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不健康な人に健康になってもらうには、どんなアドバイスをすればいいのかを調べたメタ分析の話

   

 

健康のために「禁煙しましょう!」「もっと運動を!」「これを今すぐ始めなさい!」といったメッセージを、目にすることはよくあるでしょう。こういったアドバイスを聞いて「なるほど」と思う方もいるでしょうが、おそらく大半は「なんか押しつけがましいなぁ」と感じてしまうんじゃないでしょうか。私もそうです。

 

では、このような「強めの言い方」は実際に説得に役立つのかってことで、そのへんを調べたデータ(R)がおもしろかったんで内容をチェックしておきましょう。

 

これは、「効果がある健康アドバイスとはどのようなものか?」をテーマにした35の実験を精査したメタ分析で、合計で約1万人以上のデータを元にしており、かなり信頼できる内容になっているんじゃないかと。ここで検証したのは、「健康アドバイスに使われる『命令口調』や『強制的な言葉』は、本当に人を動かすのか?」って疑問でして、「タバコは最悪だ!」みたいな強い言い方によって、どこまで人は動くのかを調べたんですな。

 

で、その結果はどうだったかと言いますと、

 

  • 強い健康アドバイスは、説得どころか逆効果になりやすい!

 

って感じだったんだそうな。たとえば、「今すぐ禁煙しなさい!」と強く言われるほど、「うるさいな」「自分で決めるわ」と反発が起きて、かえってタバコを吸いたくなるってことですな。

 

このような現象が起きるのは「心理的リアクタンス理論」って考え方が原因でして、

 

  • 人は自分の自由を大事にしており、それが脅かされると防衛反応として反発する

 

というもの。たとえば、「タバコは絶対やめなさい」と言われた場合、実際に禁煙が進むケースは少なくて、たいていは「そんなに言われなくても……」「自分の自由でしょ」と思って、逆に吸いたくなることのほうが多いんだってことですね。

 

では、どんな言葉が反感を引き起こしやすいのか?ってことですけども、研究チームが細かく分析したところ、以下のような特徴があったんだそうな。

 

  • 「must(〜しなければならない)」「have to(〜すべきだ)」などの強制的な言い回し(例:「タバコはやめるべきだ!」)

  • 「絶対にダメ」「唯一の方法」などの絶対表現(例:「この方法しか成功しませんよ」)

  • 驚嘆符(!)を多用する強調表現(例:「今すぐ行動を起こせ!」)

  • 「選択肢がない」と明示する文章構造(例:「運動以外に健康になる方法はない」)

 

いずれも納得のラインナップって感じでして、「ああ、自分も『すべき』とか言われるとムッとするなぁ……」と思った方も多いのではないでしょうか。一方で「could(〜することもできます)」「consider(〜を考えてみてください)」といった“提案型”の表現は、リアクタンスをあまり引き起こさなかったとのこと。こちらも納得ですね。

 

でもって、研究チームは、このリアクタンスって反応が、

 

  • 感情的な怒り
  • 論理的な反論(カウンターアーギュメント)

 

という2つの組み合わせで起こるとも指摘しております。研究ではこの2つをまとめて「状態リアクタンス」と定義し、どちらが起きても説得効果が落ちることを明らかにしております。

 

当然ながら、リアクタンスが起きるとアドバイスの効果はガタ落ちしまして、

 

  • メッセージへの同意率が下がる
  • 実際に行動に移す意欲が低下する

 

といった傾向が明確に出ております。その効果量は「小〜中程度」だったので、命令口調が絶対NGってわけではないものの、なるべく避けた方が無難なのは間違いないっすね。

 

となると、「どうすれば人は動いてくれるのか?」ってのが気になりますが、研究チームが示唆していたのは、「相手の自由を尊重する言い方を選ぼう」ということであります。具体的には、

 

  • ナラティブ形式(ストーリー)を使う
  • ポジティブなフレーミング(利得の強調)を意識する
  • 行動の選択肢を提示する

 

といった方法が効果的ではないか?と指摘しておられます。たとえば、

 

「今すぐやめろ!」→ 「あなたのペースで構いませんが、今やめることで見た目が良くなるってメリットがあるよ」

「絶対に禁煙すべき!」→ 「もし禁煙を取り入れてみたら、体調がかなりラクになるかもしれないよ」

「運動しないとダメです」→ 「運動も一つの方法として試してみる価値はあるかもしれませんな」

 

「禁煙しかないぞ!」→「友人に30年間タバコを吸い続けていた人がいるんだけど、ある日、階段を上るだけで息切れするようになって、「このままだとまずいな」と思ったんだって。それから少しずつ本数を減らして、半年かけて禁煙に成功したんだよ。今では朝のウォーキングが日課になって、「息が吸えるってこんなに気持ちよかったんだ」と笑ってるね。」

 

って感じで、相手の選択肢を重んじる発言のほうが、人は「やってみようかな」と思いやすくなるわけですね。これは健康分野に限らず、人に何かを伝えるときには非常に重要なポイントでして、部下への指示、子どもへの声かけ、パートナーへのお願いごと……すべてに通じる考え方でしょうなぁ。皆さまもぜひお試しください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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