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人生を変えたいなら「性格を変えろ!」「いや、性格を受け入れろ!」ってアドバイスはどっちが正しいのか問題


  

「もっとポジティブになれたらなぁ」とか「心配性をやめたいなぁ」とか、そんな風に思ったことがある人は少なくないでしょう。「自分の性格を改善できれば人生が変わるのでは……」みたいな考え方を持つのは、自然なことでありましょう。実際、従来の心理学では、「人は“理想の自分”と“現実の自分”にギャップを感じると、そこを埋めるために努力する。その過程で幸福度も上がる」みたいに言われてきましたしね。

 

が、その一方で、同じく心理学の世界には、「人は自分をそのまま受け入れたとき、はじめて変われる!」みたいな考え方もあるわけです。これは心理学のレジェンドであるカール・ロジャース先生の理論で、最近流行ってる「マインドフルネス」や「ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)」なんかも、基本はこの系譜に連なってますな。「問題を消そうとするな。問題があっても生きられる状態を作れ」みたいなスタンスですね。

 

では、実際にはどちらの考え方が正しいのかってことで、近ごろおもしろい研究(R)が出ておりました。これはスイスのチューリッヒ大学が行った研究で、まず結論から言っちゃうと、

 

自分を改善しようとしたり、自己を受け入れようとするのもいいけど、結局はひたすら自分を分析するのが大事なんじゃない?

 

みたいになります。上記の考え方のどちらが正しいのかってことよりも、自己を分析するほうが重要なんじゃないか、と。

 

この研究では、成人の被験者を対象に、3つのステップで以下のような実験を行っております。

 

  1. 「性格を変える vs. 自分を受け入れる」ことがメンタルヘルスにどう影響するかを学ぶ(例:「性格は努力によって変えられる」という考え方と、「性格はそのまま受け入れても幸福度は上がる」という考え方の違いを解説した資料を読む)

  2. 自分が望む変化(もしくは受容)について日記を書く(例:「自分はどんな性格を変えたいと思っているのか/あるいは、今の性格のどんな点を受け入れたいのか」を自由記述で書き出す)

  3. 週1回、そのテーマについて考えるよう促すメッセージを受け取る(例:「今週は、自分の心配性(あるいは完璧主義)が役立った場面をひとつ思い出してみましょう」といったリマインドを受け取る)

 

こんな感じで、「性格を変えようとするアプローチ」と「性格を受け入れようとするアプローチ」で、幸福度に違いが出るかどうかを調べたわけですね。

 

すると、その結果は面白いもんで、

 

  • 「変えたい派」と「受け入れたい派」の両方とも、ほぼ同じくらい幸福度が上昇した。
  • 「待機グループ(まだなんの介入もしてない人たち)」も、まだなにもしていないのに幸福度がちょっとずつ上がっていた。

 

みたいな感じだったそうな。「性格を変えるぞ!」と思って頑張ろうが、「性格を受け入れるぞ!」と思って頑張ろうが、実際の幸福度の上がり方は同じぐらいかもしれないわけっすね。結局、どっちの考え方でも幸福度は上がるんじゃないかってことですな。

 

さらには、「まだなんの介入もしてない人たち」まで幸福度がちょっと上がってるのも面白いところでして、この理由を簡単にまとめてみると、

 

  • 「自分の性格について考える研究に参加している」と考えるだけでも、私たちの中には何らかの変化が起きる

 

ってことになるんでしょう。つまりこの研究が示しているのは、「自分の性格についてじっくり考えるだけでも良い変化は起きる」ってことでして、いわゆる「ドードー効果」みたいなもんですな。

 

 

なので、この研究が教えてくれるポイントを雑にまとめてみると、

 

  • 性格を変えようと頑張るか、それとも性格を受け入れるかどうかは、どっちでもいい
  • 最も大事なのは「今の自分をちゃんと知ろうとすること」である

 

みたいになるかもしれません。「変わらなきゃダメだ」とか「自分を受け入れなきゃ」などと焦らなくても、「自分の心配性はどんな場面で役に立ってる?」「自分の完璧主義はどこまでが武器で、どこからがコスト?」みたいに思ってみるだけでも、良い変化を起こせるかも知れないってことですな。これは気楽で良いですなぁ。

 

そうなると、「じゃあ何をすればいいの?」ってのが気になりますが、まずは以下のような「思考のエクササイズ」を試してみるといいのかもしれません。

 

  1. 自分の“理想像”を明確にする(例:「どんな性格になりたいと思ってる? それって、誰の影響を受けてる?」を考える)
  2. 現在の自分を観察する(例:最近よく感じる感情は?不安?怒り?楽しさ? それに対して、どう反応している?)
  3. 上記のエクササイズを、1日1回、1週間だけでも続けてみる

 

こうした「自己観察」のプロセスは、認知行動療法の実践とも重なる部分があるため、おそらく実践すればなにがしかの効果を得られるのではないかと。

 

というわけで、「変われなくて苦しい」と感じたら、まずは「今の自分でも悪くない」と思ってみましょう。その上で、自己観察を進めてみると、いろいろと良い方向に向かうんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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