不安型で神経質なパートナーと、どうすればうまくやっていけるのか? ──愛着スタイルと性格が教えてくれること
このブログで、人間関係を上手くやっていくのに観点としてよく出てくるのが「愛着スタイル」と「神経症傾向」の2つであります。どちらも人間関係に関わるポイントでして、ざっくり説明すると、
- 愛着スタイル:幼いころの親(とくに母親)との関係に基づく、対人関係のクセを示す理論。大きく分けて「安心型=他者との距離感がうまく、感情の安定性が高い」「回避型=依存が苦手で、近づかれると距離を置く傾向」「不安型=見捨てられ不安が強く、相手へ依存しやすい」の3つがある(専門家によっては別の分類を取り入れる人もいるが、とりあえず代表的なのはこの3つ)。要するに、安心型の人は感情調整もうまく、親密さも自然。一方、回避型や不安型は、愛情表現の仕方が独特で、関係に摩擦が起きやすいって感じ。
たとえば、不安型の場合は「もっと愛されたい!」という気持ちから、相手への干渉や確認行動が頻繁になったりする。回避型は逆に「近づかないで!」という態度が関係にヒビを入れることが多め。こうしたクセは、幼いころの愛情体験から形成される。
- 神経症傾向:ビッグファイブ性格特性のひとつで、この傾向が強いと、イライラしやすい、落ち込みやすく、不安感が強い、怒りっぽく、感情の起伏が激しいなどの特徴が現れやすい。ざっくり言えば、感情に振り回されやすい人のこと。
みたいになります。どちらも他人との付き合い方を大きく左右するポイントですね。
で、こうした愛着スタイルと神経症傾向を組み合わせて、関係の質や安定性にどう影響するのか?というテーマで調査したのが、ブリガムヤング大学の新しい研究(R)であります。調査の対象になったのは、交際4か月以上の異性カップル1,253組で、パートナーの双方に質問票を渡して、愛着スタイル、神経症傾向、関係の満足度、身体的親密さ、価値観の共有度などを調べたんだそうな。
その結果をまとめると、以下のようになります。
- 不安型/回避型の愛着スタイルは、神経症傾向を高める傾向がある
- これによって感情調整の難しさが増し、不安や怒り、落ち込みが起こりやすくなる
- 神経症傾向の強さは、自分だけでなくパートナーの関係満足度も下げる
- 特に男性は、パートナー(女性)の神経症傾向によって満足度が低下しやすい(この点に関して、研究チームは「女性は話し合いで回復できるが、男性は距離を置く傾向があるのでは」と指摘している)
ってことで、つまり「不安型+高神経症性」というカップルは、関係に大きな摩擦を抱えやすく、幸せな関係維持に向けた努力が余計に必要になるわけですな。まあ予想はしてた結論ですが、この特性の組み合わせに悩んでいる人は結構多いかもしれませんな。
じゃあどうすれば関係を良くできるのか?ってことですが、この研究では、ちゃんと「改善策」も示してくれているのがナイスなポイントです。研究チームは、「不安型+高神経症性」の問題を克服するために、「感情焦点化療法(Emotion‐Focused Therapy:EFT)」ってのをお勧めしております。
これは「いま・ここ」で起きている感情体験に意識を向けるタイプのセラピーで、
- 共感的な対話:聞く・受け止める・共鳴する
- 感情の照応:「あなたがそう思うのは当然」という言語化
- 愛着上の傷の修復
- 神経症傾向への対処スキルの習得(例:深呼吸、間接表現、共感的応答)
みたいな行動を通じて安心型の愛着スタイルを目指し、相手にとって「信頼できる存在」になることを目指すわけです。ざっくり言うと「感情の扱い方を学ぶ方法」の集大成みたいな感じでして、「つい感情に振り回されてしまう!」みたいな方にもお勧めできるセラピーですね。
ここら辺を細かく説明すると大変なので、気になる方は、
といったあたりを参考にしてくださいませ。とりあえず、今すぐにでもできそうなことをピックアップしておくと、
- まずは自分の愛着スタイルを知る→ 心理テストや質問票で「あ、自分は不安型かも」と自覚するだけでも、軌道修正への第一歩になる。
- 相手に感情を聞く姿勢を強化する→ 「どう感じた?」「それはつらかったね」と共感する。うなずくだけでもOK。
- 問題を“感情の扱い方”として捉える→ 「またケンカした……」ではなく、「自分たちはこういう不安のサイクルに陥りやすい」と意識化すると、冷静に対処しやすくなる。
といった感じになります。こんな感じで、自分に特定の感情がわく時の状況やトリガーを認識していくのが、大事なポイントになります。恋愛や結婚の安定性は、「性格(神経症傾向)」×「愛着スタイル」の掛け算によって強く左右されるんで、不安や依存、神経質さがある方でも、そこらへんを意識してトレーニングしていくと、結果として長期的に安定した関係は十分可能になるはずであります。お困りの方はどうぞお試しをー。