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人間の身体能力はいつピークを迎え、どう衰えていくのかを、47年かけて調べた研究の話

 
 

歳を取るのは避けられず、私も「心肺機能が落ちたなぁ」とか「筋肉が増えづらくなったかもなぁ」とか、日々実感しながら暮らしております。

 

まあ、こればかりはどうしようもないので受けるしかないんですが、そこで重要になってくるのが、

 

  • いつ自分の身体能力はピークを迎えるのか

  • 自分の身体能力は、どのぐらいのスピードで落ちていくのか

  • その下り坂に、どれぐらい“摩擦”をかけられるのか

 

みたいな情報であります。ここらへんを知っておけば、自分の身体能力の低下に応じて、トレーニングのやり方を柔軟に変えていくことができますからね。逆に、ここらへんの情報がないと、身体能力が下がってるにもかかわらず、若い頃と同じようなトレーニングしてオーバートレーニングになったりしかねませんからね。

 

では、人間の身体能力はどんな感じで低下していくのかってことで、今回は47年間も同じ人を追いかけ続けたという狂気の研究を参照(R)してみましょう。

 

これは1958年生まれのスウェーデン人427名を16歳から63歳まで追跡した縦断研究になってまして、同一人物を47年観察し続けたうえで、以下の3つを計測しております。

 

  • 有酸素能力(心肺フィットネス)
  • 筋持久力(ベンチプレスの回数)
  • 筋パワー(垂直跳び)

 

似たようなポイントを調べたものは過去にもあったものの、多くの加齢研究ってのは、若者や中年、高齢者をそれぞれ別人で比べる「横断研究」がメインだったので、このように同一人物を追い続けたデータはめっちゃ貴重ですね。

 

で、細かいところ省いて、結果をいくつかまとめてみましょう。まずはそれぞれの身体能力のピークから。

 

  • 筋力・持久力のピークは30代半ばにやってきて、あとは低下し続ける

  • パワー(瞬発力)のピークは20代後半にやってきて、あとは低下し続ける

 

ということで、基本的には30代を過ぎたあたりからは、じわじわと身体のパフォーマンスが下がっていくのかもしれません。実際、エリートのパワーリフターやウエイトリフターを調べた別研究でも、

 

パワーリフターのピーク:35歳前後

ウエイトリフターのピーク:26歳前後

 

って感じになってまして、一般人とだいたい一致しますね。

 

もちろん、「いや、俺は40代で自己ベスト更新してるぞ!」という方もいると思いますが、それはおそらく「スタートが遅かっただけ」だと考えられるでしょう。私も真面目に運動し始めたのは35歳からなので、もっと前から運動をやってればよかったなぁと思ってたりします。

 

でもって、この研究でもうひとつ面白いのが、身体能力の落ち方のスピードであります。こちらもざっくり傾向を見ておきましょう。

 

 

  • 40代〜50代:年間の低下率は1%未満で、正直なところほぼ誤差レベル

  • 60代以降:年間の低下率は2%以上で、これは体感でも「明確に衰えを感じる」レベル
  • 63歳時点では、ピークから30〜48%の能力低下が起きる

 

ということで、身体能力の低下スピードということで言えば、60代以降からが本番と言えるかもしれませんな。私もあと10年なので、今から備えておかねば……。

 

で、さらにここで重要なのが、60代の時点で身体能力の個人差が爆発的に広がるって点です。たとえば、有酸素能力のデータを見ていると、

 

  • 10代 → 60代で心肺機能の働きに25倍ものばらつきが出る

 

って傾向が見て取れるんですよ。つまり、「年を取ると、みんな一様に衰える」ってわけではなくて、「歳をとれば取るほど、生活習慣の差が、そのまま身体能力の差になりやすい」って現実が見えてくるわけですね。なので、高齢になればなるほど運動は大事。

 

もひとつざっくりまとめると、この研究でハッキリしてきたのは次の2点っすね。

 

  1. 若い頃に運動してた人は、ずっと得をする:16歳の時点で活動的だった人は、60代になっても全ての指標で一貫して高い数値を維持していた。しかも、「年齢との交互作用なし」なので、若い頃の貯金は、そのまま一生効くのだと思われる。


  2. ただし、途中から運動をはじめても、ちゃんと取り返せる:一方で朗報としては、運動をしてなかった人が、途中から運動を始めた場合は、「有酸素能力=+6〜7%」「筋持久力=+11%」「パワー=+4%」という改善率が見られている。とにかく、運動は今からでもいいから始めるしかない。

  3. パワーだけ、異様に落ちやすい:全指標の中で、いちばん落ち幅が大きかったのが筋パワーで、「男性:-41%」「女性:-48%」と言う結果だった。瞬発力ってのは、神経系の劣化や速筋の萎縮の影響をモロに受けるので、どうしても低下しやすいのだと思われる。そのため、高齢者ほどパワー系トレーニングが重要なのかもしれない。

 

ってことで、ここまでの話をまとめてみると、40代以降の運動で心がけるべきところは以下のようになるのかもしれません。

 

  • 筋トレのやり方は普通でOKで、歳をとったからと言って高齢者向け特殊プログラムみたいなものに手を出さなくてもよし。

  • ただし筋トレのボリュームは少し控えめでOKで、セット数は若い頃より減らすのが無難だと思われる

  • タンパク質はケチらないで、体重1kgあたり1日1.6〜2.2gを目指す

  • 身体の不具合は無視しないで、痛みが出たら、種目や可動域を調整

 

なんだかめっちゃ地味な結論になりましたが、まぁ歳をとっても地道にコツコツと、従来通りのトレーニングを続けていくしかないでしょうなぁ。さすがにここから身体を若返らせるのは無理ゲーでしょうが、少なくとも老化に伴う身体能力の低下スピードをゆっくりにはしてくれますんで。派手な若返り法はないものの、ちゃんとやれば、ちゃんと差がつくことがわかっただけでもいいかなってところです。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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