創造性は「天才の才能」とかじゃなくて、地味な訓練の積み重ねじゃない?みたいな研究の話
「創造力のスイッチが入る」みたいな表現がありますな。脳のどこかに「創造力を切り替えるためのセンター」みたいなものがあって、そこに電源が入るとアイデアが湧いてくるようなイメージっすね。「創造の神がおりてくる」みたいな言い回しも、発想としては似たようなもんです。
では、実際のところ、脳の中にそんなスイッチがあるのかってことで、近ごろ面白い研究(R)が出ておりました。こいつはプロミュージのシャンの脳を調べた研究で、「脳のなかに創造性のスイッチみたいなものってあるの?」って問題を調べてくれたんですよ。創造性の正体ってのはまだ未知なところが多いんで、こういう研究は興味深いですな。
で、これがどういう実験だったかというと、研究チームは、プロのジャズミュージシャン16名をfMRIにかけながら、3つの異なる状態で演奏してもらったんだそうな。
- 楽譜を見ながら演奏する
- 覚えた楽曲を再現する
- 完全に即興で演奏する
この時に研究者が注目したのは、「即興しているときの脳はどうなっているのか?」ってところです。当然ながら、「楽譜を見ながら演奏する」ときよりも、「完全に即興で演奏する」ほうがクリエイティビティが必要なわけですから、両者の脳を比べることにより「創造性が働いている時の脳ってどうなってるの?」ってのをチェックすることができるわけです。
でもって、その結論がどうだったかと言いますと、即興中の脳の中では、以下の3つの脳ネットワークが同時に活性化していたんだそうな。
- デフォルトモードネットワーク: ぼーっとしている時や、空想している時に活動する領域。アイデアの源泉とも言える。
- 実行制御ネットワーク: 計画を立てたり、判断を下したりするときに使われる、いわば“司令塔”の役割をしている。
- 言語ネットワーク: 言語の意味づけや構造化に関わるネットワーク。音の意味や文脈を与える役割がある。
まぁfMRIの結果をもとに「脳がこんな風に働いている!」って言い切るのは割と危険ではありますが、このデータを見る限りは、「クリエイティビティが生まれている時の脳は、『ひらめき』『判断』『意味づけ』の3要素がリアルタイムで混ざり合っているっぽい!」とは言えそうな気がするわけです。「創造性」というと、ついつい「左脳の働きが!」とか考えちゃうわけですが、この実験からすれば、「創造性ってのは単なる右脳や左脳の問題ではなく、脳のモードをいかに滑らかに切り替えられるかの問題だ!」って仮説が成り立つわけですな。
実際のところ、データを見てみると、ジャズミュージシャンが即興で演奏をしてるときってのは、2つの異なる『脳の状態』を行き来してたらしいんですよ。この話をざっくりまとめますと、
- パフォーマンス状態:「脳が勝手に動く状態」のことで、俗に言うスポーツ選手の“ゾーン状態”にも近い状態。頭で考える前に手が動くって感じで、このときは聴覚ネットワークと運動ネットワークが直結して、実行制御ネットワークはオフ気味らしい。
- ディープクリエイティビティ状態:上に挙げた3つのネットワーク(デフォルト+実行制御+言語)が連動した状態で、より内省的で、意味づけを伴った創造性がうまれやすいらしい。
って感じになります。「アドリブの演奏で『意味づけ』とか必要なの?」と思うかもですけども、たとえ即興の演奏をしている時でも、上手い人ほどフレーズの構造やストーリー性を頭の隅で意識しているものなんだそうな。確かに、完全に「体が自動で動く状態」に任せてたら、演奏がカオスになりそうですもんね。
ここで興味深いのは、うまいミュージシャンってのは、これの2つの状態を自在に行き来することで、即興の中に“意味”と“技巧”を同時に組み込んでいるってところです。要するに、クリエイティブな行為には、直感と理屈の両方を切り替えていくのが大事だってことなんでしょうな。
即興における脳のスムーズな切り替えや連携は、何年にもわたる練習や経験の積み重ねによって作られる。
創造性というと「天才のひらめき」とか「天から降ってくるもの」みたいなイメージもありますけども、実際には「いかに脳を鍛え続けて、神経ネットワークのコンビネーションを育てるか?」が関係しているんじゃないかってことですね。そう考えると、私たちが創造性をアップさせるためには、
- 意図的に“ぼーっとする時間”を取る(デフォルトモードを鍛える)
- 意識的に“集中する練習”をする(実行制御ネットワークを鍛える)
- 言葉や音に“意味”を与える訓練をする(言語ネットワークを活性化する)
といった感じで、「日常的にいろんな脳の使い方をしていく」必要があるってことなんでしょうな。
まあ、そう言われてもなかなか実践は難しいもんですが、「脳をゆるめてボーっとする時間」と「集中してスキルを練習しまくる時間」の2つは意識的につくったほうがいいんでしょうな。あと、個人的には、「創造力は『天才のひらめき』ではなく、積み重ねで育つスキルである」ってのは、なかなか勇気づけられる話じゃないかなーと思うわけです。



