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睡眠不足にはアボカド納豆!日本人4,500人の調査で判明したカリウムの睡眠改善効果とは?

 

眠る前にカリウムを摂ろう!」と思わせるデータ(R)が出ておりました。個人的に、いままでは睡眠とカリウムの関係はノーマークだったんですが、ここでは4,500人超えのガチめな調査で関係性を示してまして、非常に気になるところです。「カリウムが寝つき改善の新兵器になるのでは?」みたいな話ですな。

 

この研究は、日本で行われたものでして、有名な食事記録アプリである「あすけん」のユーザーデータを活用した大規模な横断研究になっております。対象は20〜64歳の日本人4,568人で、全員が少なくとも月10日以上の食事記録をつけていたそうな。

 

調査では、以下の点をチェックしております。

 

  • 各食事(朝・昼・夜・間食)ごとのカリウムとナトリウムの摂取量
  • 睡眠の質を評価するテスト(アテネ不眠尺度)のスコア
  • 年齢、性別、BMI、身体活動量などの背景情報

 

これらのデータをまとめることで、「ナトリウムやカリウムの摂り方が不眠に関係してないか?」を探ったわけですな。

 

その結果、「カリウムを多く摂る人は、不眠の症状が少なかった」って傾向が見られたそうで、特に注目しときたいのは以下のポイントでしょう。

 

  • 夕食時のカリウム摂取量が多いほど、AISスコアが低下(β = -0.066; p = 0.003)
  • ナトリウムの摂取量には有意な関連が見られなかった

 

簡単に言えば、「夜ごはんでカリウムをしっかり摂ると、睡眠の質が良くなるかも?」ってことですね、一方で、従来の研究とかだと「塩分の多さ=睡眠の乱れ」とされてたんで、ナトリウムと睡眠に関係がなかったのは意外っすね。ここはもう少し研究が必要って感じなんでしょうな。

 

ってことで、このデータを見ると「睡眠のためにはカリウムだ!」と考えたくなるわけですけども、ここにはいくつか注意点がありますんで、そこも押さえておくと良い感じです。

 

  1.  相関はあっても、因果はわからない:この研究はあくまで観察研究なので、カリウムが不眠を改善するというより、「よく眠れてる人は、たまたまカリウムを多く摂ってる」のかもしれないのは注意しときたいところ。

  2. 統計的に有意 ≠ 実用的に意味がある:たとえば、この研究では、参加者を「不眠なし」「軽度の不眠」「臨床的な不眠」の3グループに分けて、それぞれの食事内容(エネルギー比での炭水化物、脂質、タンパク質など)を比較してまして、「夕食の炭水化物比率がグループ間で有意差あり」なんて結果も出しております。しかし、実際の数値を見てみると、41.7%、42.2%、42.9%って感じで誤差レベルなので、こういうケースでは「で?」って感想になっちゃうんですよね。

 

まあ、「夕食のカリウムと睡眠の関係」については過去の文献とも一致している部分が多いので、「カリウムで睡眠が改善する」可能性は十分にあると思いますが。

 

では、もしカリウムが睡眠に効くとした場合に、どんな原因が考えられるかと言いますと、「カリウムは血圧を下げてくれる可能性がある」からです。というのも、ここでちょっと電解質の基本をおさらいしておくと、

 

  • ナトリウム(塩分):体内の水分バランスや血圧を上げる方向に働く
  • カリウム:ナトリウムと拮抗し、血圧を下げる方向に働く

 

みたいな働きをしてるんですよ。この2つは「ナトリウム・カリウムポンプ」というメカニズムで、これが止まると人は死んじゃうんですよ。実際、1日のエネルギー消費の20〜30%は、このポンプを動かすために使われてるなんて話もあるくらいで、血圧コントロールや心臓のリズムにも直結してるわけです。

 

で、ここでポイントになるのが、「寝てる間に血圧が下がらない人ほど、睡眠の質が悪い」って傾向が確認されてるところです。つまり、夜にナトリウムを減らしてカリウムを増やせば、睡眠中の血圧が下がってよく眠れるかも?って仮説が成り立つわけです。実際に約12,000人の疫学データで、睡眠時間6時間以下の人はカリウム摂取量が少なかったなんて話(R)もありまして、「カリウムは睡眠に良いかも?」って考え方には、そこそこ根拠が増えてきてる印象ですね。

 

で、これらの知見を実際に活かすにはどうすればいいのかってことですが、ポイントは以下の3つでしょう。

 

  • カリウムは食品から摂るのが原則:サプリで高用量を摂ると不整脈のリスクもあったりするので、次のような食品を夕食に取り入れるのがベターです。アボカド、ほうれん草、バナナ、じゃがいも、納豆、サーモン。

 

  • 夕食のナトリウムは控えめに:濃い味が好きな方は、夜だけでも「減塩しょうゆ」「だし活用」などで工夫してみてくださいませ。味覚は慣れますんで。

 

  • あくまで「プラスアルファ」として:いかにカリウムが大事と言っても、睡眠改善の王道はやはり「規則正しい起床時間」「朝の光+運動」「カフェインカット(14時まで)」「就寝前1時間のリラックスタイム」って感じなので、「電解質の調整」ってのは、これらをしっかりやった上での補助ツールと考えてくださいませ。

 

ってことで、ここらへんを守っていただければ、カリウムから得られる睡眠の改善効果を活かせるんじゃないでしょうか。「王道の睡眠改善策を全部やってもダメだった」ってときに、「カリウムちょい足し戦略」はアリなんじゃないかと。というわけで、皆さんも「最近よく眠れないな〜」というときには、アボカド納豆でも食べてみちゃいかがかと思うわけです。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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