超加工食品でも太らない?高たんぱく食が食欲を抑える理由とは
「超加工食品で食欲が増す!」みたいな考え方があるわけです。これは、工業的に高度に加工された食品のことで、家庭の台所では作れないような成分や工程を含む食品のことを指してまして、だいたい以下のような特徴を持っております。
- 精製された糖・油・塩の多用
- 人工甘味料・着色料・香料・保存料などの添加物が多数含まれる
- 「味」「食感」「見た目」を強化するための加工をしている
- 即食性・便利さが強調されている(加熱済み、包装済みなど)
要はスナック菓子とかインスタント食品とかでして、こういう食品ばかり食べてると「なんか最近やたらお腹が空く気がする……」みたいな気分になっちゃうと言われてるんですな。一説には、超加工食品が食欲や代謝をバグらせてるんじゃないか?と考えられてまして、なかなか怖いもんでございます。
「超加工食品 × 高タンパク食」の人体実験
で、ここで気になるのが「たんぱく質で超加工食品の食欲アップ効果を減らせるの?」ってとこです。たんぱく質に食欲を減らす効果があるのは有名なので、この効果を活かせば超加工食品の弊害を多少は相殺できるんじゃないかとも考えられるんですよ。
そこで、新しい研究(R)では、18〜35歳の健康な男女21名を対象に、「高たんぱく質+超加工食品」の効果をチェックしております。具体的には、全員に代謝チャンバー(=24時間エネルギー消費が測れる部屋)に泊まり込んでもらい、以下の2パターンの食事をそれぞれ54時間ずつ食べてもらったんだそうな。
- 高タンパク・低炭水化物食: タンパク質が全体の30%で、 炭水化物が29%。食事の84%は超加工食品(ハイプロテインヨーグルトとかハイプロテインシリアルとか)
- 低タンパク・中炭水化物食: タンパク質が全体の13%で、炭水化物が46%。こちらも食事の84%は超加工食品(ピザとかパンとか)
どちらのパターンも脂質と食物繊維は両者でそろえてまして、どちらも「好きなだけ食べてね!」と指示したらしい。
「高タンパク食」の驚くべきパワー
さて、結果がどうなったかと言いますと、高タンパク食の圧勝でした。具体的には、高たんぱく食を食べた時は、
- 1日あたり196kcalも少なく食べた
- 1日あたり128kcalも多くエネルギーを消費した
って違いがあったらしいんですな。つまり、1日合計で約324kcalもの差が出たわけでして、週で換算すると約2,200kcalってことで、脂肪300gちょいに相当するエネルギー量の違いが出るわけっすね。どちらの食事パターンでも、同じような超加工食品を食べているにも関わらず、高たんぱく食にしただけでもある程度は「食べすぎ」が抑えられるってのは面白いですなぁ。
では、なぜ高タンパクだと「食べすぎ」を防げるのかってことですが、ここにはいくつかの要因が絡んでいるようでして、
- プロテイン・レバレッジ仮説:人間の体は、タンパク質の摂取量をもっとも厳密に調整しようとする性質があるという考え方。つまり、食事に含まれるタンパク質の割合が低いと、無意識に量を増やしてしまう(=カロリーオーバーする)というもの。事実、加工食品の普及と肥満の増加はリンクしており、しかも総タンパク質摂取量はあまり変わっていないというデータもある。
- ホルモンの変化:高タンパク食では、食後のホルモン反応も変わってくる。具体的には、グレリン(空腹ホルモン)は低下し、PYY(満腹ホルモン)は上昇する傾向がある。この研究でも、朝食後のグレリンは低く、PYYは高かったとのことで、つまり「お腹いっぱい」と感じやすくなったのだと思われる。
- 食べるスピードが遅くなる:高タンパク食を食べると、自然と噛む回数が増えて、食べるのが遅くなることも判明している。これがまた重要で、「食べるスピードが遅い=満腹感が出やすい」というのは、いくつかの研究で確認されている事実でして、柔らかくてツルッと入るような加工食品ばかり食べていると、満腹感が追いつかずに食べすぎてしまうのだと思われる。
ってのがあるんだと思われるわけです。これらの合わせ技で、食欲をコントロールできるってことですね。
高タンパク食は「痩せやすくなる食事」でもある
もうひとつ重要なのは、高タンパク食は「食べるだけでエネルギーを使う」ってところです。これは「食事誘発性熱産生(DIT)」って現象のおかげで、それぞれの栄養素を摂取するごとに、
- 脂質:約0〜3%
- 炭水化物:約5〜10%
- タンパク質:約20〜30%
って感じで、カロリーが消費されるんですよね。つまり、100kcalのタンパク質を食べると約25kcalは消費されるってことで、このあたりも大きいでしょうね。今回の研究でも、睡眠中のエネルギー消費が1日67kcalほど高かったことがわかってまして、これもなかなかよろしいですな。
ただし、これは「タンパク質を増やせばOK!」って話ではなく、今回の研究では、高タンパクの食事をした時でも結局はカロリーを摂りすぎちゃってますからね(+18%のエネルギー超過)。つまり、タンパク質は確実に“マシ”にはなるけど、完全なバリアにはならないってことですね。
ということで、今回の研究から学べることはたくさんあるんですが、実践的には以下のポイントを押さえておくと良さそうです。
- 高タンパク食は「食べすぎ」を抑え、「消費」を増やす→ とくに、普段の食事が加工食品メインになっている人ほど、タンパク質の強化はかなり有効。
- でも、「タンパク質さえ摂ればOK」ではない→ 加工食品はそもそも食欲を狂わせる要素が多いため、できるだけ自然な形の食材(肉・魚・卵など)でタンパク質を摂るのがベター。
- ゆっくり、よく噛んで食べよう→ タンパク質の恩恵を活かすには、噛みごたえのあるものを選ぶ・時間をかけて食べることも大事。
というわけで、「最近、ついつい食べすぎちゃうな……」という方は、まず食事のタンパク質比率を見直してみるのがオススメです。どうぞよしなに。