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クリエイティブな人は、なぜ勉強もできるのか?を調べた実験の話

 

クリエイティブな人は、なぜ勉強もできるのか?」って疑問を調べた研究(R)が面白かったので、内容をメモっておきましょう。

 

この研究を手がけたシモーネ・ルキーニ先生いわく、「創造性と学業成績が関連することは昔から知られていたが、なぜそうなるのかは分かってなかった」とのこと。もともと創造性が高い人ほど成績が良いって現象は確認されてたんだけど、そのメカニズムがどこにあるのかってとこは謎だったんだそうな。確かにクリエイティブな人は頭も良さそうみたいなイメージはありますな。

 

で、ここで研究チームがどんな実験をしたのかと言いますと、まず最初の実験では、大学生146人にこんな課題をやってもらってます。

 

  1. リトアニア語と英語の単語ペアを暗記してもらう
  2. その後すぐに記憶テストを行い、さらに24時間後に再テストをしてもらう
  3. それと同時に「連想テスト」を実施して、みんなの創造性もチェックする

 

「連想テスト」ってのは、なんらかの名詞を見せた上で、それと意味がつながる“動詞”を考えてもらう感じで行います。たとえば「ブーツ」って名詞を提示されたら、「履く」とか「蹴る」とか「旅する」みたいに、いろんな動詞を考えてもらうわけです。

 

でもって、この時に、意味の遠い動詞が自然に浮かぶほうが、「創造的だ」と判断されます。上記の例で言えば「履く」よりも「旅する」のほうが意味が遠いので、こちらのほうがクリエイティブだと考えられるわけですな。

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 遠い連想を作れる人ほど、単語をよく覚えていた!

 

って感じだったそうです。「犬と言えば猫が近いな…」みたいな近い連想じゃなく、「犬→警察→空港→飛行機だ!」みたいな遠い連想を、意味が通るように作れる能力が大事だってことですね。

 

しかもこの結果ってのは、「IQ(流動性知能・結晶性知能)」や「一般的な頭の良さ」といった能力を全部コントロールしても消えなかったんだそうな。つまり、「頭がいいから覚えられる」のではなく、「意味が遠いものを結びつけるのがうまいから覚えられる」かもしれないのではないか、と。

 

さらに、2つめの実験では、145人を対象に、さらに一段深掘りしております。ここで研究チームは、2種類の連想の効果を調べてまして、

 

  1. 自動的な連想:パッと浮かんだ、ありがちな連想。たとえば、「犬→猫→ペット」みたいな感じ。

  2. 目的志向の連想:「できるだけ創造的に考えろ」と指示された上での連想。たとえば、「犬→警察→ルール→社会秩序」みたいな感じ。

 

って感じで、どっちが学習の改善に効いたのかをチェックしたんですよ。ダラダラと思い浮かべるのと、目標を持って思い浮かべるのでは、どちらが重要なのかってことですな。

 

すると、ここで効いたのは「目的志向の連想」だけだったそうで、要するに「ただ思いついた連想」や「反射的なイメージ」ではダメで、「意識的に遠い意味をつなげにいくぞ!」と考えるタイプの思考が記憶を助けてたわけです。

 

ここで面白いのが、創造性テスト(文章・絵・性格特性)と学習成績の関係を分析してみたら、創造性が学習を助ける理由は、ほぼ全部が「連想思考」で説明できたところです。IQの影響を取り除くと、「創造性が学習アップにつながる」って経路は消えて、「創造性 → 連想思考 → 学習」というルートだけが残ったそうです。つまり、創造性そのものが効いてるのではなく、連想思考が本体ってことですな。

 

ということで、個人的にこの話は「良い勉強法」を考える上でかなり示唆的だと思ってまして、ポイントとしては、

 

  • ただ反復したり、そのまま覚えるのはNG!

 

んじゃなくて、

 

  • 「変な結びつけ」をあえて作って、意味の距離を広げにいこうぜ!

 

って感じになりましょう。たとえば、

 

  • 単語 × 個人的な体験
  • 概念 × 極端な比喩
  • 用語 × まったく別ジャンル

 

みたいに、「これとこれがつながったらおもろいな」ってのを意識して考えていくわけです。これによって、創造的思考のトレーニングになり、同時に記憶術にもなるのではないか、と。

 

なので、この考え方をもとに、詳しいトレーニング法を考えるのであれば、

 

  1. 覚えたい言葉・概念を1つ選ぶ
  2. 一番ありがちな連想をあえて書く
  3. その連想を禁止する
  4. 「じゃあ他に?」を最低3回繰り返す

 

みたいにやると良いトレーニングになっていいかもしれません。たとえば、「ミトコンドリアの働き」を覚えたい時に、「エネルギー工場」って連想は一番目に出てくるのでNGで、そこからさらに「発電所」→ 「停電すると都市が死ぬ」 → 「都市=人体」 → 「なぜ都市と似てる?」って感じで言語化を深めていく感じになりましょう。このトレーニングでは正しさは二の次で、自分にとって「自然なつながりで説明できるか」だけを基準にするといい感じっすね。

 

あるいは、別のやり方としては、

 

  1. 覚えたい内容を1つ選ぶ
  2. スポーツ、動物、ゲーム、恋愛、災害みたいに、無関係なジャンルをランダムに選ぶ
  3. 「覚えたい内容を、選んだジャンルで説明する!」と自分に言い聞かせる

 

みたいなトレーニングに有効かもしれません。たとえば、「記憶のメカニズム」を覚えたいのであれば、「これを筋トレで説明する!」みたいに考えて、

 

  • 記憶は「超回復」みたいなもの
  • 刺激(学習)→休息(睡眠)→定着が必要なとこが同じ
  • 毎日追い込むと壊れるから徹夜は逆効果

 

みたいにつなげていくと、記憶が構造ごと残りやすくなるんじゃないでしょうか。

 

まあ、この研究ってのは、語学学習だけの実験なので、数学や実技系スキルにも当てはまるかは謎ですけども、私としては、おそらくいろんなジャンルに使える考え方なんじゃないかなーと思っております。いずれにせよ、創造性が高い人は、遠い意味を結びつけるのが上手く、その能力が学習と記憶を直接サポートしているんだって知見は、覚えておいて損はないでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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