやれそうだ!」と思える状況で生まれやすい。

  • すぐに行動を起こしたくなる:熱意は「待ってられない! すぐやりたい!」という衝動を生じさせる。

  • 未来への期待感が高まる:熱意は「この先、絶対に楽しいことが待っている!」というポジティブなビジョンを持たせる。

  • 社会的な関わりが増える:熱意は「このワクワクを誰かと共有したい!」という気持ちを生むので、コミュニケーションを促進しやすい。
  • 自己効力感を高める:熱意は「自分ならできる!」という感覚を強めてくれる。

 

この特徴を見ていると、熱意ってのは単なる「楽しい気分」じゃなくて、「前向きな行動を生み出す感情」だってことになるんでしょうな。

 

といっても、私のようなおっさんになると、「いやー、そう言われてもそんな簡単に熱意なんて湧かないよ……」って気分になるのも事実であります。歳を取るとどうしても現実的な責任やストレス、失敗のリスクなんかが頭をよぎっちゃうもんですからね。

 

ただし、このデータを参考にすると、以下のポイントを守れば「熱意」を呼び起こせそうな気がしております。

 

  1. 物事の「解釈」を変えるとよさそう:感情は「状況」そのものではなく「状況の解釈」によって決まるので、リアプレイザルと同じ考え方で「ものの見方」を変えてやるとよさそう。例えば、自分が新しいプロジェクトを任された時に、「これは大変そうだな…」と思うとやる気が削がれちゃうんで、「これは自分のスキルを伸ばすチャンスだ!」みたいに強引に考え直すやり方です。まあ実際にやると大変なんだけど、無理やりにでも「楽しそう」と考える習慣をつけるのは良いことでしょう。


  2. 熱意の四原則を使う:熱意は「行動を生み出す感情」なので、「実際に動く」ことが重要っぽい。研究チームによると「熱意」ってのは、以下のような行動で引き起こされることが多いみたいなんですよ。

    ・目標に向かって動く:「やりたい!」と思ったら、とにかく始めてみる。
    ・リスクを取る:「ちょっと怖いな……」と思うとこに熱意が生まれやすい。
    ・人と共有する:「今こんなことが楽しくて!」と周囲に話すと、熱意がさらに高まる。
    ・目標を「達成可能なレベル」に設定する:目標があまりに難しいと熱意は生まれないので、「自分ならできそうだ」と思えるレベルで設定するのが重要。

    ということで、熱意を出したいと思ったら、ちょっと怖い行動にすぐ手をつけ、それを人に話してみるのがよさげ。たとえば、「英会話を始めたい」と思ったら、すぐに無料体験レッスンを予約しちゃって、「英語クラスに行ったけど緊張したー」みたいに友人へ話かけてみるとよさそうっすね。

 

こうして見ると、熱意の高め方ってのは、過去にこのブログで報告してきた「モチベーションの高め方」と似た感じになりますね(どっちも同じような感情を扱ってるので、当然といえば当然ですが)。言われてみると、自分でも「ちょっとでも熱意を感じた瞬間に動く」 ってのは実践してないので、これは心がけてみるか……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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