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今週の小ネタ:SNSを減らすと孤独感が減る、痩せ薬だけでは「健康」は手に入らない、完璧主義も悪いことばかりじゃない

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

SNSを減らすと孤独感が減る

「SNSの使用時間を減らすと孤独は減るのか?」という研究(R)が面白かったんでメモ。これは17〜25歳の若者260名を対象にした試験で、1日2時間以上SNSを使用していて、かつ不安やうつの症状がある人だけを選んだんだそうな。

 

その上で、まず1週間ほど普段SNSをどのように使っているのかを記録するように指示。そこから全体を2グループに分けまして、

 

  1. SNS制限あり:1日1時間までにSNSを制限する
  2. SNS制限なし:いつも通りSNSを使う

 

って感じで3週間ほど暮らしてもらったとのこと。みんながちゃんと指示を守ったかどうかはスマホのスクリーンタイムで客観的に測定してまして、データの信頼性も高めでいいっすね。

 

すると、2つのグループにどんな違いが出たのかと言いますと、

 

  • SNSを制限したグループは、孤独感が有意に減少した

  • SNSを制限しなかったグループは、ほぼ変化がなかった

 

という、かなりわかりやすい感じだったんだそうな。しかも、この結果について男女の差がなく、「比較癖(他人と比べる傾向)」もほぼ結果に影響しなかったのが面白いとこっすね。つまり、SNS断ちってのは「誰にでも効くシンプルな介入」だと言えるわけっすね。

 

では、「なぜSNSを減らすと孤独が減るのか?」ってことですが、研究者の解釈はわりとシンプルで、

 

  • SNSの時間が「リアルな交流」を奪っているからだ!

 

というものであります。これは「行動置換」と呼ばれる考え方でして、SNSを1時間に絞ったらその空いた時間で人と会うようになるという、実にシンプルな話であります。

 

そういうと「SNSのつながりじゃダメなの?」って気がしちゃいますが、研究チームいわく、

 

現実の人間関係に代わるものはない。

 

とのことなんで、SNSでは実際のコミュニケーションは代替できないと考えたほうがいいでしょうな。ということで、今日から「SNSは1日1時間まで!」と決めて、リアルの友人と遊ぶことを優先してみるのも一興であります。

 

 

 

痩せ薬だけでは「健康」は手に入らない

「痩せ薬で健康になれるのか?」ってのを調べた研究(R)が出ておりました。近ごろ大ブームのGLP-1は、確かに高いダイエット効果が確認されているものの、果たしてそれだけで健康になることは可能なのか?みたいな話ですな。

 

これは193名の成人を対象にした長期試験で、どんな実験だったかと言いますと、

 

  1. まず全員に、超低カロリーダイエットを8週間やってもらう(平均で約13kgの減量に成功)

  2. その後1年間、以下の4グループに分かれる
    1. 運動のみする
    2. GLP-1薬のみを使う
    3. 運動+GLP-1薬を組み合わせる
    4. 何もしない

 

みたいになります。ここで使われた運動メニューは、「週2回のグループトレーニング(バイク+サーキット)に自主トレを週2回」といった具合で、「それなりに大変だが普通に頑張ればできるレベル」ぐらいに設定されております。

 

さて、これでどのような違いが出たのかと言いますと、

 

 

結果1:体重だけなら薬だけでも減る

まず気になる体重の変化ですが、こんな感じになりました。

 

  • 何もしない → 体重が完全にもとにもどってしまった
  • 薬のみ → 痩せた体形をそこそこ維持
  • 運動のみ → 痩せた体形をそこそこ維持
  • 運動+薬 → 最強

 

ということで、「痩せる」だけなら薬でもそれなりにいけるってことですね。

 

 

結果2:しかし、“動ける体”は運動しないと手に入らない

ただし、この研究では「階段の上り下りテスト」などをやって、実際の身体機能もチェックしているんですが、その結果はかなりハッキリしてまして、

 

  • 運動した人 → 身体のパフォーマンスが向上した
  • 薬だけ → 身体のパフォーマンスに変化はなかった

 

という差が出たんだそうな。つまり、たとえGLP-1で痩せても「動ける体」になるとは限らないという、ある意味で当たり前の話ですね。

 

で、そこで研究チームが指摘してるのが、「フィットネスと体重は別物」という考え方であります。これまでの研究を見ていると、

 

  • 太っていても運動能力が高い人は、健康リスクが低い
  • 痩せていても運動能力が低い人は、健康リスクが高い

 

という傾向がありまして、これはわりと一貫して出てる結果なんですよね。

 

その理由はいくつか考えられてまして、ざっくり言うとこんな感じです。

 

  1. 有酸素能力(VO2max)が寿命と強く関係する:心肺機能の高さは、死亡率の予測因子としてかなり強力なので、これが低いと痩せてもヤバい。

  2. 筋肉は「量」より「使えるか」が重要:筋肉があっても使えなければ意味がないので、めっちゃ機能性がカギになる。

  3. 日常動作の快適さが変わる:階段が楽になる、長時間歩ける、疲れにくいといったメリットが積み重なり、結果として健康寿命が伸びるわけです。

 

いずれも納得の原因なんだけど、ここで最も大事なのが「有酸素運動」でして、データを見てみると「筋トレよりも有酸素運動の価値が大きい!」って傾向がはっきり出てるんですよ。もちろん筋トレも大事なんだけど、健康指標としては「筋力」より「有酸素能力」のほうが強い予測力を持つってことですな。

 

なので、今回の研究から得られる知見はシンプルでして、

 

  • 薬に頼るなら必ず有酸素運動をセットに。薬だけだと、見た目は変わるが中身が伴わない。
  • おすすめは、早歩き(30分)、軽いジョギング、サイクリングぐらいの負荷で、最低ラインは週2〜3回。研究でも平均2.65回/週で効果が出ているので、このあたりが現実ライン。

 

って感じでしょう。体重はあくまで“見た目の指標”であって、健康の本質は「どれだけ動けるか」にありますんで、気になる方は、ぜひ週2回ぐらいから軽く体を動かしてみていただければと。

 

 

 

完璧主義も悪いことばかりじゃないよね

自信満々な人ほど完璧主義で、逆に不安が強い人ほどミスを恐れる……みたいな印象をお持ちの人は多いでしょう。「自信がある人はバリバリ仕事ができて、不安が強い人はミスを恐れて動けない」ってイメージは、なんとなくありますからね。

 

で、近年の研究(R)では、これは単なるイメージではないってところをデータで裏付けていて面白かったです。これは285名の大学生を対象にした試験で、1週間かけてこんな調査を行ったんだそうな。

 

  • みんなにスマホで1日最大6回アンケートを行い、「今この瞬間どう感じているか?」を回答してもらう。たとえば、自分は優れていると感じるか、他人から無視されている気がするか、完璧を目指しているか、ミスを恐れているかなど。

 

  • データを分析して、みんなの自己愛と“完璧主義の方向”をチェックする。

 

ということで、簡単に言えば、日々の暮らしのなかで自己愛と完璧主義の関係がどう移り変わるのかってところを調べたわけです。

 

その結果は、かなりキレイに分かれまして、

 

  1. 自信MAXのとき(誇大型ナルシシズム)には、完璧主義(努力型)が上がり、ミスへの不安が減る。つまり、「俺はできる!」ってモードになり、目標志向でガンガン攻めるようになる。

  2. 不安MAXのとき(脆弱型ナルシシズム)には、完璧主義(懸念型)が上がり、ミスや評価への恐れが強まる。つまり、こちらは「失敗したらどうしよう…」ってモードになり、萎縮して動けないようになる。

 

みたいになります。用語を説明しておくと、ナルシシズムと完璧主義にはそれぞれ2つのパターンがありまして、

 

  • 誇大型ナルシシズム=「自分は優れている!」という自信満々の感覚に満ちたタイプのナルシシスト

  • 脆弱型ナルシシズム=「不安や批判に敏感で、傷つきやすい」という感覚に満ちたタイプのナルシシスト
  • 努力型完璧主義=高い目標を目指す、前向きなタイプの完璧主義
  • 懸念型完璧主義=ミスや評価を恐れて、不安になりやすいタイプの完璧主義

 

みたいになります。つまり、この分類と今回の研究を照らし合わせてわかるのは、完璧主義は「良いもの」と「悪いもの」があるって話でしょう。完璧主義というと、このブログでは悪いものとして扱われることが多いんですけども、自信があるときは高い目標に向かって努力できる一方で、不安が強いとミスを恐れて行動が止まってしまうといった具合に、同じ完璧主義でも成果につながる場合とストレスを増やすだけの場合があるわけです。

 

というと、ここで「じゃあ自信を高めれば全部うまくいくのでは?」って気になるわけですが、その考え方は半分正解で半分ハズレであります。というのも、今回のデータを見る限り「自信は波のように変動するもの」だからであります。私たちは1日の中でも、自信満々の攻めモードと不安でいっぱいの守りモードを行ったり来たりしてまして、そのせいでパフォーマンスが安定しないんですよね。

 

ではどうすればいいか?というと、個人的には以下の3つが現実的かなと思います。

 

  1. 不安モードに気づく:自分のなかで「ミスが怖い」「人の目が気になる」という状態になったら「懸念型」に入ってるので要注意。

  2. 小さな成功体験を入れる:データによると自信は「行動→成功→強化」で作られる傾向があるので、「タスクを細かく分ける」「すぐ終わる作業からやる」ってだけでも「誇大型モード」に入りやすくなる。

  3. 評価ではなく行動に集中:「うまくやれるか」ではなく、「次に何をするか」に意識を向けるのもアリ。これで余計な自己評価が減るはずなんで。

 

ってことで、必ずしも完璧主義が悪いわけではなく、「心理状態」が問題になるって話なんで、重要なのは「今の自分は“攻めモード”か“守りモード”か?」ってのを見極めることだって話になるんでしょうな。ここをコントロールできるだけで、メンタルの安定度もだいぶ変わりそうですなぁ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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