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根に持つ人の共通点と対処法:「スルー力」を鍛える記憶トレーニング

 
 

「あのときの一言、絶対に忘れない!」

「いつか見返してやる!」

 

みたいなタイプの人はよくおりましょう。誰かにされたひどい仕打ちがいつまでも心の中から消えない……って感じの人のことで、いわゆる「根に持つタイプ」ですな。

 

まあ、こうした“根に持つ”心理ってのはごく自然な感情でして、理不尽な仕打ちを受けたら怒りが湧くのは当然だし、怒りが強くなれば「仕返ししたい」という気持ちが出てくるのも普通でしょう。しかし一方で、「なんであの人、あんなに根に持つの?」「よくそこまで怒りが続くな……」というレベルで、長期的に復讐モードに入る人もいまして、それで人生の質が下がってしまう人もいますよね。

 

いったい、この違いはどこから来るのか?ってことで、最新の研究(R)では“根に持つ人”と“スルーできる人”の違いは、記憶の処理の仕方にあるって結論になってて面白かったです。

 

 

“スルーする力”を決めるのは、記憶の扱い方だった

これはデューク大学などのチームによる実験で、彼らいわく「スルーできるかどうか?」とは単なる性格の問題ではなく、記憶の処理プロセスによって支えられている可能性があるというんですな。具体的には2つのプロセスが関わっていると考えられてまして、

 

  1. エピソード記憶のフェーディング:出来事の細かい状況やディテールが徐々にあいまいになっていく働き。そのおかげで、たとえば「どこで言われたか」や「誰が周りにいたか」などが思い出しづらくなる。

  2. 感情記憶のフェーディング:出来事そのものは覚えていても、感じた怒りや悲しみが弱まる働き。そのおかげで自然に認知の再評価(リアプレイザル)が発生し、「あの人にも事情があったのかも」などと意味づけが変わっていく。

 

ということで、「スルーする力」がある人は、たんに出来事を忘れるのが上手いってのもあるんだけど、これに加えて起きたことの再解釈が上手く、これが“感情の強さ”を薄めていくってことなんですね。

 

で、研究チームは、複数の実験を通じてこの仮説を検証しまして、まずは参加者(平均30代後半)に過去10年間の“誰かに傷つけられた出来事”を思い出してもらい、それぞれの詳細を4~6文で書かせたんだそうな。そのうえで、

 

  • 「その出来事の視覚的なディテールをどれくらい思い出せるか?」
  • 「当時の感情はどれくらい強かったか?」
  • 「その記憶の全体的な印象はポジティブかネガティブか?」

 

などの質問に答えてもらったとのこと(MCQという尺度を使用)。これをもとに、自分を傷つけた相手を「許したグループ」と「許さなかったグループ」に分けてみたところ、「許したグループ」のほうが、

 

  • 出来事の詳細をちゃんと覚えている
  • しかし、感情的な反応は明らかに穏やかだった

 

って傾向が確認されたんですね。つまり、嫌なことをスルーできる人と言うのは、「記憶の内容」はちゃんと頭に残っているんだけど、「怒りの熱量」は減っているという面白い状態になっているわけです。ちょっと意外な結果ですが、これはまさにリアプレイザルが起きていることを示す良い証拠と言えるでしょう。

 

面白いのは、第2の実験で参加者を「加害者役」にしたときも、同じような傾向が見られた点です。どういう実験だったかと言うと、

 

  1. 参加者に「自分が誰かを傷つけたこと」を思い出してもらう
  2. そのうえで、相手が自分を許してくれたかどうかを思い出す

 

みたいになります。結果、やはり被害者が許してくれた記憶のほうが、感情的な苦痛が少なかったんだそうな。要するに、加害者でも被害者でも、「許し」は記憶にまつわるネガティブな感情を軽減するという点で効果があるわけですな。

 

 

 

「スルーできない人」は、感情が薄まらない脳の持ち主?

では、逆に「傷つけられたことをずっと根に持ってスルーできない人」は何が違うのかってことですが、研究者たちは、「こうした人は、感情を再評価する能力が弱い可能性がある」と述べておられます。要するに、「あれにも事情があったのかも」と考え直す柔軟性がないってことっすね。

 

これは性格特性にも関係してまして、たとえば、

 

  • 共感性が低い
  • 敵意が強い(antagonism)

 

などがあると、感情のフェーディングが起こりにくくなると考えられております。特に、ナルシシズムが高い人は「侮辱された」と感じたときの怒りが長続きしやすい傾向があり、過去の侮辱を何年も引きずってしまいがちなんですよ。

 

ということで、この研究からわかるのは、「スルーする力」という行為は「優しい性格」「メンタルが強い」とか、そういう話の前に、実用的な感情調整スキルだってことですね。過去の記憶がもたらす怒りや痛みをコントロールするプロセスを、心理学では「感情調整型の記憶再構築」と呼ぶことがありますが、まさにそれを日常的にうまくできる人ほど、「復讐モード」に囚われずに済むってことですね。

 

 

 

実践ポイント:「スルーする力」を養うための記憶エクササイズ

最後に、この研究をふまえて日常で使える実践的なアプローチをまとめてみましょう。

 

  • 過去の嫌な出来事を紙に書き出してみる:書くことで感情と事実を切り離す作業が始まる。

 

  • 「あの人にも事情があったのかも?」と一度考えてみる:無理に納得しなくてOK。再評価の“きっかけ”が重要となる。

 

  • その出来事の「前後」の記憶にも注目する:「起きる前はどうだった?」「起きた後は何をした?」みたいに記憶の幅を広げることで、出来事の意味づけが変わることもある。

 

ここらへんはリアプレイザルの基本なので、「私にスルー力がない!」とお悩みの方は、一度実践してみたいかもしれませんね。基本的に「スルー力」ってのは“忘れること”ではなく、“感情を薄めること”だと覚えておくと、それだけでも役に立つかもしれません。

 


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