人生を楽にする『不完全主義』のすすめ
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『有限性を生きるための省察(Meditations for Mortals)』って本を読みました。著者のオリバー・バークマンさんは「限りある時間の使い方」で有名なライターで、他にも「ネガティブ思考こそ最高のスキル」なんかもおもしろかったですな。
で、今回のテーマは「不完全さを積極的に活かすには?」って感じで、昨今流行りの完全主義へのアンチテーゼになっております。現代を生きる人ってのは完璧主義や効率主義に縛られやすい傾向があり、「人生のすべてを管理しなければならない!」ってプレッシャーに苦しみやすいので、これをなんとかしようぜ!みたいな内容ですな。バークマンは、自身の処方箋を「不完全主義(imperfectionism)」と呼んでまして、人間は不完全で有限なんだから、そこを受け入れることで、より満足な人生を送れるようになるよーと主張しておられます。不完全主義って、いいっすね。
ってことで、いつもどおり本書から勉強になったところをピックアップしてみましょうー。
- 有限性を受け入れる:まずは人生の有限性を認めるのが大事。人間には無限の時間もエネルギーもないが、現代人は「無限の可能性」を求めて疲れ果てている。しかし、私たちが持つ時間やエネルギーは有限だという事実を受け入れることで、逆説的に自由が生まれる。全てを完璧に行うことは不可能だと認め、自分が本当に大切にしたいことに絞り込むことで、充実感が増し、ストレスは軽減される。
- 完璧よりも行動を優先する:人生を高級なクルーズ船ではなく、不安定で未知の川を行くカヤックに例えてみるとよい。私たちはしばしば、完璧な準備や理想的な条件を求めて行動を起こすことをためらうが、この「理想的な瞬間」は永遠に訪れない。むしろ不完全な状況であっても、小さく行動を始めるほうが重要であり、どんなにささやかな行動でも、それを重ねることで推進力が生まれ、やがて意義ある結果へとつながっていく。
- 「完了リスト」を作る:私たちは「いつまでも終わらないToDoリスト」に囚われている。やるべきことが無限に増え続ける現代では、大量のタスクをこなしても「十分だ」という感覚を得ることができない。そこで、代わりに「完了したこと」を記録する「Done List」を作ってみるとよい。どんな小さなタスクでも達成したことを記録し、それを認め、祝うことで、自分がすでに多くのことを成し遂げていることを自覚できる。この習慣は精神的な解放をもたらし、結果としてより生産的な行動につながる。
- 数量目標を設定する:完璧主義の人は「質」を極端に高めようとしがちなので、行動が止まってしまう傾向がある。この問題を解決するためには、「量」に集中するのがおすすめである。陶芸教室を使った実験では、質の高い完璧な作品を一つ作るグループよりも、大量の作品を作ったグループの方が、結果的に質の高い作品を生み出したことが示されている。とにかく多くの回数をこなすことで、自然にスキルや理解が向上し、完璧を目指すよりもはるかに効率的に成長できる。
- 読書の量を減らす:情報過多が問題になっている現代社会では、すべての情報を消化することは不可能に近い。それにも関わらず読書を続けたところで、情報は頭の中に溜まらずに、流れ去ってしまう。この問題を解決するためには、重要な少数の情報を深く吟味し、しっかりと理解することを優先したほうがよい。情報の消費を減らすことは決して怠惰ではなく、精神的な安定を保つための重要な戦略である。
- 未来は未来に任せる:人間はしばしば未来の不安に駆られ、無意味な予測や心配に時間を浪費してしまう。そこで、バークマン先生は、ストア派の哲学者マルクス・アウレリウスの思想を引き合いに出し、「未来の問題は未来にならなければ対処できない」と指摘する。現時点でコントロールできない未来を過度に気にすることは、単なるエネルギーの浪費でしかないので、今できる行動だけに集中し、未来はその時になったら対処するべきである。
- 物事を完了させる:未完のタスクがあると、それは無意識のうちに心理的なストレスを与えることがわかっている(ツァイガルニク効果)。そのため、タスクを完璧に仕上げることを目指すのではなく、「十分よい」ところで終えることを目指すように心がけるとよい。こちらのほうが明らかに心理的なストレスは減るし、ある程度で完了とみなす習慣を持つことで、心に余裕が生まれ、新しい挑戦へのモチベーションが湧きやすくなる。完璧に仕上げることよりも、明確に「終わらせる」ことが重要である。
- とりあえず作業場に行く:どんなプロジェクトでも停滞に陥ることはあるが、ここで大事なのは、とにかく「作業場」に出かけて行動を開始することである。どんなに気が乗らなくても、作業場に行って5分間だけ作業すると決めることで、不思議と次のステップへの意欲が湧き、やがて集中力が生まれる。モチベーションは行動そのものからしか生まれないため、完璧な状況や心の準備を待つことほど無意味なことはない。
- 人生の課題を見出す:「人生の課題(Life Task)」はユングが作り出した概念のひとつ。これは、社会的評価や成功という外部の基準ではなく、自分が内側から「これは意味がある!」と感じられる課題に注目することを意味する。自分にしかできない、あるいは自分が最も生き生きと感じることを探し、それを人生の中心に据えることで、表面的な忙しさではなく、本質的な満足を得ることができる。多くの場合、「人生の課題」は小さな好奇心や、自然に何度も考えてしまうこと、日常の中で繰り返し心を惹かれるものの中にヒントが隠れている。