1日60gのピーナッツで脳の機能が改善する?みたいな実験の話
「ピーナッツで脳の血流が良くなるかも?」って話(R)が出てまして、なかなか面白い内容になっておりました。当たり前ですが、脳の血流量が減ると酸素と栄養がうまく届かなくなり、最終的には認知症のリスクにもつながりますんで、ピーナッツで対策できるならまことに素晴らしい話なわけです。
これはマーストリヒト大学が行ったランダム化単盲検クロスオーバー試験で、被験者は60〜75歳の健康な男女31名。BMIは20〜35の範囲で、心疾患や糖尿病、ピーナッツアレルギーのある人、喫煙者は除外されております。
こいつがどんな研究だったのかと言いますと、
- 被験者に1日60gの「無塩・皮付きローストピーナッツ」を摂取してもらう(だいたい両手に1杯分)。食事に加えるだけで、加熱や粉砕はNG(栄養の変化を避けるため)。
- その後、8週間のウォッシュアウトをはさんで、ピーナッツを食べない食生活を続けてもらう(ピーナッツおよび他のナッツ類を避ける)
みたいになってます。このように、すべての被験者に「ピーナッツあり」と「ピーナッツなし」の両方を体験してもらうことで、個人差の影響を抑えつつ効果の比較を行ったわけです。
で、その結果がどうだったかというと、なかなか面白いものになっております。
- ピーナッツを食べた時期には……
- 脳全体の血流が3.6%アップ
- グレーマター(神経細胞の本体がある部分)の血流が4.5%アップ
- 前頭葉(記憶・判断など)の血流が6.6%アップ
- 側頭葉(言語・記憶処理など)の血流が4.9%アップ
って感じだったそうで、脳の重要エリアで血流がまんべんなく増えていたんだそうな。ここで使われたのは動脈スピンラベリング法(ASL-MRI)という非侵襲的な最新の血流測定技術で、精度もバッチリであります。これは期待できますなぁ。
さらに、この実験では、参加者にコンピュータを使った認知テストも行われてまして、記憶・反応速度・実行機能なども評価しております。その結果がどうだったかというと、
- 言語記憶の成績が5.8%アップ!
って改善が見られたというんですな。簡単に言うと、これは「20分前に見た単語を思い出す能力が上がっていた」ってことでして、しかもこれはピーナッツを食べていた期間のみで見られた変化だったってのが面白いもんですねぇ。
まあ一方では脳の反応速度や実行機能には大きな変化はなかったとのことで、「ピーナッツで脳の機能が改善!」とまでは言えませんが、“記憶力”ってのは加齢で低下しやすい機能なんで、ここにしっかり効いてるのは嬉しいところですな。
ちなみに、この研究ではピーナッツのどの成分が効いているのかまでは特定されていないんですが、研究者たちは以下のような候補を挙げておられます。
- L-アルギニン:ピーナッツに多く含まれるアミノ酸で、体内で一酸化窒素(NO)の前駆体となり、血管を拡張して血流を促進する。
- ピーナッツの皮に含まれるポリフェノール:特にレスベラトロールなど、抗酸化作用の強い成分が豊富なので、血管内皮の機能を守る働きがあるとされる。
- 脂質と食物繊維のバランス:不飽和脂肪酸が豊富で、炎症の抑制にも関わっており、食物繊維も脳腸相関の観点からプラスの効果が期待できる。
といった具合に、ピーナッツってのは意外と栄養が多いので、なにかと良い変化が起きてもおかしくはなかったりするんですよ。
なので、こちらもうれしい副産物として、ピーナッツを食べていたグループでは以下の変化も確認されたんだそうな。
- 収縮期血圧が5mmHg低下
- 脈圧が4mmHg低下
- 炭水化物の摂取量が自然に減少
- 体重はほぼ変化なし
データを見てると、この実験の参加者は、みな1日あたり約340kcalを追加で摂取していたにもかかわらず、体重がほとんど増えていなかったそうで、これは「ピーナッツで満足して他の食事が減った」のが原因である可能性が高そう。こういう自然な食欲コントロール効果があるかもしれないってのも、ピーナッツの良いポイントですね。
ただし、もちろんこの研究にも限界はありまして、
- 被験者は「ピーナッツを食べてる」とわかっている(盲検できていない)
- 栄養素のどれが効いたかは不明(アルギニン?レスベラトロール?)
- サンプル数が少ない(n=31)
といった点はあるので注意してくださいませ。研究チームは今後もピーナッツの効果をチェックしてくらしいんで、ここらへんも引き続き注目していきたいところであります。
ということで、今回の研究をざっくりまとめると、
- 1日60gの無塩・皮付きローストピーナッツを8週間食べたら、脳の血流が増えて記憶力もアップ
- 血圧などの心血管指標も改善
- 体重はほぼ増えず、自然に食事のバランスも整ったっぽい
って感じになります。まだまだ未知なところも多い研究ではありますが、今回のデータを見る限りは見込みがありそうなので、脳のためにピーナッツを食べてみるといいんじゃないでしょうか(もちろんナッツアレルギーがある方は要注意ですが)。どうぞよしなに。


