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「頭がいい」だけでは生き残れない時代に、私たちが鍛えるべき能力とは?について書かれた本を読んだぞ

 

 『AQ(Agility Quotient)』って本を読みました。著者のリズ・トランさんは、急成長企業のCEOや創業者を相手にするリーダーシップコーチで、ベンチャーキャピタル出身のガチ勢なんだそうな。いわゆる「成功者を山ほど観察してきた人」ってことですかね。

 

そんなトランさんが、何をテーマにして本を書いたのかと言うと、

 

「これからの時代に一番ヤバいのは、頭の良し悪しじゃなく“変われないこと”だぞ!」

 

みたいな感じになります。いまや安定なんて幻想みたいなものなので、いまは変化・不確実性・未知の状況にうまく対応できる力のほうが大事だよーみたいな話っすね。これを、著者はIQでもEQでもなく、「AQ(Agility Quotient)」と名づけてまして、これがないと仕事もメンタルも詰むかも?という話が展開されておりました。まあ、内容は著者さんの推論にもとづくものも多いので、取り扱いには注意が必要ではありますけど、割と納得感のある内容でしたねー。

 

ということで、いつも通り本書から勉強になったポイントをまとめてみましょう。

 

 

  • 「IQは産業社会の遺産」である。IQが生まれたのは19世紀末のフランスで、この時期に義務教育が始まり、政府としては大量の子どもを短時間でランク付けして、適切な教室や教育プログラムに振り分ける必要が出てきたため、そのための“選別指標”としてIQが作られた。つまり、IQとは「子どもを効率よく仕分けする」必要が出てきたから作られた指標であり、工業社会のための選別ツールなのだと言える。

    さらに、その後1990年代にEQ(感情知能)が登場し、今度はチームワークや共感力が重要になった。EQの重要性は複数の文献による裏付けがあり、これが重要な要素であるのは間違いない。

 

  • しかし、AIが爆速で進化する現代では、スキルの賞味期限はどんどん短くなっている。ハーバードの研究によれば、近年は専門スキルの半減期は約5年であり、テック分野にいたっては約2.5年である。がんばって身につけたスキルが数年で腐る世界だと考えれば、いかにIQやEQが高かったとしてもそれだけで食っていける保証はどこにもなく、そんな環境では誰でも不安になるはずである。

 

  • ここで、著者が最も重要視するのがAQである。著者は、成功している起業家を2年かけてリサーチ。みんなに性格テストを指示し、さらには幼少期の話を聞きつつ、趣味まで掘り下げたところ、「常に変化している人が、成功していて、しかも幸せだった」というシンプルな結論が得られた。彼らに共通するのは「自分をアップデートし続ける」「未知の状況でも硬直しない」「学び直しを恐れない」といった特徴で、著者はこれを高AQの特性だと定義している。

 

  • これは、学問の世界では「学習俊敏性」と言われる特性に近く、この要素が高い社員ほど昇進しやすく、IQよりも将来の出世を予測する力が高いとのデータもある。言い換えれば、これは「賢い人」より「変われる人」が強いということでもある。

 

  • Z世代に関する研究によると、この世代は、生涯で「18の仕事」と「6つのキャリアパス」を経験すると予測されている。これに対して、ベビーブーマー世代のキャリアは「一社で定年まで勤める」のが普通だったことを考えると、過去と現在のキャリアモデルは完全に別世界になったと言える。このような状況で「どの職業が安泰ですか?」や「どのようなスキルを身につけるのがよいですか?」と考えてみたところで、得られるものは少ない。

    その代わりに著者が投資すべきだと主張するのが、自分の“耐久能力”である。これは、「フィードバックを受け取る力」「学習能力」「自己主張力」「説得力」「学習敏捷性」などをひとまとめにした能力のことで、「学び続ける力」だと呼ぶこともできる。テクニカルスキルは腐るし、知識もすぐに古びるが、常に変わろうとする能力は需要が衰えない。

 

  • たとえば、マイクロソフトは2014年ごろは停滞ムードにあり、「巨大だが動きの遅い会社」として知られていた。そこで、新たにCEOになったサティア・ナデラは、従来のマイクロソフトにはびこっていた「Know-it-all(全部知ってる文化)」から「Learn-it-all(学び続ける文化)」への転換を行うように大号令をかけた。具体的には、社内で「学び続ける人」の成功事例やストーリーを大量に宣伝し、廊下にポスターを貼り、コーヒーマグに合言葉を印刷して、同じメッセージを繰り返し刷り込むなどの介入を行っている。「戦略の前に文化を変える」というナデラの方針は見事に実を結び、それからのマイクロソフトはクラウドとAIに大転換することで株価が大きく上昇した。これもまた、「学び続ける会社」の強さを示す良い例である。

 

  • 最後に、著者はAQを4タイプに分けている。

    • ノベリスト型:計画するのがめっちゃ好きだが、そのぶんだけ突発的な変化に弱い。

    • ファイアファイター型:修羅場に強いが、長期の戦略を立てるのが苦手。

    • アストロノート型:いろんな変化に適応するのが得意だが、周囲を置いてけぼりにしがち。

    • ニューロサージャン型:熟考するのが得意で、決めたら絶対にやり抜こうとする。

 

  • ここで重要なのは「どのタイプのAQが優れているか」ということではなく、自分のパターンを知り、弱点を補うことである。たとえば、ノベリストなら即興力を鍛えるのがいいし、ファイアファイターなら長期視点を持つのが大事だし、アストロノートなら“速さ”を自覚して周囲への説明を増やすのが大事だし、ニューロサージャンなら決断が遅くなりすぎないように期限を切るのが良い。要するに、自分が「変化に対してどう反応するのか?」のクセを理解し、それに沿ってトレーニングのプランを立てよ、ということである。

 

 

ってことで、本書の主張をひとことでまとめるなら、「安定した未来を探すより、変化に強い自分を作れ!」って感じになりましょう。AIの進化に無闇にビビるのではなく、「また変化の時間が来たな……」ぐらいに思えれば勝ち。たしかに変化はストレスなんだけど、同時に成長への刺激でもありますんで、もし最近「自分のスキルが古くなりそうで不安」と感じているなら、それはAQを鍛えるチャンスかもしれませんな。

 

そのためには、小さなことからでいいので、

 

  • 普段読まない分野の本を読む
  • あえて未経験の仕事を引き受ける
  • フィードバックをもらいにいく

 

みたいな“意図的な変化”を入れてみると、ちょっと刺激になって良いのではないでしょうか。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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